ナッツが心血管疾患を予防する

 米国ハーバード大学の研究グループは、このほど20万人超(年齢45~76歳)について、21~28年間に及ぶ3つの前向き調査研究の結果をまとめ、クルミやピーナッツなどのナッツを多く食べる人ほど心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患の罹患リスクが減少すると発表した(Guasch-Ferre、et al. J Am Coll Cardiol 2017;70:2519-2532 ).。

 これによると、1週間に28gのナッツ類を5日以上摂取するグループは、ほとんど食べないグループに比べて脳血管疾患リスクが14%低下した。 クルミやピーナッツの摂取は、総心血管病リスクを13~19%低下させ、心臓冠動脈疾患を15~23%低下させたという。 

 ナッツは不飽和脂肪酸や食物繊維、ミネラル、ビタミン類を豊富に含む健康食品として、あるいは「天然の健康カプセル」として、日常の食生活に上手に取り入れることが賢明と言えるようだ。 ただ摂りすぎると、高エネルギー食となり、肥満の原因ともなりうるので、過剰摂取には注意したいと思う。

晴れし日の胡桃の落つる音と知る  中村汀女
秋風の吹けども青し栗の毬  松尾芭蕉
よろこべばしきりに落つる木の実かな  富安風生

菊と小虫
遅咲きの我が家の庭の菊と小虫  (2017年12月19日 撮影)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29145952

肥満、糖尿病とがん

 世界の成人のうち肥満又は過体重(体格指数 25以上)の人は約20億人、糖尿病患者は約4億2500万人と推定され、ともに現在増加傾向が指摘されている。

 がんは正常な細胞の遺伝子に2~10個程度の傷がつくことにより発生するとされ、この遺伝子変異の積み重ねにより、がん細胞が完成して発がんする。 遺伝子変異を促す要因は、喫煙、飲酒、食塩過剰摂取、酸化ストレス、放射線、ピロリ菌・ウイルス感染、運動不足など多彩だが、最近イギリスの研究グループ(Pearson-Stuttardら)が、世界がん統計のデータを解析した結果、がんの新規患者の約6%は肥満と糖尿病が原因となっていることが判明したと、Lancet Diabetes & Endocrinology 誌に発表した。

 がんの部位別で特に肥満と糖尿病がリスク要因として高かったのは、肝臓がんと子宮がんであった。 また肥満のみが原因のがんは、糖尿病のみが原因のがんの約2倍であったという。 

 肥満と2型糖尿病はいずれも生活習慣を改善することによって解消を期待できる病態である。 しかし、ひとたび肥満や糖尿病を発症すると、よほどの実行力と強い意志がない限り、元に戻すのが難しい病態でもある。 命に係わる発がんリスクを減らすためにも、まずは日頃から標準体重(または体格指数25未満)の維持に努めたいものだ。 

是見よと松提げ帰る年の市  夏目漱石
年の市何しに出たと人のいふ  小林一茶
のぼせたる女の顔や年の市  日野草城

庭のナンキンハゼ
我が家の庭のナンキンハゼ  (2017年11月 撮影)

ビールと認知症

 早や師走入りで今年も最終章を迎えた。 昨日は列島に寒波が襲来し、九州でも初雪が積もったと報道された。 いよいよ冬将軍の到来である。 夜歩くとXマスのイルミネーションが輝いて、山ではスキー、町では忘年会のシーズンでもある。 お酒を飲む機会が増えるので、この季節、飲み過ぎには注意したい。 飲酒の失敗談は多くの人が持つ。 特に生来、お酒に弱い人が雰囲気に呑まれて無理して飲むことは禁物だし、ましてや他人へのお酒の強要は悪徳である。

 ビールの原料となるホップは、華やかな香りと爽やかな苦味を持つことから、原料として1000年以上にわたり愛用されている。 ホップ由来成分のイソα酸(Iso alpha acids )はビールの苦味成分だが、このイソα酸に認知症予防効果があると発表され注目の的である。 

 キリン健康技術研究所、東大、学習院大の共同研究グループによると、イソα酸を、毎日1㎎/体重1kgを認知症マウス(アルツハイマー病モデルマウス)に、7日間経口投与すると、投与群のマウスは非投与群のマウスに比べて9.5倍も認知機能が改善したというのだ。 脳内のアミロイドβは投与群で有意に低下し、ミクログリアの老廃物排除活性は高まり、海馬における脳内炎症は緩和されたという。 増える認知症対策として、イソ酸に期待大である。

