医療のあり方が問われる時代へ

 100年前の日本人の平均寿命は男女とも44~45歳で推移し、これが男女とも50歳を超えたのは65年前の1947年である。 当時は骨や筋肉をはじめ、多くの臓器機能が目立って低下する前に大半の日本人は人生を終えていた。 下肢の筋力低下で車椅子生活を余儀なくされたり、認知症で日常生活動作がままならず、自立した生活を送れなくなるといった困難にはあまり遭遇せずに済んだことになる。 この時代、医療人の使命は最善を尽くして延命させ極限まで生かすことであり、それでよい時代であった。

 さて、平均寿命が男性79歳、女性86歳となった現在、80歳以上人口は平成23年時点で854万人(総人口の6.8%)、70歳以上人口は2181万人(同17.3%)となり、100歳以上人口も4万7000人と右肩上がりで増えている。 一方、厚労省によれば、自立して健康的に生活できる期間を示す「健康寿命」は、平成22年時点で男性70.4歳、女性73.6歳である。かくして治らない加齢変化や、いわゆる老年症候群と複数の慢性疾患を抱え、これといった病気でもなく、かといって健康でもない要介護の虚弱状態にある高齢者の大集団が形成されつつあるのが今の日本の現状である。 健康習慣を確立することによって要介護年数を可能な限り減らし、平均寿命よりも、自立して生きられる健康寿命や健康幸福寿命を延ばすことを目指さねばならない時代となっている。

 新車も数年使うと部品は劣化しはじめ交換が必要となる。 部品交換を繰り返し、やがて経済的に割が合わないと判断されると廃車となる。 人間も20歳代をピークとして多くの臓器機能は劣化しはじめるが、車のように部品交換は簡単ではなく、人工関節や臓器移植など特殊な例を除けば、原則自然のままで経過し、やがて虚弱、老衰となり死に直面することになる。生ある人は間違いなく死を迎える。 近年、自分の終末期の治療のあり方、最後の服装、相続、葬式、墓など自らの終末期をデザインする活動として、「終活」への関心が高まりつつあり、専門書も現れ売れていると聞く。 

 虚弱高齢者を人工呼吸器や胃瘻を用いて延命をはかるより、尊厳ある死に向けて緩和ケアを行いつつ自然死を温かく見守る医療がより重視される時代となってきた。 超高齢社会、多死少子社会となった今、医療への国民の意識改革が求められている。
スポンサーサイト

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
Secret

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめtyaiました【医療のあり方が問われる時代へ】

 100年前の日本人の平均寿命は男女とも44~45歳で推移し、これが男女とも50歳を超えたのは65年前の1947年である。 当時は骨や筋肉をはじめ、多くの臓器機能が目立...

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR