家の中でも森林浴

 5月の連休辺りから8月にかけては、樹木が発散する精油成分のフィトンチッド(Phytoncide)が最も多くなるので、森林浴に最も適した季節である。  フィトンチッドはロシアのボリス・トーキン博士が、樹木や植物が発散する殺菌力を持つ香り成分、揮発性物質に対し命名したもので、「植物」を意味するフィトン「Phyton]と、「殺す」を意味するチッド(サイド)「Cide]を連結した造語である。 植物が傷ついたときに自分を害虫や細菌、カビなどから守るために出す毒だといえる。 人では、免疫力を高めるだけでなく、癒しやリラックス効果を発揮することが知られる。

 フィトンチッドは防菌、防虫、防ダニ、防カビなどの作用を持つテルペノイド、カンファー、クマリンなどを含む植物性精油が本体である。 木の香り成分でもあり、木や根に含まれて、主に葉から放出される。 人にとっては恵みを与えてくれる精気だともいえる。

 さて、家にいながら森林浴ができるというヒノキ製の小部屋が、「森林浴ルーム」として、今春4月下旬に発売されるようだ。 販売元は岐阜県のヤマガタヤ産業で、各地のホームセンターなどを経由して販売し、価格は約30万円だという。 高さは1.8m、広さは畳1畳大とやや狭いのは気になるが、鉄筋の高層マンションなどで利用すれば、勉強や仕事の能率をアップするのに一役買いそうだ。 

春山やフィトンチッドで意気高し  中島澄夫
春風や牛に引かれて善光寺  小林一茶
春なれや名もなき山の薄霞  松尾芭蕉
しかの子はとっていくつぞ春の山  小林一茶

茂田井のボタン
信州立科町茂田井の生家に咲くボタン (2018年4月30日 撮影)

「布引温泉こもろ」より
信州小諸市の布引温泉より浅間山を望む(2018年4月30日 撮影)


高層木造建築への挑戦

 山国の日本やカナダは木材資源が豊富であるにも関わらず、その有効利用は必ずしも進んでおらず、需要開拓が一つの課題となっている。 建築資材としての木材の活用には、耐久性など種々の制約が足かせとなっているわけだ。 現存する木造建築で世界最古の建築物とされるのは、国宝文化財である法隆寺五重塔で、1300年の歴史を誇る。 これは高さ約32mで、檜(ヒノキ)が使われており、釈迦の遺骨(仏舎利)を納骨するための建物であって、人の住む住宅ではない。

 近年、技術的進歩もあって木材の耐火性、耐久性などが克服されつつあり、木造建築への利用に革命がもたらされようとしている。 人の住む高層の木造建築として、現在最高峰を誇るのは、18階建て、高さ53mの学生寮で、昨年夏(2017年7月)カナダ・バンクーバーで建築されたものである。

 さて日本ではどうか? 日本の住宅メーカー住友林業も、木造の高層建築構想を持っており、まずは7年後に14階建てを実行し、更に23年後の2041年には70階建ての木造建築を目指すというから頼もしい。 高層の木造住宅が普及すれば、眠った木材資源の有効利用が広がり、国家経済にもよい影響を与えることになり、夢が膨らむ。 期待したいものだ。

故郷やどちらを見ても山笑う  正岡子規
鎌倉や昔笑うた山ばかり  飯島吐月
寝ころぶや手まり程でも春の山  小林一茶
園児らの絵の春山は汽車登る  後藤比奈夫

緑ヶ丘公園1
名古屋市緑ヶ丘公園にて (2018年3月25日 撮影)

高い飛行機内の感染リスク

 庭では椿、畑ではスナップエンドウ、公園では八重桜が満開となり、目を楽しませてくれるのはよい。 ただ夏のような陽気になったかと思えば急に寒くなり、朝の出勤時には着るものに気を遣うこの頃である。

