歩行後進国の返上を

 2本足を使って歩くことは人にとって基本的な日常生活動作の一つである。 IT技術が進歩し一昔に比べ、どの職場でも座位時間は確実に増えている。 では、身体の健康を維持するために、我々はいったいどれだけ歩けばよいのだろうか。 

 米国ミズーリ大学医学部のPadilla Jらの研究グループは、このほど「1時間パソコン(PC)の前に座ることで生じる血管障害は、10分の歩行で解消できる」と発表した。 グループは11人の健康ボランティアを対象とした実証実験で、PCの前に長時間座るとベースラインに比べて下肢血流や血管拡張能は確実に悪化するが、約10分(1000歩)ほど自分の好きな速度で歩行すれば、悪化した各種の指標は正常化することを確認したと発表した。 歩く時間が1秒でも惜しい人は、立ったままPCを操作できる机を使うか、ルームランナーを使いながら仕事をすべきだとしている。 

 成人の約7割は自分の健康には興味を示すものの、「健康づくり」には無関心だといわれる。 厚労省の調査によると、日本人の1日平均歩数は男性8202歩、女性7282歩、1日1万歩以上歩いている人の割合は、それぞれ29.2%と21.8%と少ないのが現状である。 本年開催された欧州呼吸器学会では、「いつまでも健康な肺を!」キャンペーンの一環として学会参加者らによる1日1万歩競争が開催され、万歩計や携帯アプリで1日の歩数を計測し、事務局が集計する試みが行われたという。

 加齢に伴う筋肉量の減少は40歳頃に始まり、サルコペニア(加齢性筋肉減少症)と呼ばれる。 筋肉量が減少すると、当然活動量が減るので、普通に食べれば脂肪量は増える。 脂肪量が増えれば、サルコペニア肥満となり、体型の変化には気づきにくいので注意が必要だ。 筋肉は血液中の糖の最大の消費部位であり、筋肉量が減ると糖尿病を発症しやすくなる。 サルコペニアを簡便に知る方法として、両手の人差し指と親指で輪をつくり、ふくらはぎの一番太い部分を囲み、隙間ができれば陽性である。 筋肉量や筋力を維持するには、歩行などの有酸素運動と筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動の2つを組み合わせると効果がある。 高齢者の筋肉トレイニングは、パワーリハビリといわれ、近年、米国では隆盛と聞く。

 世界的な疫学調査によると、日本は1日のうち座っている時間が長い国として、台湾、ノルウェイ、香港、サウジアラビアとともにランクインしており、どうやら歩行後進国の仲間入りをしているようである。 秋は歩いて楽しい季節である。 歳をとっても可能な限り、1日1万歩を達成し、下肢筋肉を鍛え、歩行先進国を目指したいものだ。

芋の茎アーチ描くもの描かぬもの   中島澄夫
秋澄むや山を見回す人の眼も   大串章
あくせくと起さば殻や栗のいが   小林一茶
秋茄子を二つ食べたるからだかな  栗林千津

アザミ2015
アザミ(2015年夏 撮影)
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香辛料摂取で死亡率減少

 抜き菜、間引き菜が美味しい季節である。 先月の連休最後の日(9/23)に種蒔きしたダイコン、カブ、コマツナ、ミズナ、チンゲンサイの芽が伸びて、順次間引くので、お浸しや油いためにすると絶妙な一品となる。 やわらかい舌触りは何とも言えない味である。

 さて唐辛子など香辛料をほぼ毎日食べると、総死亡率が14%低下し、がん死、虚血性疾患死、呼吸器疾患死のリスクも有意に減少するという米中共同の大規模長期調査研究が英国の医学専門誌(BMJ 2015;351:h3942)に発表された。 

 この研究は香辛料を比較的多くとる中国の地域住民、30~79歳の男女48万7375人を対象にして9年間(2004~2013年)前向きに調査したものである。 男女とも香辛料入りの食品摂取量頻度が高いほど全死亡率が低下し、「週1日未満摂取群」に比べ、「週6~7日摂取群」では14%減少した。 低減効果は「生唐辛子」で有意に高かった。 疾患別ではがん死虚血性疾患死呼吸器疾患死リスクが、「週1日未満群」より「週6~7日群」で有意に低かった。

 香辛料(スパイス)は抗老化作用をもつ抗酸化物質の宝庫であり、人体に有益な成分を多く含んでいる。 唐辛子のカプサイシン、胡椒のピペリン、マスタードのアリルイソチオシアネート、ガーリックのジアリルジスルフィド、ショウガのジンゲロールなど多彩である。 食べ物の味付けでは、塩分を減らし、香辛料や酢を上手に使っておいしく食べるよう工夫したいものだ。

手を拡げ泳がせ洗う抜き菜かな  中島澄夫
丸呑はもとより水と胡椒哉   小林一茶
辛辣の質にて好む唐辛子  高浜虚子

鬼百合2015
開田高原で見つけたオニユリ(2015年夏撮影)

名月と満月

 今日から10月、秋もたけなわとなるが、午後から天気は荒れ模様になるようだ。 ここしばらく夜空の美しい日が続いた。 9月27日(日)、28日(月)の名古屋の夜は快晴で、1年に1度の中秋の名月満月を2夜続けて愛でることができてよかった。 恒例の夜のウオーキングから帰り、一休みを入れ、やおら庭へ出て月見団子を口に運びながらの名月観賞であった。 多かれ少なかれのストレス社会にあって、こんな時間をもてるのは、誰にとってもうれしいものだ。

 ところで今年の中秋の名月は満月ではなかった。 満月は一日遅れの翌日であった。 2011年から2013年までは3年続けて中秋の名月と満月は一致したが、2014年から2020年までは一致しない年が続き、両者は1-2日ズレている。 中秋の名月は旧暦の8月15日と決まっており、今年は9月27日に当たる。 月は地球の周りを楕円状の軌道で回っており、満月は地球から見て月が太陽の丁度、反対側に来た瞬間にみられる現象だから、両者は必ずしも一致せず、1~2日ズレる年が多いのだ。

 満月は英語圏ではフルムーン(full moon)、ハーベストムーン(harvest moon)、スーパームーン(supermoon)などと呼ばれる。 ハーベストムーンという言葉は、古代農家ではこの月明りで秋の作物を収穫したことにあるというから微笑ましい。 9月28日の満月は、月が地球に最接近したので、最も小さく見えた3月6日の満月に比べ、大きさで約1.14倍、明るさで約3倍であり、まさにスーパームーンの名にふさわしいものだった。
 
 中秋の名月と満月が1~2日ズレるのも、ヒトを長く楽しませる自然の摂理といってよいのかもしれない。 丸くて、明るくて、大きな月には、何か夢がある。

名月やうさぎのわたる諏訪の海  与謝蕪村
満月をおそれて一里ほどあるく  金子ひさし
明月と我との中を風が吹く  正岡子規

ユリ(開田高原にて)
野生のユリ:ソルボンヌ、開田高原にて (2015年8月 撮影)

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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