理想的な脂肪の摂り方とは

 「長生きしたけりゃ肉は食べるな」と題する本が売れているという。 本当かどうか誰も知りたいところだ。 昨今の施設では、高齢者の低栄養がしばしば問題となる。 虚弱化して口も開けず、食べることができないのだ。主原因は蛋白質の摂取不足と筋力低下で、背景に認知機能の低下がある。

 人間の身体は生きるために燃料と酸素を必要とし、燃料は蛋白質、脂質(脂肪)、糖質(炭水化物)の三大栄養素である。1g当たりのエネルギー量は、蛋白質と糖質が共に4Kcal/gで、脂質は9Kcal/gと最大である。 理想的な三大栄養素の摂取エネルギー比率(PFC比率)は、一般に蛋白質(P)20%、脂質(F)20%、糖質(C)60%程度とされ、これをPFCバランスと呼ぶ。  その時の体形や活動状況に応じて、P:15~30%、F:20~25%、C:50~70%の変動域で調整する。 近年、日本では食生活の欧米化が進み、脂質の過剰摂取が生活習慣病の温床となっており、1975年頃の脂質と砂糖の少ない日本型食生活への回帰が望まれている。

 脂質は細胞膜の成分、胆汁酸、性ホルモンの原料となり、不足すると血管が脆くなる。 一方、摂り過ぎると内臓脂肪が増え、肥満、脂質異常症、糖尿病、動脈硬化へとつながる。また脂肪の摂り過ぎは、免疫能の低下を招きNK細胞活性を低下させるので、全エネルギーの22%以下とすることが推奨されている。 NK細胞は体内に侵入したウイルスや日々出現するガン細胞を殺傷する能力をもった免疫細胞の一つである。 脂質の材料となる脂肪酸は、炭素結合の仕方の違いから、飽和脂肪酸一価不飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸の3つに分けられる。 飽和脂肪酸は、最もエネルギー効率のよい安定した脂肪酸で、代謝過程で老化促進因子の一つである過酸化脂質を作りにくい脂肪酸である。 飽和脂肪酸は肉や牛乳に多く含まれ、一価不飽和脂肪酸はオリーブオイルやサフラワー油に多く、多価不飽和脂肪酸は体内で合成できないため必須脂肪酸、または不可欠脂肪酸の異名をもち青魚や豆製品に多く含まれる。 多価不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエンサン)やEPA(イコサペンタエンサン)には抗動脈硬化作用があり、生活習慣病の予防対策として薬品化されている。 第六次改訂日本人の栄養所要量では、脂肪酸の理想的な摂取比率(SMP比)を、飽和脂肪酸(S):一価不飽和脂肪酸(M):多価不飽和脂肪酸(P)=3:4:3となるよう推奨している。

 国立がんセンターの研究チームが今月(H25.3.11)公表した疫学研究によると、肉や乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸を多く摂取すると、脳出血や脳梗塞を含む脳卒中の発症率は23%減少し、逆に心筋梗塞は39%増加したという。 研究チームは日本国内在住の45~74歳の男女約8万2千人を対象に約11年間追跡調査し、動物性脂肪分に多く含まれる飽和脂肪酸の摂取量に応じて、5グループに分けてリスクを調べ、摂取量の最も多いグループ(1日当たり21.6~96.7g)と最も少ないグループ(1日当たり0.8~11.7g)を比較した。  

 総合的にみて、脳卒中にも心筋梗塞にもなりにくいのは、1日に飽和脂肪酸を20g前後摂取する場合で、これは牛乳を毎日コップ1杯(200g)飲み、肉は2日に1回(1回150g)程度食べることに相当し、「飽和脂肪酸は摂りすぎても、少なすぎてもよくない」ことが確認できたとしている。 我々は肉や乳製品を量とバランスを考えて、上手に摂取したいものだ。

 蓮は肉母上は酢でしめるなり          柿本多映
 合掌家自在鈎には牡丹鍋          石崎そうびん
 やましさも食めば忘るる鴨の鍋         岩本和行
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コメント

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そうですよね、好きなものだけに偏らず
なんでもバランスよく食べるのが良いですよね。

でも ケンタッキーのフライドチキンなら
つい3個は食べたくなるんですよね〜(爆

Re: 腹7分目

> そうですよね、好きなものだけに偏らず
> なんでもバランスよく食べるのが良いですよね。
>
 1日30品目以上をバランスよく食べるのが理想のようです。全体として、腹7分目がよいのですが、好物を目の前にすると、理性を失ってしまうのが現実でしょうか。 気をつけたいです。
> でも ケンタッキーのフライドチキンなら
> つい3個は食べたくなるんですよね〜(爆

 入ってしまった時には、一休みして、運動です。 「安静は麻薬、運動は万能薬」ですね。屋内、屋外を問わずに、自分に合った運動を工夫して、筋肉を鍛えエネルギーを消費したいものです。
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プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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