ノロウイルス変異型による感染性胃腸炎の流行

 初雪が降り寒さが本格化するとともに、ノロウイルス変異型による感染性胃腸炎の流行が本格化しつつある。 国立感染症研究所によると今年は11月下旬の段階で、過去10年で最も流行した2006年に次ぐ2番目のペースで患者が増えている。 今年は2006年のウイルスが変異した新型が全国の患者から検出され感染力がさらに強まったことが急増の原因とされる。 特に九州と関西で多く、大阪の病院ではノロウイルスの集団感染で入院患者と職員の男女計48人が嘔吐や下痢を訴え、76歳の男性と88歳の女性が死亡したという。 愛知県豊橋市は12月3日、ノロウイルスによる感染性胃腸炎の多発を受け、「感染性胃腸炎警報」を発令した。 

 ノロウイルスとロタウイルスは似た者同士で共に吐き気、嘔吐、下痢、腹痛を主症状とする感染性胃腸炎を起こすが,ロタウイルスが主に生後6カ月から2歳の乳幼児を感染対象とするのに対し、ノロウイルスは乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層に感染する。ノロウイルスは11月から3月にかけて、ロタウイルスはやや遅れて1月から4月にかけて流行する。 インフルエンザと同様に主に冬季に流行するので、米国では俗に「お腹のインフルエンザ(stomach flu)と呼ばれ、日本では「胃腸風邪」と呼ばれたりする。乳幼児のロタウイルス感染症では白色の下痢便をみるので白痢とか仮性小児コレラと呼ばれた歴史がある。

 ノロウイルスの感染経路は3つあり、1)ノロウイルスに汚染されたカキなど貝類や飲料水の摂取(経口感染)、2)ウイルスに汚染したドアの取っ手、吐物、衣服、物品に手指で触り、手指を口に入れることによる感染(接触感染)、3)患者の吐物が飛び散り、その飛沫、塵埃を吸い込んだり、便や吐物の不適切な処理で発生した飛沫を吸い込むことによる人から人への感染(飛沫感染)、などがある。 魚介類の汚染源は下水道の処理水に由来する。

 健全な年長児や成人では感染しても必ずしも発症しないが、感染力が強いのでウイルス数が10~100個程度、口から入ると感染、発症が成立しうる。患者の糞便1gには、100万個~100億個のウイルスが排出される。感染後通常1週間から長いと1ヶ月間ウイルスの排出が続くといわれる。感染から発症までの平均潜伏期間は1~2日で、最短12時間である。

 ノロウイルスは感染力の強さから子供や高齢者が集団生活する施設、保育所、老人保健施設などで集団発生しやすい。元気な成人では1~2日で多くが自然治癒するが、乳幼児、高齢者、免疫不全者では脱水で重症化することがあるので、補水対策を強化する必要がある。ウイルス性胃腸炎では、細菌性と異なり、便に血が混じることはまずない。

 診断には糞便中のウイルス抗原を迅速に検出できるキットがあり、ノロウイルスにはクイックナビ ノロ2が、ロタウイルスにはイムノカードSTロタウイルスやロタレックスドライなどがある。ただしクイックナビ2には次の保健適応の限定がある:1)3歳未満の患者、2)65歳以上の患者、3)悪性腫瘍の診断が確定している患者、4)臓器移植後の患者、5)抗悪性腫瘍剤や免疫抑制剤を投与中の患者、である。

 消毒にはアルコールは無効で次亜塩素酸ナトリウム液(0.02%)を用いる。食品を介した感染の予防には85℃1分間の加熱が有効である。調理器具の熱湯消毒、塩素消毒、手洗いや手袋の使用などが重要である。患者の吐物や糞便の処理には使い捨てのマスクと手袋を着用し、汚物中のウイルスが飛び散らないよう静かに拭き取る。「吐いたら、体を紙で拭き取り、捨てること」が基本である。ノロウイルスに対する特効ワクチンは未開発だが、経口のロタウイルス生ワクチン(ロタリックス、ロタテック)が開発され利用できる。

 治療効果のある抗ウイルス薬はなく、便と共にウイルスを早く排泄してしまう方が回復が早いので、下痢止めは使わない方がよい。 少量ずつ頻回の経口補水(経口補水液OS-1,生理食塩水、スポーツドリンクなどを体温程度に温めて飲用)で脱水を予防し、重症では点滴による輸液が必要となる。

 年末を控えて冬季嘔吐症、冬季下痢症の代表格であるノロウイルスによる感染性胃腸炎にならないよう、特に外出後、食事前、トイレ後には、入念に石鹸で手洗いするよう心がけたい。

 
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プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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