 日本は比較的狭い島国で、移動手段は列車や車で事足りることが多く、海外旅行を除くと飛行機を利用することは少ない。 ひとたび飛行機に乗ると、たとえジャンボといえども特殊な閉鎖空間に閉じ込められるので、周りに呼吸器系の感染症患者がいる場合には、感染リスクがかなり高い環境に身を置いていることには間違いがなさそうである。 

 最近、米国のジョージア州にあるエモリー大学(Emory University)の研究チームが飛行機メーカーのボーイング社の資金援助を受け、機内に呼吸器感染所の患者がいた場合、周囲の乗客にどの程度、飛沫感染させるリスクがあるのかについて検討し発表した。

 これによると、患者の座席の前後1列、および左右2座席以内に座る乗客への感染率は80%と高いが、それ以上は離れている場合の感染率は3%以下でほとんど問題ないことが明らかになったという。 また感染症の乗務員がいた場合には、1回のフライトで約5人の乗客に感染する可能性があることが分かったという。

 飛行機に乗るときには、必要備品としてマスクを用意し、周囲に籍をしている人を見たら直ちにマスクを着用することが得策のようだ。

落椿庭の片隅本舞台  中島澄夫
人仰ぐ我家の椿仰ぎけり  高野素十
浅間晴れて豌豆の花真白なり  高浜虚子
夕庭にぼたん桜のゆるぎかな  久保より江

庭の椿H30
我が家の椿も満開へ (2018年4月8日 撮影)

スナップエンドウ3
我が畑のスナップエンドウ (2018年4月8日 撮影)

 

感染性胃腸炎の好発期

 ソメイヨシノが大方散り、今度はチューリップ、花かいどう、八重桜と満開が続く。 春爛漫である。 今年は3月下旬から急に夏めく天気となり、早くもミニ、中玉、大玉を含めて4月1日にトマトの植え付けを終えた。 これまでは例年4月10日前後だったので、我が家では史上最も早い植え付けとなった。 どんな成長を見せるか楽しみである。

 冬季から春にかけて、嘔吐、下痢、腹痛、発熱をきたす感染性胃腸炎の患者が増えている。 感染性胃腸炎の原因ウイルスには、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルスなどがある。 

 ノロウイルス感染症は、冬場の11月~2月をピークに流行する感染性胃腸炎で、感染力は強いが、脱水とならないよう水分補給に気を付ければ、通常3日以内に回復する。 ただしウイルスは7日間は糞便中に排泄され続けることに留意する必要がある。 ウイルス排泄を助けるため下痢止めの薬は不要である。 ワクチンは現在開発中で現時点で利用できない。

 ロタウイルス感染症は、例年3月~5月にかけて流行がピークになり、0歳~10歳の乳幼児、子供に最も多くみられ、次いで60歳以上の高齢者への感染が多い。 最近の厚労省発表では1月下旬以降増加が続いている。 下痢便が白色になることがある。 少量頻回の補水液で脱水を防ぐよう努める。 ワクチンは単価と5価の2種類があり、任意接種である。

 感染経路は、両者とも糞口感染を主体とし、調理や汚物による接触感染や飛沫感染、食事による感染などがある。 両感染症ともアルコール消毒は効果不十分で、塩素系漂白剤の次亜塩素酸ナトリウムが有効である。 予防には、汚物処理を上手に行い感染を拡大させないよう配慮し、何より「手洗い」を徹底すべきである。

ひと枝の折れしが匂ふトマト苗  米沢光子
赤々とトマトに名あり桃太郎  和田絢子
青臭しトマトのわき芽つみし指  竹内弘子
食卓にひと色欲しとトマト捥ぐ  夏目満子

実相院の啓翁桜
京都・実相院の啓翁桜 (2018年3月18日 撮影)

真如堂の桃の花
京都・真如堂の桃の花 (2018年3月17日 撮影)

