オウム病で妊婦2人が死亡

 4~6月は鳥の繁殖期で、小鳥も大鳥も営巣に励む姿が観察される。 私も小鳥好きで、子供時代には雪の畑に仕掛けを作って、シジュウカラを何匹かを捕獲し、1年ほど飼い、自然界に開放してやった経験がある。 鳥から人に感染する病気として、「オウム病」がある。 ここ数年は全国で毎年40人前後の感染が報告されており、感染は4~6月に比較的多く、日本産婦人科医会の調査によると、2015~2016年に2人の妊婦がオウム病で死亡したという。

 オウム病といっても感染源となる鳥はオウムとは限らず、ハトやインコなどからの感染も多いとされる。 健康な鳥でも数%は病原細菌のオウム病クラミジアを保菌しており、唾液や糞便中に排菌する。 普通は鳥の糞をホコリと一緒に吸い込むことにより感染する。 発熱や咳などインフルエンザ用の症状で発症し、治療が遅れると肺炎や髄膜炎、心筋炎、膵炎、などを起こし多臓器不全で死亡することもある。 

 診断は血清抗体価の測定やクラミジアの分離、クラミジア遺伝子の検出などによる。 治療はマクロライド系やテトラサイクリン系の抗菌薬を2週間服用する。 現在、予防ワクチンはない。 鳥を飼う場合、ケージの清掃に当たっては、マスクを着用することが望まれる。 また妊娠すると、免疫力が低下し、感染リスクが高くなるので、ペットの鳥との接触は避けた方が無難といえる。

大木や鳥の巣のせて藤かかる  高浜虚子
小鳥の巣二本の枝にしっかりと  高野素十
見上げれば天空一角サギ営巣  中島澄夫
戸袋に啼いて巣立ちの近きらし  まついひろこ

H29玉がすみ
我が家の庭に咲く玉霞 (2017年4月7日 撮影)

温泉入浴と肺炎

 春秋は温泉が楽しめる季節である。 解放感と景色を楽しめる露天風呂は、また格別である。 冬の露天風呂へ入るにはちょっと勇気がいるが、暑くなく寒くない春秋は温泉にはもってこいの季節というわけだ。

 先月、広島県の「みはらし温泉」で、入浴利用者40人が、レジオネラ菌に感染し、うち50歳代の男性1人がレジオネラ肺炎で死亡したと報道された。 レジオネラ症はレジオネラ菌による細菌感染症で、感染しても全ての人が発症するとは限らず、免疫力の低下した中高年で発症しやすい。 浴室内の清掃や洗浄が定期的にきちんとできておらず、設備の衛生管理が不備な時に起こりやすい。 細菌に汚染された湯水を、エアゾル(空気中の微粒子)として吸入することで感染する。 近年では空調設備の冷却塔・クーリングタワー水、循環式浴槽水、給湯器の水などにも寄生、増殖することがある。

 レジオネラ症を発症した場合、軽症では一過性の発熱(ポンティアック熱と呼ばれる)、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛で済むが、一部は劇症型の肺炎(レジオネラ肺炎と呼ばれる)となり、これは早期治療しないと多臓器不全となり死亡率の高い肺炎である。 市中肺炎の約5%を占めるとされる。 ポンティアック熱は、米国ミシガン州のポンティアック市で起こった集団感染例に因んで命名された。

 診断は市販の迅速キットを使い、尿中抗原を検出することによる。 尿中抗原陰性の場合には、喀痰中の遺伝子を検出する迅速診断法がある。 肺炎の治療では、静注用のニューキノロン系薬が第一選択薬である。 ニューキノロン、マクロライド系抗菌薬を投与しないと、7日以内に死亡することが多いとされる。

 ハイリスクグループとして、高齢者、新生児、大酒家、ヘビースモーカー、糖尿病患者、透析患者などがある。 感染者の約8割を男性が占める。

湯上りの尻にべったりせうぶかな  小林一茶
山中や菊は手折らぬ湯の匂  松尾芭蕉
月光に照らされわが身露天風呂 中島澄夫

H29和合の里桜
桜咲く 老人保健施設 和合の里にて (2017年4月7日 撮影)

H29庭の椿
我が家の庭の椿(横雲) (2017年4月2日 撮影)



C型肝炎ウイルスの感染

 C型肝炎ウイルス(HCV)は、ウイルスに汚染された血液を介してヒトに感染するので、現在の感染者は輸血や血液製剤、血液透析や針刺し事故などの医療行為、注射針共用に伴う刺青や覚せい剤の静脈注射、出産時の母児感染などによって感染したもので、日本での感染者は人口の約1%、100~150万人と推定される。

 感染者の約30%は自然治癒するが、約70%は持続感染者(キャリア)となり、慢性肝炎を経て、感染後20~30年後で肝硬変肝がんを発症することが多い。 感染の有無の診断はHCV抗体の測定により行う。 

 昭和年代に大きな手術を受けたり、外傷や出産のときに大量の出血を経験した人の場合、止血目的でウイルス不活化処理の不十分な血液製剤(特定のフィブリノーゲン製剤や血液凝固第1X因子製剤)の投与を受けてHCVに感染している人がおり、このような感染被害者を救済するため、「C型肝炎特別措置法」が平成20年1月より施行された。 

