住宅の気密性を高めると肺がんが増加

 近年、建築術の向上やエネルギー節約の観点もあり住居の気密性が高まっている。 英国で最近行われたモデル研究(James M、他:BMJ,2014)によれば、住宅の気密性を高めて自然換気量を減らすと、室内のラドン濃度が21.2Bq/m3から33.2Bq/m3へと56.6%も増加し、肺がん発症によって4700生存率年数の喪失と278人の死亡をもたらすとの推算が発表された。 またBEIR-第6次報告書(米国1999年)の「ラドン被爆の健康への影響」によれば、非喫煙者の年間11000人の肺がん死亡のうち、2100人から2900人がラドン関連肺癌であったとしている。 

 ラドン(Rn)は無色無臭の自然発生する放射性ガスで、自然放射線の半分以上を占め、希ガスの中で最も重い元素である。 比較的水に溶けやすい。 半減期は3.8日である。 ラドンの上位核種はウランで、地下深部にありマグマの上昇に伴い地表に進出し、ウラン、ラジウム、ラドン濃度の高い地層が形成される。 ウランがエネルギーを出しながら崩壊する過程でラジウムができ、ラジウムが崩壊してラドンができる。 ラドンガスは地中から大気中へ放出され、放射線を出しながら崩壊する過程でイオン化作用を発揮し、帯電しつつ気道の上皮細胞に蓄積されDNAを障害し肺がん発症リスクを上げることになる。 喫煙は肺がんリスク要因の最たるものだが、ラドンはこれに次ぐリスク要因とされ、ウラン鉱山労働者などに肺がん発症が増える。 住居内ラドン濃度と肺がんリスクの関係についても多くの研究がある。

 野外のラドン濃度は大気中で薄められるので問題とはならないが、気密性の高い住宅内では高くなり、炭坑や洞窟などではさらに高くなる。 住宅内のラドン濃度は1階地下室など地面と接する場所で高い。 米国科学アカデミーは、毎年15000~22000人の米国人が屋内ラドン関連肺癌で死亡していると推定する。 ただしラドン関連肺癌の多くは喫煙者に発生しているという事実がある。 

 ラドンの放射能はベクレル(Bq)で表示され、屋外の平均ラドン濃度は5~15Bq/m3である。 室内での世界的な平均ラドン濃度は、39Bq/m3とされる。  最近の推定によると、ラドンに起因する肺がんの率は、6~15%とされ、ラドン濃度が100Bq/m3上がるごとに肺がんリスクは16%増加するとされる。 世界各国の多くは室内ラドン濃度の基準濃度を200~400Bq/m3とし、それ以上では下げるための対応策をとるべきとしている。

 鎌倉時代、兼好法師は「家の作りやうは、夏をむねとすべし。 冬はいかなる所にも住まる。」(徒然草 第五十五段}と書いている。 味わいのある言葉である。 

 さて、ラドン温泉を楽しんだことのある人は少なくないと思う。 温泉の含有成分として、ラドン濃度が74Bq/L以上のものをラドン温泉という。 日本では三朝温泉や有馬温泉などが代表的である。 ラドンのイオン化作用で物質代謝が促進される結果、熱産生が高まり、発汗を促すとともに、神経系の電子配列を変化させ、自律神経系の調節やバランスに好影響を与えることが期待される。 脂質異常症、循環器疾患、高血圧、神経麻痺、慢性関節リウマチ、変形性関節症、自律神経失調症、がんの発育抑制などの療養に利用されつつある。

 1~2月は寒い日が続くが、寒くても暑くても1日1~2回は窓を開け放って、内気と外気の交換を図り家の通気性をよくしたり、床下の通気性をよくするなどの工夫は、ラドンによる肺がんリスクを減らすことになるようだ。


   これがまあ終のすみかか雪五尺     小林一茶
   梅一輪一輪ほどのあさたたかさ     服部嵐雪
   冬木立おとぎの国へ続く道       松永静子

横手山山頂3「サイズ中
横手山山頂よりはるか遠くの富士を望む 2014年正月撮影
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中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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