 古来より、「良薬は口に苦し」(Good medicine tastes bitter to the mouth.) という。 ヒトの舌の味蕾には、苦味を感じる受容体が25種類もあるという。 ビールを飲むときは、苦味を存分に味わいながら飲むことにしたいものだ。

クリスマス近づく寮の歌稽古  杉田久女
一堂にこもらふ息やクリスマス  篠原鳳作
うつくしや年暮れきりし夜の空  小林一茶

庭の花
20年も毎秋咲き続ける我が家の庭の花 (2017年 秋 撮影)

 

世界の糖尿病4億2500万人

 今月14日は世界糖尿病デイ(World Diabetes Day)であり、この日を中心に世界規模で糖尿病に対する注意の喚起と予防に関するイベントやシンポジウムなどが各地で開かれている。 今年のテーマは「女性と糖尿病}となっている。 11月14日は1922年にベストとともにインスリンを発見したバンティングの誕生日であり、それを記念して設立されたものだ。

 国際糖尿病連合(IDF)の発表によると、2017年の世界の成人(20~79歳)糖尿病患者は、4億2500万人で、11人に1人の割合だという。 これは2015年に比べ1000万人の増加で、2000年以降は過去最高を更新し続けている。 国別では、1位が中国、2位がインド、3位が米国で、日本は6位である。

 厚労省による2016年の国民健康栄養調査によると、HbA1c値が6.5%以上で糖尿病が強く疑われる者は1000万人で、4年前に比べ50万人増えている。 またHbA1cが6.0~6.5%未満で糖尿病の可能性を強く疑う予備軍も約1000万人いるという。 糖尿病は今や立派な国民病である。

 近年、日本の糖尿病患者の寿命は延びており、30年で約10年延長したという調査結果がある。 治療の進歩による恩恵である。 一方で、オックスフォード大学の研究グループが50万人以上の中国人を対象にした調査研究によると、50歳以下で糖尿病と診断された患者の寿命は、糖尿病のない人に比べ、平均で9~10年短いことが判明したという。 生活習慣を改善し、血糖コントロールを良好に維持すれば、寿命を劇的に伸ばすことも可能となるのが糖尿病である。

 人間は歳とともに万人が老化する。 老化の主要原因は酸化ストレスで増えた活性酸素による蛋白の酸化・変性と、あり余った糖による蛋白の糖化・変性であり、老化の進行を遅らせるためには食後の血糖を上げ過ぎない工夫が必要である。 心したいものだ。

癒し犬触れて笑顔の生身魂  中島澄夫
園児来て顔も華やぐ生身魂  中島澄夫
総選挙棄権はせぬと生身魂  中島澄夫

和合別館2
里の秋: 老人保健施設・和合の里 別館 (2017年11月28日 撮影)

認知症の有病率:日本が最高

 紅葉が山から町へと下りて、我が家の庭のナンキンハゼも色づいて見頃となってきた。 遅咲きの菊も開花して、各地で菊人形展も盛況である。 気温の急変と空気の乾燥で、高齢者にはつらい時期でもあり、体調管理に気遣いが必要だ。

 経済協力開発機構(OECD)が今月10日に発表したところによると、認知症の有病率は先進国中で、日本が最高であるという。 人口に対する認知症の有病率を加盟国35か国で比較すると、第1位は日本で2.3%、第2位イタリア2,2%、第3位ドイツ2.0%であった。 日本では、90~94歳で、男性49%、女性65%が認知症であるとされ、90歳まで生きると、ほぼ2人に1人は認知症の時代を迎えている。 世界で最も高齢化が進んでいる日本が抱える宿命ともいえる。 

 中年時代の元気な時から、楽しみながら認知症の予防を心がけることが求められる。 社交ダンス、卓球、カラオケ、俳句・短歌、将棋・囲碁などのボードゲーム、写真撮影など自分の好きなことで頭を使い続けることが、よい予防対策となるようだから心掛けたいものだ。

梢より銀杏落のさそひ落つ  高浜虚子
西吹ばひがしにたまる落葉かな  与謝蕪村
寂しさやおち葉が下の先祖達  小林一茶
 

外苑銀杏並木1
神宮外苑のイチョウ並木 (2017年11月11日 撮影)
外苑銀杏並木2
神宮外苑のイチョウ並木 (2017年11月11日 撮影)

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR