ガン探知犬の活用

 臭いを嗅ぎわける能力はヒトより犬の方がはるかに優れている。 海外旅行から帰ると、空港の手荷物引取所には、賢そうな「麻薬探知犬」が現れて帰国者の間を縫って歩き活躍する姿が目につく。

 臭いを嗅ぎわける嗅覚受容体は鼻腔の鼻中隔上部と左右の上部鼻甲介上部に囲まれた比較的狭い部位にあり、その面積は1cm2である。 人間ではこの部位に、におい受容体が約400種類存在するのに対し、犬やネズミでは2倍以上の約1000種類の受容体が存在するとされ、犬のにおいに対する感覚がいかに優れているかがわかる。 においで刺激された受容体は脳に信号を送り、数万種類ものにおいを嗅ぎわけることになる。

 オーストリアの共同研究チームは、犬に肺がん患者を嗅ぎ当てる高い能力があることを証明し、今月初めに発表した。 研究チームの一人であるPeter Errhalt(クレムス病院呼吸器科長)によると、訓練された「ガン探知犬」は、用意された120の呼気検体の中から70%の確率で肺がん患者の呼気を嗅ぎ当てたという。 呼気中の臭気物質が何かを特定できれば、それを専用にキャッチする機器、「電子鼻」を開発できることになり、肺がんを早期発見する有力な武器になる。

 日本でも数年前から「ガン探知犬」の研究が行われており、九州大学の園田英人教授らの研究(Gut 2011,11,31)によると、大腸癌患者の呼気を嗅ぎわける訓練を受けた「ガン探知犬(ラブラドルレトリバー)は、95%の精度で大腸癌患者の呼気を判別し、大腸内視鏡検査とほぼ同じ正確さであった。 この犬の嗅覚は初期の大腸癌に特に有効で、大腸内視鏡検査では不可能なポリープの良悪性の識別もできたという。

平成23年人口動態調査によると、日本人の部位別のガン死亡数とガン死亡率(人口10万対)は、いずれも男性では1位が肺がん、2位が胃がん、3位が大腸がん、女性では1位が大腸がん、2位が肺がん、3位が胃がん、となっており、ガン対策の中でも肺がんと大腸がん対策は極めて重要である。

 癌患者の呼気は各種がん特有の揮発性有機化合物を含む可能性があり、これを特定することが今後の課題である。 さらにこれに基づき、各種がんに対する「人工鼻」を開発し、がん診断の武器にすることが期待される。
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中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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