風邪をひきやすい人の条件

 寒い冬にはかぜインフルエンザなどのウイルス性感染症が増える。 予防には手洗いやうがいの励行、マスクの着用、適切な温度・湿度の管理などが有効だが、ほとんど同じ環境下で生活していても、かぜをよくひく人がいる一方で、ひかない人もいる。 

 神奈川保健福祉大学の研究グループ(柴田ら)が最近行った調査研究によると、かぜ罹患と生活習慣、中でも食事摂取習慣との間には密接な関係があることを明らかにできたという。

 調査対象は健診を受診した年齢40~79歳の地域住民約4万人で、かぜのひきやすさと日常生活習慣および採血検査結果との関連性を検討したものである。 かぜをひきやすい人(2.1%)は、睡眠時間が5時間以下と短く、飲酒習慣をもち、定期的な運動習慣をもたないことが判明した。 食事摂取習慣では、不規則かつ偏食する人がかぜをひきやすく、検査項目では、善玉コレステロール(HDL-C)が有意に低く、血清ALTが有意に高い人がかぜをひきやすくなっていたという。 また体格指数(BMI)では、23~24.9で最もひきにくかったとしている。 

 食事、運動、および睡眠を健康3原則と呼ぶが、これは風邪予防にも通用するようである。  

春寒や生姜湯かぶる風邪籠  臼田亞浪
投入に葱こそよけれ春寒き  渡邊水巴
かんばしく紅茶のたぎる余寒かな  日野草城

連鶴H30-2
冬ボタン:連鶴  (2018年2月11日 撮影)

冬のスキンケアとワセリン

 インフルエンザの定点当たり報告数が3週連続で過去最高記録を更新したと報告されたが、直近の1週間ではどうやら減少に転じたようで、やれやれである。 冬は寒くて空気が乾燥しやすく、人間の皮膚も乾燥しやすくなり、急に温まると、痒みを生じやすい。 うっかり指で掻くと、傷を作ったり湿疹化することも少なくない。 

 高齢者の慢性的な乾燥肌は、皮膚の落屑やひび割れ、痒み、出血、などの原因となりやすい。 この季節、入浴はぬるめの湯で短めとし、入浴後には軟膏やクリームタイプの保湿剤を使うことがすすめられる。 ただ香料やデオドラント成分など皮膚に刺激性のある成分を含まない製品を選ぶことが肝心である。

 米国皮膚科学会は、この季節の家族全員のスキンケアとして、安くてどこの薬局でも簡単に手に入るワセリンを活用することを推奨している。 ワセリン活用法として次の5つを上げている。 1)下肢や股間に塗ることで、皮膚同士、皮膚と衣服の摩擦による皮膚の障害を予防する、2)おむつかぶれの予防に使う、3)唇や瞼の乾燥を予防する、4)爪に塗って爪の乾燥を防ぐ、5)創部に塗って、局所の湿度を保ち、治癒の遅延を防ぐ、などへの活用である。

 冬は白色ワセリンを脱衣場に用意して、家族全員で上手に利用したいものだ。 

世の中を遊びごころや氷柱折る  高浜虚子
目ばかりは達磨に負けじ冬籠り  小西来山
手袋をとりたての手の暖かく  星野立子

冬ボタンH30
冬ボタン: 紫紅殿  (2018年2月11日 撮影)

味覚障害が高血圧や肥満を招く

食物の味には5つの基本味「五味」として、塩味、甘味、苦味、酸味、旨味がある。 五原味ともいう。 五味に加えて、渋味や辛味などもあり、食品に含まれる成分比によって味は微妙に変化する。 味を感知するのは舌の味蕾細胞の集合体である味蕾(taste bud)である。 成人の舌には、約1万個の味蕾があり,加齢とともに萎縮、減少し、高齢者では新生児期の1/3まで減少するため、味覚障害が発生することになる。 

 高齢者では、服用する薬剤の副作用、亜鉛不足、唾液分泌の減少、をきたすことも多く、味覚障害が起こりやすくなる。 さらにタバコや強い刺激物は味蕾の萎縮を促進し、舌苔の増加や舌の病気も味覚障害の原因となる。 

 味蕾を構成する味細胞の寿命は約10日とされ、次々と新しい味細胞と入れ替わっているが、この際タンパクの分解、合成に欠かせないミネラルとして亜鉛がある。 代謝の盛んな味蕾は多量の亜鉛を必要とし、亜鉛が不足した場合に人体で最も影響を受ける部位は味蕾だとされる。 亜鉛の多い食材として、カキ(牡蠣)、豚肉、牛肉、大豆などがあることを覚えておきたい。

