薬草の国内栽培を本格化する

 超高齢社会が進む中、日本における漢方薬の使用量が大幅に増えている。 漢方薬の国内生産高は、2007年には1131億円であったが、今から2年後の2015年にはほぼ倍増し、2000億円超に達すると試算されている。 漢方薬には、数千年の歴史があり、複数の生薬が独特の理論に基づいて正確に混合され、体質や症状に応じて処方される。 生薬には、鉱物由来や動物由来のものもあるが、大部分は薬草である。 カンゾウ(甘草)、トウキ(当帰)、ダイオウ(大黄)など漢方薬の原料となる生薬(薬草)は、現在90%弱が輸入品で、83%は中国からの輸入に頼っている。 生薬は薬草の薬用部位を調整加工(乾燥、加熱、切断、湯通しなど)したものである。 漢方薬メーカー最大手のツムラは、現在118種類の生薬を利用し、129種類の漢方薬をつくっているという。

 日漢協(日本漢方生薬製剤協会)の調査によると、2008年度の生薬総使用量2万273トンのうち、中国産が83%を占め、日本産は12.2%の244トンに過ぎない。 中国政府は、砂漠化につながる野生種の乱獲防止を理由に、2000年以降、甘草の生産・出荷を規制し、供給減で価格上昇が続いている。 価格上昇が特に目立つのは、生薬の約5分の1を占める野生種である。  電子材料や超硬合金、磁性材などに使われるレアーアースの需要がひっ迫し、一時、中国政府による輸出規制も加わって社会問題化したが、同じような問題が今や生薬の分野にもあり、レアプラントなる言葉も出ているこの頃である。

 中国リスクに備えるためもあって、日本政府もやっと重い腰を上げ始めた。 厚労省、農水省、漢方薬メーカー、地方自治体、栽培農家が連携し国内での薬草栽培を積極的に増やし、2016年度までに、生薬の国内生産量を2010年度の1.5倍に増やす新しい事業をスタートさせた。

 日本では、これまで漢方薬メーカーと農家が個別に契約を結び、薬草の栽培を行ってきた。 例えば、最大手のツムラは北海道を主戦場に岩手県、群馬県などで栽培展開している。 しかし、一般的な市場が無いため、国内での流通は思うように進んでいないのが現状である。 そこで国が主導して全国を8ブロックに分け、昨年11月から各地で情報交換会を実施し、「生産者と漢方薬メーカーをマッチングさせる」説明会を今年の夏(8~9月)に開催した。 農水省は2014年度予算の概算要求で、地域の条件に適した栽培マニュアルの作成や栽培技術の確立など、生産上の課題解決に向けた取り組みを支援する新事業に4億7千万円を計上したという。

 新たな中国リスクに備えて、甘草の人工栽培に成功した日本企業もあるようだ。 新事業がレアプラントの窮状を救い、日本農業の振興策の一つとしても役立つことを期待したいものだ。

   
  
   芍薬や棚に古りけり薬箱       水原秋桜子
   ハーブ園よりどりみどり秋の風    中島澄夫
    雨ながら高値くづさず生姜市     内山亜川
 

 

 
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中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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