さよなら水銀血圧計

 6月は環境月間であり、今年も全国各地で環境セミナーや環境保全についての関心と理解を深める展示会などの諸行事が行われている。 

 さて、水銀は金採掘や化学工業における触媒としてこれまで広く利用されてきたが、人への毒性が強く、特に神経系への有害作用のため、先進国では使用量が減っているものの、発展途上国では広く利用されている現状がある。 よって様々な排出源から様々な形で環境に放出され、分解せずに全世界を循環している。 特にメチル水銀は生物に入ると蓄積しやすいことが問題である。 人為的な水銀排出の削減、根絶のためには世界規模での取り組みが必要となる。
 
 「水銀に関する水俣条約」は、水銀および水銀を使った製品の製造と輸出入を規制する国際条約で地球規模の水銀汚染の防止を目指すものである。 92か国が署名し2013年10月に日本の熊本市で採択され、発効は批准後の2016年とされている。 熊本はもとより水俣病の発生地として世界的に知られた土地である。 

 水俣病は水銀汚染による公害病で、メチル水銀による中毒性の神経系疾患である。 主症状として頭痛、耳鳴り、四肢末端のしびれ感、手足の震え、運動失調、味覚異常、視野狭窄、聴力障害、言語障害、平衡機能障害、歩行障害などがある。 日本の化学工業会社のチッソ水俣工場が、アセトアルデヒドの生産に触媒として使った無機水銀から発生したメチル水銀をほぼ未処理のまま水俣湾に多量に廃棄したことによって発生した。

 日本国内で水銀が使われた製品として、蛍光灯、乾電池、歯科用アマルガム、体温計、血圧計、殺虫剤、化粧品、石鹸などがある。 これらの水銀含有製品は、6年後の2020年までに製造や輸出入が原則禁止となる。 WHOは医療現場から水銀の排除を勧告しており、血圧の標準測定法として長年親しまれた水銀血圧計も終焉の時期を迎えており電子血圧計などへの変換を急ぐ時である。 ただし廃棄処分に当たっては適法かつ適正に処理する業者、企業を選ぶことが処分者の責務であることを忘れてはならないと思う。

     大蛍ゆらりゆらりと通りけり          小林一茶
     手のひらでせわしく灯す姫蛍         中島澄夫
     赤ちゃんの見つめる先に飛ぶ蛍       立花咲良
     じゃんけんで負けて蛍に生まれたの     池田澄子

芍薬サイズ小

我が家の庭で風に揺れるシャクヤク(2014年5月撮影)
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いまどき ビタミンD欠乏症が増えている

 ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つで、主作用は小腸からのカルシウムやリンの吸収を高め、血中濃度を上げることである。 ヒトでは体内でその一部がコレステロールより合成されるが、食事からの吸収が減ると、容易にビタミンD欠乏症になることが知られる。

 紫外線老化促進因子の一つで、光老化を避けるため我々は日ごろから紫外線対策をおろそかにできないが、ビタミンDは皮膚で光化学的に生合成されるため、顔や手足に日焼けクリームなしで少なくとも週2回、5分から30分程度の軽い日光浴をすることが望ましいとされる。 ビタミンDは腎臓の尿細管で活性化されて循環器系に入り諸臓器の細胞核内にあるビタミンD受容体に結合し、その生物効果を発揮する。 日本人の1日所要量は5㎍(200IU)である。 ビタミンDを含む食品は比較的限定的で、魚、卵(卵黄)、キノコ類(きくらげ、干しシイタケ、松茸など)である。

 2000年代に入り、日本だけでなく世界的にビタミンD欠乏症である「くる病」や「低カルシウム血症」の乳幼児が右肩上がりに増えている(Balasubramanian S :Indian J Med Res 2011;133:250-252)。 歩行が始まる1歳過ぎの幼児にO脚や低身長、頭蓋骨の軟化などをみるのがくる病の特徴である。 母乳には、1)免疫物質(分泌型IgA、ラクトフェリンなど)が含まれ感染症を予防する、2)オリゴ糖などが含まれ腸の善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌)の増殖に適する、3)スキンシップを介して母子の情趣的安定に役立つ、などの利点があることから、WHO やユニセフは1980年代末から乳幼児を母乳で育てる母乳育児を推奨しており、その結果赤ちゃんを母乳だけで育てる例が増え、母乳育児は世界的傾向となった。 母乳の欠点は、人工乳に比べてビタミンD含有量が極端に少ないことである。 粉ミルクを使わず、母乳だけで育てるとビタミンDが不足してしまうことになる。 アレルギーなどによる食事制限や偏食も手助けすることになる。

