超高齢社会と「お薬」事情

 超高齢社会に突入し、日本の国民医療費は年々増え続け、平成25年度には39.3兆円となり40兆円に迫った。 前年と比べ9000億円の増加である。 生産年齢人口減少社会において、増え続ける医療費へのブレーキのかけ方が国に課せられた課題の一つである。 

 医療費のムダ使いとして、最たるものの一つに高齢者宅から発見される飲めずに放置された大量の薬がある。 これは「残薬」と呼ばれ、金額にして年間475億円から500億円に達すると推計されている。 高齢になると、多臓器に障害をもつことが増えることから処方される薬剤が増え、また食事の回数が不規則になったり、認知機能の低下も加わり、残薬が山積みとなるケースが増えるのは自然の流れといえる。

 高血圧や2型糖尿病などで代表される主要生活習慣病は、長年にわたる悪い生活習慣が元凶であり、生活習慣の改善で治すのが医療の本来あるべき姿である。 薬剤の使用はあくまで一時的で補助的手段と考えれば、薬剤費は大幅に削減できる可能性をもっている。 中央社会保険医療協会(中医協)の調査によれば、重複受診に伴う薬局の重複投薬件数は、年間117万件ともいわれる。 

 服薬中の薬剤をまとめた「お薬手帳」を活用するなどして薬を整理し、類似薬の処方をまとめ、種類を必要最小限に制限して飲みやすくすることが求められる。 副作用の減少にもつながる。 高齢者では薬が多すぎて飲めないため病気がさらに悪化することも念頭に置く必要がある。 処方に関わる医師や薬剤師は、残薬の有無を検討し、さらに残薬を作らない工夫が望まれる。 服用する本人のみでなく、周囲も協力して服薬管理を強化するときである。

薬飲む咳すぐ止まり露天風呂    中島澄夫
十薬のつぼみのやうな昔あり    遠藤由樹子
薬飲むさらでも霜の枕かな      松尾芭蕉

パンジー満開
パンジー爛漫 (2015年4月6日 撮影)

スポンサーサイト

花見とトンビの急襲

 先週は大方の桜が満開となり、関東地方以南の桜の名所は花見客でにぎわいを見せたようだ。 私も家から散歩圏内にある熊野神社や扇川沿いの桜並木などへ足を運び、行く春を満喫した。 遅咲きの桜もあるので、まだしばらくは場所を選べば花見を楽しむことができそうだ。 桜好きは見たところヒトは勿論だが、一番手はヒヨドリかもしれない。 桜の中を蜜を吸いながら自由に飛び交うヒヨドリがいかにも軽快で楽しそうなのだ。 

 先日、福岡市内の公園で、花見を楽しむ親と一緒に食事をしていた子供がトンビに急襲されてけがをしたというニュースが報道された。 トンビ(トビ:鳶)はタカ科の猛禽類で、「ピーヒョロロ~」という甲高い澄んだ鳴き声を響かせ、通常は空高く飛ぶ親しみ深い鳥である。 カラスより一回り大きく、上空で気流を上手に利用して滑空するので、羽ばたくことは少なく、いかにも優雅である。 弧を描きながら旋回し、餌を見つけると急降下し捕える習性をもつ。 カエル、トカゲ、ヘビ、魚、動物の死骸などを食べ、肉食が主体だが、都市部では生ごみや弁当の油揚やハムカツサンドなどをさらって食べることもあり、雑食性とされる。 同類の鳥として、ワシタカがある。 ワシ(鷲)、タカ(鷹)、トンビ(鳶)の3つを正確に見分けられる人は少ないようだ。 どれも嘴は鋭く曲がり、足の爪は鋭い。 俳句ではワシ、タカ、ハヤブサは冬の季語だが、トンビは季語ではないようだ。

 ヒトの網膜の細胞は、20万個であるのに対し、ワシやタカでは7倍以上の150万個もあるとされ、素晴らしい視力をもつので、はるか遠方の餌でも確実に見つけることができる。 トンビとカラスの掛け合いはよくみられるが、両者の食べ物は似ており、おなかが空くと旋回しながら下降して食べ物を急襲する(ストーム)習性をもつ。 ともに鋭い爪と鉤状の嘴をもっているので急襲されないよう注意が必要だ。

 花の宴では、下を見るのに夢中になりがちだが、時々は上を見る余裕をもち、トンビやカラスを発見したら早めに切り上げる勇気をもちたいものである。

鳶の輪の高きに夏至はきておりぬ   永田耕一郎
群鳶の舞なめらかに初御空       富安風生
鷹一つ見付けてうれしいらご崎     松尾芭蕉

キノコと桜
桜とキノコ(2015年4月6日撮影)

勅使池の桜
勅使池畔で咲き競う夕桜(2015年4月6日撮影)

飲酒による発がんリスクの上昇

 宇都宮以南で、列島は今や桜が満開である。 古来、花見には酒盛りが似合う。 酒を飲むと人は酔うが、酔いはアルコール(エタノール)による中枢神経の抑制(脳の麻痺)と、アルコールの分解過程で生じるアセトアルデヒドの毒性による酔いの2つからなっている。 

 体内に入ったアルコールは、肝臓で主としてアルコール脱水素酵素によって分解されてアセトアルデヒドとなる。 二次的に生成されたアセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素によってさらに分解され、無害の酢酸となる。 分解に関与する2つの酵素には、それぞれ3種類の遺伝子多型があり、個人によりその酵素活性に差があるため、同じ量の酒を飲んでも酔いや毒性はヒトによって大きな違いがでることになる。

 代謝の中間に生じるアセトアルデヒドは、アルコール以上に毒性が強く、頭痛や悪心を引き起こして二日酔いや悪酔いの原因となり、発がん性を示すため習慣性飲酒者は晩年になり食道がんや大腸がんを発症する例が多くみられる。 肝臓がんや乳がんのリスクも上昇する。 

 日本写真印刷と京大の研究グループは、「飲酒の発がんリスク」を呼気で判定できる測定器を開発したと発表した。 測定では、0.5%以上の濃度のアルコール水を飲んだ後、呼気をバッグに吹き込み、測定器内のセンサーが数分で発がん性物質のアセトアルデヒド濃度を測定できるという。 簡単な呼気検査で、分解能力が高い「野生型」か、低い「欠損型」かを判別し、飲酒により将来がんになりやすい体質かどうかを簡便かつ高精度に識別するという。 企業や大学の検診で利用すれば飲酒指導にも役立てることができるので期待したい。

夜桜を見上げる顔に希望の灯   中島澄夫
耕人に傾き咲けり山ざくら     大串 章
木のもとに汁も鱠も桜かな     松尾芭蕉 

庭のセリと三つ葉
我が家の庭で育ったセリと三つ葉(2015年3月30日撮影) 

2015年最後のスキー
八方尾根スキー場、リーゼングラートより白馬三山を望む(今シーズン最後のスキーにて:2015年3月22日撮影)  

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR