高尿酸血症とならないために

 私は現在、入所者定員105名、デイケア定員50名の老人保健施設で、要介護高齢者の生活を主に医療面から支援する仕事をしながら、、付設の検診クリニックで受診者から採血された血液生化学データや胃X線フィルム、腹部エコー検査結果の読影を担当している。 最近の目立った傾向として肥満、メタボリック症候群、脂肪肝、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症など、生活習慣の悪さに起因する異常所見の増加がある。 ストレスの多い社会で、飲酒や多食に加えて、運動習慣を放棄している人が増えているようだ。 とくにアルコールの好きな人や肥満の人では、肝酵素の上昇や中性脂肪高値とHDL-コレステロール(善玉コレステロール)低値、血清尿酸値の高い人をみる頻度が確実に増えている。

 ヒトの体を構成している細胞には、すべて遺伝子が入っている。 この遺伝子をつくっている核酸の中にあるプリン体の最終分解産物が尿酸である。 プリン体は細胞の新陳代謝によって血中に放出される他に、活動に必要なエネルギー物質(ATP)の燃焼によって作られたり、生活習慣で大量の飲酒や激しい運動後に、また食品では肉類、レバー、白子、エビ、貝類、蒲鉾など細胞数が多く、プリン体を多く含むものを多量に摂取すると血液中に増加する。 食品中のプリン体は、旨味成分の一つでもある。 

 人の血中尿酸値には男女差があり、女性より男性で高値を示し、平均値は男性5.5mg/dlに対し、女性4.0mg/dlである。 女性で低いのは、女性ホルモンのエストロゲンに腎臓からの尿酸排泄促進作用を認めるためで、閉経後には男性の値に近づく。 女性は3.0mg/dl、男性は1.5mg/dl上がると、7.0mg/dlとなり、溶解の限度を超えるため、この濃度が長期間続くと一部が尿酸塩として結晶化し、主として関節腎臓に析出し、関節炎や腎臓結石、痛風腎となりやすい。 痛風は尿酸塩による急性の関節炎で、手足の関節、中でも足の親指に初発することが多い。 このため日本痛風・核酸代謝学会では、7mg/dl以上を高尿酸血症と定義している。 日本では約1600万人が高尿酸血症とされ、これらの人は痛風予備軍である。 男性の約20%は高尿酸血症だといわれ、痛風患者の90%以上は男性である。痛風患者の治療目標は、関節所見の研究から血清尿酸値6.0mg/dl以下を維持することとされている。 高尿酸血症は、高血圧や糖尿病を合併すると、狭心症、心筋梗塞、脳卒中の誘因となるが、最近の研究によると、単独の高尿酸血症は高血圧や虚血性心疾患と因果関係を示さないとされる。 また体格指数が4単位増加するごとに、高尿酸血症リスクは7.5%増加したというから肥満は大敵である。

さて、尿酸は多すぎると悪役を演じるが、ヒトが生きるために必要な物質でもある。 ヒトの老化促進物質として体内で産生される活性酸素がある。 ヒトが長く生きるためには、これを適度に消去する抗酸化物質を必要とするが、尿酸はヒト血清中に存在する抗酸化物質全体の約半分を占めているのだ。 尿酸はビタミンCより強い抗酸化物質で、その存在価値は極めて大きいものがある。 低値過ぎてもよくないのだ。 成人男性2.9mg/dl以下、成人女性2.5mg/dl以下は低値であり、1.5mg/dl以下を低尿酸血症と呼ぶ。

 高尿酸血症には、1)排泄低下型(60%)、2)産生過剰型(10%)、3)混合型(30%)の3つの型がある。 

 生活習慣で注意すべきは、1)プリン体を多く含む食品やアルコール飲料を控える、2)尿酸排泄を増やすため1日2リットル以上の飲水に心がけ尿量を増やす、3)総カロリーを制限し、理想体重に近づける、4)野菜(キャベツ、大根、ナス、アスパラなど)や果物(バナナ、グレープフルーツなど)などのアルカリ食品を多めに摂取し、尿の酸性化を防ぐ、5)1日30分以上のウオーキングなど有酸素運動を習慣化し、肥満を防止する、などである。

 血中尿酸値が8mg/dl以上では薬物療法の対象となる。 2年前(2011年5月)に、約40年ぶりに新しい尿酸合成阻害薬が日本で開発され注目を浴びている。 これは尿酸合成酵素のキサンチンオキシダーゼの働きを阻害するフェブキソスタット(フェブリク錠)で、尿酸値を下げる作用が従来のアロプリノール(ザイロリック錠)より強力で、肝臓でも代謝されるため腎への負担が軽く、腎障害の人でも使いやすい利点をもつ。 薬剤は、1)尿をアルカリ化する薬剤(ウラリット)、2)尿酸生成抑制薬(フェブリク、ザイロリックなど)、3)尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロンなど)、の3系統に大別され、副作用を避けながら上手に利用する必要がある。


  紅葉見や顔ひやひやと風渡る      蘭更
  冬隣頭寒足熱朝の床           中島澄夫
  菊展の菊縛されてゐて競ふ       高橋京子


    
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中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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