京の旅・その2

 京都の旅2日目は岩倉めぐりである。 平安時代以降、多くの貴族が隠棲した地として名をはせた岩倉は、周囲を山で囲まれた閑静な土地として知られる。 先ずは京都国際会館前のバス停より洛北の岩倉実相院行きのバスに乗って終点で降りる。 

 実相院は鎌倉時代創建の門跡寺院の一つで ある。 住職は天皇家の血を引く人々が努めており、代々皇室から支援を受けて繁栄したとされ、格式の高い天台宗寺門派の寺院である。 四脚門の横に啓翁桜があり、早くも開花して見どころであった。 表に当たる東側の石庭は、「心のお庭」と呼ばれ、比叡山を借景とし、広々としたのどかな雰囲気だが、裏山を背にした西側の池泉式庭園は植え込みが多く全く趣を異にする。 2つの庭園を結ぶ通路の脇のもみじが、磨き上げられた室内の床に映りこみ、春は「床みどり」、秋は「床もみじ」と呼ばれて人気がある。 この季節は、勿論「床もみじ」の堪能である。 

 実相院近くに、岩倉具視幽棲旧宅がある。 岩倉具視(1825~1883年)は明治維新における王政復古に尽力した幕末から明治期にかけて活躍した政治家であるが、高まる攘夷運動の中で一時失脚してこの岩倉村に隠棲し、3年間居住したとされる。 旧宅が保存され、国の登録有形文化財となっている。 坂本龍馬ら幕末の志士たちが密談のため、訪れた正門は普段閉じられており、見学者は通用門から入る。 入口の管理事務所では、お茶のセルフサービスがあり、寛ぐことができた。 岩倉具視の旧宅を出て、妙満寺、円通寺、深泥池へと歩くのだが、相当の距離で、健脚が必要である。

 妙満寺は法華宗の総本山で、今回訪れた寺院では境内が最も広く、仏舎利大塔と「雪の庭」でその名を知られているが、寺は市内で何回も移築されて現在地にあり、歴史的価値は低いとみて、長居せず、近くのレストランでランチを摂り、次の円通寺へと歩を進めることにした。 

 円通寺は江戸時代初期に後水尾天皇が修学院離宮へ移る前に造営されて住んだ山荘であり、幡枝小御所とも呼ばれたところである。 12年かけて探し出した場所と言われるだけあって、庭園は比叡山を借景とした枯山水平庭で趣があり、庭に植えられた杉やヒノキの巨木を通して遠くの比叡山を取り込んだ景色は見事というほかはない。 青苔を主体に刈込と高さを上手に調和させた大小40余りの石組みの美しさが光る借景式庭園である。 入口付近には、高浜虚子の「柿落葉踏みてたづねぬ円通寺」の句碑がある。 

 円通寺を出て、さらに坂道を歩き「深泥池(みどろがいけ)」を訪ねた。 ここは数万年、もしくは数十万年前から存在しているという古い池で、中央に池全体の1/3を占める浮島がある。 その名の如く、浮島の下には水の流れが確認されており、夏には浮かび上がり、冬には沈んで冠水するという。 その特性が生かされて、ジュンサイ、モウセンゴケ、カキツバタなど多様な植物が生育している。 氷河期から生き残っている生物と温暖地の生物が共存しており、「深泥池生物群集」として国の天然記念物に指定されている。 池には、「池で乗ったタクシーの若い女性乗客が突然消えた」などのいくつかの深泥池伝説があり、ここは京都の代表的な心霊スポットだという。 内容の濃い二日間の旅であった。 

春めくや京も雀の鳴辺り  小林一茶
花の雲ふし拝み行く社かな  高浜虚子
散と見し夢もひととせ初桜  高井八菫

円通寺1
客殿より望む円通寺の借景式庭園 (2018年3月18日 撮影)

円通寺の庭
円通寺の庭園に見る根張り模様 (2018年3月18日 撮影)
 

 

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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