ダニによる感染症が増える春

 5月の大型連休(GW)が終わった。 「GWより普段の仕事の方が楽だ」という人もいるが、連休は精神的ストレスの緩和には文句なしでよい。 今年の連休は多くの人にとって前後に分断されており、物足りなさが残ったのではないかと思う。 中には歓迎した人もいるだろう。 暦の上では立夏も過ぎてもう夏である。 園芸店は大賑わいで花の好きな人は花壇づくりや鉢植えに励み、畑や菜園をもつ人は夏野菜作りに忙しく立ち回る季節である。 この時期、人のみならずダニが活発に動き出す季節でもある。 5月以降、ダニが媒介する感染症が急増するので注意したい。

 まず疥癬である。 「疥癬」はヒゼンダニ(疥癬虫)によって起こる皮膚病の一つで、日本では昔からあり、家庭内や高齢者施設でしばしば集団発生することで知られる。 衣類や寝具を介して人から人へ伝染する。 予防上は、皮膚の直接接触を避けることが肝心である。  肌同士の濃密な接触で感染するので、性感染症の一つでもある。 感染すると顔、頭を除く全身にかゆみの強い皮疹が出る。 病変部の角質層をこすって顕微鏡で虫体や虫卵を確認して診断する。 イベルメクチンの内服やベルメトリンの外用が有効だ。

 マダ二が媒介するマダ二感染症には、日本紅斑熱重症熱性血小板減少症候群の2つがある。 紅斑熱は日本紅斑熱リケッチアを保有するマダ二に刺されることで感染する。 刺されて2~8日頃から高熱、頭痛、全身倦怠感などカゼ様症状を伴って発症する。 38~40℃の高熱が2~3日続いた後、手足や体幹に米粒大や小豆大の紅斑が出現する。 紅斑は四肢に強く手のひらにもみられる。 かゆみや痛みはない。 注意して探すと皮膚にダニの刺し口を見つけることが多い。 ダニ感染症のツツガムシ病より重症化しやすい。 2012年における日本紅斑熱の感染者は三重県で最も多く、37人であり、6年連続で全国最多を記録した。 治療ではテトラサイクリン系の抗菌薬を第一選択とし、重症例ではニューキノロン薬による併用療法を行う。

 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、最近になってその存在が知られるようになった新しい感染症で、マダ二がもっているSFTSウイルスに感染して発症する。 今年の全国の感染は、紅斑熱が2例(4月21日現在)、SFTSが13例でうち8人が死亡している(4月30日現在)。 いずれの患者にも海外渡航歴はなく、日本国内でSFTSウイルスをもったマダ二に咬まれて感染したと考えられている。 SFTSは、2006年に中国で発見され、2010年の調査結果によると中国で700人以上の感染例があり、米国ミズーリ州でも2例の報告がある。 主症状は発熱と消化器症状(腹痛、吐き気、下痢、下血)に続いて白血球減少、血小板減少がみられ重症化して死亡することもある。 致死率は12%程度と推定される。 治療で有効な抗ウイルス薬はないので対症療法が主体となる。 予防用ワクチンもない。 マダ二は硬い外皮に覆われた比較的大きい(3~4mm)ダニで、草むらや森林に生息しており、市街地周辺でもみられる。 日本では青森県以南の全国に分布する。 マダ二の活動は春から秋に活発となるので、山や草むらに入るときには、肌が露出しない服装をする工夫が必要である。

 農作業や土いじりの際に、ダニの一種であるツツガムシの幼虫に刺されてツツガ虫病を発症するケースが、北海道、沖縄を除く全国各地でみられる。 ツツガ虫病リケッチアをもつツツガムシ幼虫に刺されることによって発症する急性熱性発疹性疾患である。 ツツガ虫は草むら、河川敷、林の土の中に生息する。 刺されても痛みやかゆみはほとんどない。 刺されて10日前後で、40℃前後の高熱と頭痛、全身性の発疹が出現する。 紅斑熱と違い、発疹は手のひらには見られない。 重症例では出血傾向、けいれん、昏睡など中枢神経症状、肝障害、心筋障害、肺炎などを起こし、死亡することもあるが、重症化は紅斑熱より少ない。 春と秋に感染者が増える。 治療の第一選択薬はテトラサイクリン系の抗菌薬である。 農作業時には暑くても長袖や長ズボンをはき、長靴や手袋を着用し、肌を露出しないことが予防につながる。 皮膚の露出部にダニ忌避剤を外用するのも役立つ。 脱いだ上着やタオルを地面や草の上に置かない注意も必要だ。

 野山でレジャーや畑仕事、庭仕事、山仕事をする際は、ダニ類に刺されないよう注意したい。


  野菜苗植えて見つめる夏帽子          中島澄夫
  夏来るその青空を仰ぎおり           多田有花
  夕方の水遣り了えて花あやめ          高橋正子

 

  

 
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コメント

No title

ああ つい最近マダニのニュース遣ってましたね
家には ペット3四いるので中々完全に駆除出来ない
悩みがあります。

夏は害虫との戦いです^^:

Re: No title

> ああ つい最近マダニのニュース遣ってましたね
> 家には ペット3四いるので中々完全に駆除出来ない
> 悩みがあります。
>
 ダニにもいろいろ種類があり、ヒトにとって無毒なものと有毒なものがありますが、見た目にはなかなか
  区別できないので、やはりすべて有毒扱いになり、ダニには少し申し訳ない気持ちが無いでもない
  ですね (^-^)

No title

 室内だけではなく、野菜の植え付けや、草取りの機会の多いシーズン
には皮膚をおおうなど完全防備しても、もぐりこんでくる気がして、姿が肉眼ではとらえにくいだけに注意がより必要ですね。
姿は見えなくても、時には人を死にいたらしめるなど大きな害を与えるという嫌なものですね。


ダニだけではなく、ゴキブリや他の昆虫に負けないよう、勝負の時です。

Re: No title

>  室内だけではなく、野菜の植え付けや、草取りの機会の多いシーズン
> には皮膚をおおうなど完全防備しても、もぐりこんでくる気がして、姿が肉眼ではとらえにくいだけに注意がより必要ですね。
> 姿は見えなくても、時には人を死にいたらしめるなど大きな害を与えるという嫌なものですね。
>
虫対策を強化することも大切ですが、同時に病原体が少々体内に入っても、これに打ち勝てる強靭な健康体を作っておく日頃の努力も忘れないようにしたいものです。 我が家では、今年は網戸の全面的な入れ替えを計画中です。 虫によっては季節感を感じさせてくれる楽しいものも時にはありますね。
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プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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