 給付金の支給額は、無症候性キャリアに1200万円、慢性肝炎に2000万円、肝硬変・肝がん・死亡に4000万円となっている。 この給付金を受けるためには、国を相手に来年の1月15日までに所定の形式によって裁判所へ訴訟を提起する必要がある。 認定されると、本人または相続人が給付金を受け取れる。 期限が迫っているので注意したい。

草籠をおいて人なし春の山  正岡子規
水浅し影もとどめず山葵生ふ  松本たかし
山葵田を見下ろし忙しサギ営巣  中島澄夫
たからとは今日の命ぞ初さくら  加賀千代女

大王わさび農場1
早春の「大王わさび農場」・ 信州安曇野にて ( 2017年3月20日 撮影 )

焼額山から一の瀬を
志賀高原・「焼額スキー場」より「一の瀬スキー場」を望む (2017年3月18日撮影)

御宝田遊水池1
御宝田遊水地に遊ぶ白鳥の群れ・信州安曇野にて(2017年3月20日 撮影)

カカオの抗酸化作用

 今日はバレンタインデー、269年にローマ皇帝の迫害により殉教したローマ司教・聖バレンタインの記念日である。 聖バレンタインデーは世界各地で恋人たちの愛の誓いの日とされ、様々な祝い方がある。 日本では女性が男性にチョコレートを贈る習慣が定着し、2月上旬はお菓子メーカーが活気づく季節でもある。 最近では「本命チョコ」だけでなく、「義理チョコ」、「友チョコ」、「自己チョコ」もみられて、結構賑やかである。 私が見ている老人ホームでは、例年、入所者全員で手作りチョコレートに挑戦である。

 カカオ豆に含まれるカカオポリフェノールには、体内の活性酸素を消去し、悪玉のLDL-コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化を予防する作用があるとされる。 カカオ豆は西アフリカ、東南アジア、中南米などが主産地で、蛋白、食物繊維、鉄、銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、カリウムなども豊富に含まれ、その抗酸化力は赤ワインの2倍ともいわれ、老化防止の観点からも注目されている。

 カカオに含まれるテオブロミン(Theobromine)は、ココアの苦味成分で、テオフィリンの異性体、キサンチンの一つであり、自律神経調節作用を持ち、適量でストレス解消や咳を抑えるのに役立つ。 犬ではテオブロミンの代謝速度が遅く、有害となるので注意が必要である。

 内閣府の国家重点研究の一つで、理研、京大、筑波大などが参加する「革新的研究開発推進プログラム」によると、カカオ分が70%以上のチョコレートを、男女30人(男15人、女15人)に、1日当たり25g(5g×5枚)を4週間にわたり摂取させ、摂取前後の大脳皮質の量をMRI画像で評価したところ、大脳皮質量が平均1.1ポイント増加したという。 45~55歳の女性の約60%では、特に増加がが顕著だったという。 神経線維の増加も見られたとしている。 大脳皮質の量が増えれば認知機能が改善され、認知症の予防に役立つことも期待される。
 
 高カカオチョコレートは甘味は少ないが、カロリーや脂質の高いものがあり、また残留農薬の問題もあるので、食べ過ぎには十分注意して楽しみたいものだ。
 
いつ渡そバレンタインのチョコレート  田畑美穂女
中年やバレンタインの日は昨日  小西昭夫
やけに効くバレンタインの日の辛子  三村純也 

八方尾根スキー場サイズ小
曇りの八方尾根スキー場・競技前の兎平ゲレンデ

 

夜間頻尿と食塩

 就寝中に3回以上の排尿がある場合、夜間頻尿という。 夜間頻尿は眠りが中断されるので、誰にとっても厄介で、特に高齢者にとっては、つらい症状の一つである。 原因は一様でなく、過活動膀胱、膀胱炎、前立腺肥大、高血圧、糖尿病、心不全、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群、睡眠障害など多彩である。 

 長崎大学の研究グループの報告によると、高食塩摂取群低食塩摂取群に比べて夜間の排尿回数と排尿量がいずれも多く、食塩摂取量は夜間頻尿の独立した増悪因子であることが分かったという。 高齢者の夜間頻尿では、薬物療法として、過活動膀胱では抗コリン薬(ベシケアなど)、前立腺肥大ではα1受容体遮断薬(ユリーフなど)の処方を見ることが多い。 食事中の減塩は、薬物療法の前に、まず実行してみたい生活習慣の改善である。 

 冬は鍋料理など体が温まる濃い味の料理が増え、塩分のとり過ぎになりやすい。 また寒いと、かく汗も少なく、循環血液量が増え、夜間頻尿となりやすい。 夜間頻尿の傾向を認めたら、まずは減塩を実行してみたいものである。

両の手に朝茶を握る寒さかな  杉山杉風
ここに居るはずもないのに冬の夜  臼井昭子
寒けれど二人寝る夜ぞ頼もしき  松尾芭蕉

紫晃サイズ小
冬牡丹 「紫晃」  (2017年2月5日 撮影)

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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