 高齢者のビタミンD不足は認知症リスクを高めるという興味ある報告もある。 米国タフツ大学の研究グループ(Buell JS et al. Neurology :2010, 74;18-26)による、65歳以上の318人を対象とした調査研究によると、認知症の人では血中のビタミンD濃度が有意に低く、またビタミンD濃度が低いグループでは認知症の人が有意に多かったという。 年齢、人種、性別、BMI,教育などを公平に調整しても、ビタミンD不足の人では、認知症リスクが2.3倍、アルツハイマー型認知症リスクが2.5倍、脳卒中リスクが2.0倍、それぞれ高かったという。 さらにフランスの研究グループ(Annweiler C et al. Neurology 2010,74:7-32) は、75歳以上の女性752人の血中ビタミンD濃度を測り、欠乏群(<10.0 ng/ml)と非欠乏群(>10.0 ng/ml)で認知機能検査を比較したところ、欠乏群ではテストの平均値が有意に低く、欠乏者が軽度認知機能障害になるリスクは2.08倍だったという。 

 今年になって米国内分泌学会は、学会誌で、大腸がん、乳がん、リンパ腫などのがん患者は診断時にビタミンD濃度が高いと生存率が高く、予後がよいという研究結果を報告した。 また前立腺がんリスクの高い男性で、ビタミンD欠乏があると、前立腺生検で組織の悪性度は、より高い傾向があるともいう。 「医師はがん患者のビタミンDレベルに十分注意する必要がある」としている。 過栄養の時代であるが、ビタミンD不足にならないよう注意したいものだ。


  春日傘女の手ぶらなかりけり          森眞佐子
  妻出かけ紫陽花揺れて庭手入れ        中島澄夫
  紫陽花や白よりいでし浅みどり         渡辺水巴

紫陽花2H26
わが庭先に咲くガクアジサイ(2014年6月16日撮影)

 

 

 

梅雨入り

 昨夜、名古屋でも10時過ぎにしとしとと雨が降り出し、梅雨入りとなった。 東海地方の梅雨入りは、昨年より1週間遅いという。 先の日曜日にサツマイモ(紅東)の苗を10本植えたので、私にとってはまさに恵みの雨である。 

  雨の多い6月をなぜ水無月(みなづき)と呼ぶのか、一瞬不思議に思うが、昔使っていた「太陰暦(旧暦)」では、4~6月が夏で、6月は夏の終わりとなるので当然水のない月になるから納得である。 でも今の「太陽暦(新暦)」でも、「梅雨で天の水が無くなる」から、「水無月」でよいのだとする説もある。 また「田植えが終わり田んぼに水を張る必要のある月だ」ということで、「水張月(みづはりづき)」を略して「水月(みなづき)」となったという説も有力らしい。 

 「梅雨入(ついり)」や「梅雨寒(つゆさむ)」は、俳句では当然夏の季語である。 日本では、これまで6月と8月には祝日がなかったが、先月23日の参院本会議で改正祝日法が成立し、2年後の2016年から8月11日が「山の日」として祝日になったので、6月は祝日のない唯一の月となった。 「山の日」は、当初お盆に直結させるため8月12日とする案が有力であったが、この日は日本史上最多の死者数を出した航空事故、日本航空123便墜落事故の日であることから1日前にずらして決まったようだ。 「海の日」に次ぎ、「山の日」ができたのはうれしい。 山に感謝し、夏山や森林浴を楽しみやすくなったのはよいことだと思う。 今月は環境月間でもある。 海や山を大切に守りたいものだ。

   梅雨寒の昼風呂ながき夫人かな         日野草城
   梅雨ごもり眼鏡かけたりはずしたり       ジャック・スタム
   万霊の天より圧す梅雨入かな          目迫秩父


知立かきつばた1
愛知県知立市無量寿寺八橋かきつばた園のカキツバタ

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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