噛む回数を増やす食事を

 日本人は時代とともに食事時間が短くなり、早食いの人が増えている。 「早飯、早出し、早支度」という言葉もあるように、多忙な社会生活の中で、一部に早食いを美徳とする風潮さえあるが、これは明らかに不健康習慣の一つである。

 日本人の1回の食事に要する食事時間と咀嚼回数の歴史的変遷をみると、縄文・弥生時代にはそれぞれ51分と4000回、平安・鎌倉時代には30分と2000回、江戸時代には22分と1000回、現代は11分と600回となっている(斉藤 滋著:咀嚼とメカノサイトロジー、風土社、1987)。 噛む回数が減ると、必然的に唾液分泌量が減り、唾液のもつ多くの特典を得られないばかりか、時間の短縮は、血糖が上がる前、すなわち脳の満腹中枢が働く前に、沢山食べてしまい肥満となりやすいのだ。 

 食事では、まず「何を食べるか」が重要であるが、次に「どのように食べるか」も劣らず重要であり、「よく噛んで、唾液を沢山出し、時間をかけてゆっくり食べる」ことが大切である。 常日頃、意識しないと、つい早食いとなりやすいので注意したいものだ。 

 よく噛むことの効用は多く、例えば、1)唾液アミラーゼによりデンプンが分解され消化吸収作用を高める、2)唾液中のラクトペルオキシダーゼにより発がん物質を無毒化したり殺菌作用でO157などによる食中毒を予防する、3)唾液中のIgA、リゾチームラクトフェリンなどは静菌・殺菌作用をもつので感染症を予防する、4)唾液中のガスチンは亜鉛と結合し味覚感度を上げ食物本来の味を感じやすくする、5)脳血流を増やし海馬を活性化するので記憶力を上げる、6)満腹中枢が刺激されやすくなり肥満や生活習慣病を予防する、7)EGF(Epidermal Growth Factor:上皮成長因子)の血中および唾液中への分泌が増え、細胞分裂が促進されて、体が若返る、8)高齢者に多い誤嚥性肺炎を予防する、9)骨芽細胞を活性化し顎骨を強化するとともに顔面筋肉を強化し、顔を若々しくする、などがあげられる。

 最近、城西大学の薬学部の研究グループ(押田知樹氏ら)は、9年間約6300人の検診受診者を対象にした研究(第48回日本成人病学会で発表)で、早食いすると男性では肥満を介してHbA1cを上げ、女性では肥満や他の因子とは無関係に独立してHbA1cを上昇させることを明らかにした。 HbA1c(グリコヘモグロビン)は糖尿病の指標になる血液の検査項目で、6.2%未満が望ましい。 早食いをやめれば肥満や糖尿病を改善できる可能性を示す研究結果である。

 「一口30回噛む」を目標にすると、肥満予防やダイエットに役立つとされる。 「箸置き」の習慣を身につけるのもよい。 食物を一口入れたら、ひとまず箸を食卓に置き、よく噛んで呑み込んでから箸を持つ習慣である。 噛む回数を増やす工夫として、食材選びも大切で、野菜、海草、キノコなど食物繊維の多いものを多用し、肉ならハンバーグよりステーキや焼き肉とするなど、調理法も噛まないと呑み込めないように配慮するのがよい。


  蕗の薹見つけし今日はこれでよし           細見綾子
  野菜ありキノコも賑やかキムチ鍋           中島澄夫
  たたずみてやがてかがみぬ水草生ふ         木下夕爾

 わさび農園サイズ小
冬の安曇野 : 万水川の清流(2014.2.24撮影)
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中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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