背が高いとがんリスク上昇

 人体は細胞分裂とともに生存しているが、同時に細胞内遺伝子の変異が発生する。 誰とてがんにはなりたくないのが人情だが、がんは加齢とともに増加する。 加齢とともに免疫力が低下し、変異した細胞を処理しきれなくなると、遺伝子変異が蓄積し、変異したDNAの修復ができなくなり、癌化が始まることになる。 がんの原因は、生活習慣、遺伝、感染、化学物質、環境因子など多因子性であるが、最近、「背が高い人ほどがんリスクが高い」という大規模の調査研究が、スペインで開催された欧州小児内分泌学会で発表された。 この傾向は特に女性で顕著にみられたという。

 スウェーデンのカロリンスカ研究所のグループが1938~1991年にスウェーデンで出生した男女550万人の情報を解析したもので、2011年末までの健康状態を追跡調査した結果である。 対象者の成人時の身長は、最低が1m、最高が2m25cmであった。 この研究では、成人時の身長が1mより10cm増加するごとに、がんリスクが女性で18%、男性で11%高まることが明らかになった。 長身の女性は乳がんの発症リスクが20%高くなり、男女ともに身長が10cm増えるごとに悪性黒色腫(メラノーマ)の発症リスクが30%上昇したという。

 かつて英国の医学雑誌「ランセット」に中年女性129万7000人を9年間追跡調査した結果、身長が10cm高くなるごとに乳がんにかかる率が17%増加したとする報告があり、この関係は社会的、経済的状況に関わりなくみられ、喫煙者ではこの関係が消失したという。 喫煙ががんに及ぼす影響が大きすぎてほかの因子の影響が隠されてしまうからである。

 別の研究で、米国ハワイ大学の研究グループは、1900~1916年に生まれた約8000人の男性を調査し、身長158cm以下、158~165cm、165cm以上の3郡で死亡率を比較したところ、158cm以下が最も長生きで、背が高くなるほど寿命が短くなったと報告している。

 日本では2007年に国立がん研究センターのグループが、身長と乳がんの関係を調査し、身長が160cm以上では、148cm以下の女性に比べ、閉経前で1.5倍、閉経後で2.4倍と、乳がん発症リスクが上昇したと報告した。

 直接の原因は未解明であるが、身長の高い人は、一般に細胞数も多い。 今後は成長過程でどんなリスク要因と関わりがみられるのかに注目したいものだ。

 菜の虫や落ちて動かず死んだふり  中島澄夫
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芭蕉の館
秋色の「芭蕉の館」(石川県・山中温泉):2015年11月2日撮影
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中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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