 さて五味の中で、加齢に伴い最も障害されやすいのは塩味であり、このため高齢になると塩分摂取量が増えて高血圧の原因となりやすい。 食酢を上手に使った味付けの工夫が必要となるわけだ。

 山陰労災病院の研究グループによる最近の発表によると、旨味の感度が低下すると、肥満になる傾向が高くなることが判明したという。 旨味障害が起きると、甘党が多くなり、糖質をたくさん摂取して肥満になりやすくなるようである。 

 人間、中年を過ぎたらそれなりに味覚障害があることを頭に入れて、生きる必要があるようだ。

時ものを解決するや春を待つ  高浜虚子
梅見ても青空見ても田舎かな  小林一茶
梅が香に追ひもどさるる寒さかな  松尾芭蕉

蝋梅H30・1・15
蠟梅開く  名古屋平針農業センターにて (2018年1月21日  撮影)

農業センターにて1
真冬に咲く花 名古屋市農業センターにて (2018年1月21日 撮影)

マスクでスリム化

 日米を含む世界でインフルエンザの流行期に入り、本邦では内外ともマスク姿が目立つこの頃である。 マスクの着用は、1)病原体をうつさない、うつされないための感染予防、2)花粉や塵埃の吸入防止、3)口腔乾燥の予防、4)唇や肌の荒れ防止、5)顔の部分的隠蔽、など用途は多岐にわたるが、何といっても感染予防上の役割は大きいものがある。 

 近年マスクの新しい効用として、メタボの解消に役立つことが注目されている。 N-95などの高性能マスクを着用すると、1)息が吸いにくくなり、呼吸負荷により腹式呼吸が促される結果、普通の呼吸より約3倍のエネルギーを消費する、2)横隔膜以外の普段ほとんど使っていない肋間筋、斜角筋、胸鎖乳突筋、腹直筋、腹斜筋、などの呼吸筋が使われるようになり、これだけで1日当たり200~400Kcalのカロリー消費が増加する、3)呼気でマスクの中が暖められ発汗する、4)呼吸が大きくなることにより、血中酸素濃度が増えて、代謝が盛んになり、体内脂肪が燃えやすくなる、5)間食が減る、などのため、スリム化に成功するというわけだ。

 1日8時間、運動中や睡眠中を除いて高性能マスクを2週間着用すれば、ダイエット効果を体現できるとされる。 この方法は食事制限が全くない点で、従来のダイエットとは一線を画し、マスクダイエットとして存在価値があることになる。 

 マスクの陰で、マスクの新しい効用について思いを巡らしながら、感染予防に努めるのも、また奥ゆかしいというべきか。

マスク同志向ひ合せてまじまじと  中村汀女
マスクして我を見る目の遠くより  高浜虚子
図書館の薄暮マスクの顔険し 加藤楸邨

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信州・志賀高原焼額山スキー場にて (2018.1.6 撮影)

トマトやリンゴで肺機能低下を予防する

 人間の死亡の予測因子の一つに、肺機能の低下がある。 肺機能の低下は30歳前後で始まり、喫煙歴の有無や各種呼吸器疾患など、それぞれ個人の健康状態に応じて進行していく。 肺機能の良否の判定には、鼻を閉じ、口呼吸でスパイロメトリーを用いて1秒量努力肺活量を測定するのが一般的である。 年齢とともに1秒量と肺活量は減少し、肺内に残る残気量が増加する。 
 米国のJohns Hospkins 大学のGarciaーLarsen、V らの研究によると、トマト果物(リンゴ、バナナ)を多く食べる人は、あまり食べない人に比べ、加齢に伴う肺機能の低下が有意に少ないことを証明できたという。 含まれる抗酸化物質の摂取が肺に良い影響を与えるようだ。

 この研究は、英国、ドイツ、ノルウェーの3ヵ国住民680人(平均年齢 44歳)について、食物摂取頻度調査表を用いて、10年間の経過を追跡し比較したものである。 食事摂取を工夫するだけで、加齢による肺機能低下を緩和し、遅延できることは頭に入れておきたい事実である。 

千万の宝にたぐひ初トマト  杉田久女
太陽を孕みしトマトかくも熟れ  篠原鳳作
さびしうなってトマトをもぐや澄んだ空  種田山頭火
トマト熟れ防鳥ネットが風に舞う  中島澄夫

焼額山スキー場危険ゾーン
長野県志賀高原・焼額山スキー場ゲレンデにて (2018年1月5日 撮影)

焼額山スキー場2
志賀高原・焼額山スキー場にて (2018年1月5日 撮影)

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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