いまどき ビタミンD欠乏症が増えている

 ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つで、主作用は小腸からのカルシウムやリンの吸収を高め、血中濃度を上げることである。 ヒトでは体内でその一部がコレステロールより合成されるが、食事からの吸収が減ると、容易にビタミンD欠乏症になることが知られる。

 紫外線老化促進因子の一つで、光老化を避けるため我々は日ごろから紫外線対策をおろそかにできないが、ビタミンDは皮膚で光化学的に生合成されるため、顔や手足に日焼けクリームなしで少なくとも週2回、5分から30分程度の軽い日光浴をすることが望ましいとされる。 ビタミンDは腎臓の尿細管で活性化されて循環器系に入り諸臓器の細胞核内にあるビタミンD受容体に結合し、その生物効果を発揮する。 日本人の1日所要量は5㎍(200IU)である。 ビタミンDを含む食品は比較的限定的で、魚、卵(卵黄)、キノコ類(きくらげ、干しシイタケ、松茸など)である。

 2000年代に入り、日本だけでなく世界的にビタミンD欠乏症である「くる病」や「低カルシウム血症」の乳幼児が右肩上がりに増えている(Balasubramanian S :Indian J Med Res 2011;133:250-252)。 歩行が始まる1歳過ぎの幼児にO脚や低身長、頭蓋骨の軟化などをみるのがくる病の特徴である。 母乳には、1)免疫物質(分泌型IgA、ラクトフェリンなど)が含まれ感染症を予防する、2)オリゴ糖などが含まれ腸の善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌)の増殖に適する、3)スキンシップを介して母子の情趣的安定に役立つ、などの利点があることから、WHO やユニセフは1980年代末から乳幼児を母乳で育てる母乳育児を推奨しており、その結果赤ちゃんを母乳だけで育てる例が増え、母乳育児は世界的傾向となった。 母乳の欠点は、人工乳に比べてビタミンD含有量が極端に少ないことである。 粉ミルクを使わず、母乳だけで育てるとビタミンDが不足してしまうことになる。 アレルギーなどによる食事制限や偏食も手助けすることになる。

 高齢者のビタミンD不足は認知症リスクを高めるという興味ある報告もある。 米国タフツ大学の研究グループ(Buell JS et al. Neurology :2010, 74;18-26)による、65歳以上の318人を対象とした調査研究によると、認知症の人では血中のビタミンD濃度が有意に低く、またビタミンD濃度が低いグループでは認知症の人が有意に多かったという。 年齢、人種、性別、BMI,教育などを公平に調整しても、ビタミンD不足の人では、認知症リスクが2.3倍、アルツハイマー型認知症リスクが2.5倍、脳卒中リスクが2.0倍、それぞれ高かったという。 さらにフランスの研究グループ(Annweiler C et al. Neurology 2010,74:7-32) は、75歳以上の女性752人の血中ビタミンD濃度を測り、欠乏群(<10.0 ng/ml)と非欠乏群(>10.0 ng/ml)で認知機能検査を比較したところ、欠乏群ではテストの平均値が有意に低く、欠乏者が軽度認知機能障害になるリスクは2.08倍だったという。 

 今年になって米国内分泌学会は、学会誌で、大腸がん、乳がん、リンパ腫などのがん患者は診断時にビタミンD濃度が高いと生存率が高く、予後がよいという研究結果を報告した。 また前立腺がんリスクの高い男性で、ビタミンD欠乏があると、前立腺生検で組織の悪性度は、より高い傾向があるともいう。 「医師はがん患者のビタミンDレベルに十分注意する必要がある」としている。 過栄養の時代であるが、ビタミンD不足にならないよう注意したいものだ。


  春日傘女の手ぶらなかりけり          森眞佐子
  妻出かけ紫陽花揺れて庭手入れ        中島澄夫
  紫陽花や白よりいでし浅みどり         渡辺水巴

紫陽花2H26
わが庭先に咲くガクアジサイ(2014年6月16日撮影)

 

 

 

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中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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