レモンの魅力

 昨秋、庭の片隅にレモン(lemon)の苗を1本植えた。 1~2年で花が咲き実が生るというから楽しみである。 私はカレーを食べるときにレモンを皮ごとおろし金で下し、振り掛けて食べるのが好きである。 味が引き立って一段と美味しくなるのだ。 レモンがないときはスダチを絞ってかけるのも好きだ。 スダチの木は庭に1本あって重宝しているので、今度はレモンの自家製をと思ってのことである。 レモンは、抗酸化物質のエリオシトリン(eriocitrin)に加えて、クエン酸ビタミンCを豊富に含み、動脈硬化、肥満、メタボリック症候群、認知症などの予防効果が期待され、美肌の維持やエイジング ケアに役立つ食品として、近年、注目度の高い食品である。

 レモンの原産地はインド北部のヒマラヤ地方で、栽培が盛んになったのは地中海最大の島、イタリア領のシチリア島で、13世紀頃とされる。 その後、米国に渡り、15世紀頃からカリフォルニアでの栽培が本格化した。 日本への伝来は19世紀後半である。 日本は消費量の9割を輸入に頼っており、約6割を米国西海岸から、約3割を南米のチリや南アフリカより輸入する。 近年、国内産も徐々に増えており、県別生産量の第1位は広島県で、愛媛県、和歌山県がこれに次ぐ。 柑橘類のためポストハーベスト農薬が問題視され、国産の無農薬物は輸入品に比べ一般に2~3割の高値である。

 レモンは、米国などの英語圏では、「欠陥品」や「品行の悪い女性」を意味する俗語として使われ、ダメな新車を、「This is a real lemon.」などと呼んで馬鹿にした使い方をする。 「酸っぱいもの」として、好感をもたれていないのが理由のようだ。 一方、日本では酸っぱさの中にも、ほのかな甘さを感じ、フレッシュなイメージもあることから恋愛や初恋と結び付けられることが多く、しばしば「ファーストキスはレモンの味」などと表現されて、どちらかといえばよいイメージである。高村光太郎の詩に「レモン哀歌」がある。

 従来からレモンには食後高脂血症を抑制する作用(臼田美香ら:日本未病システム学会誌 10:62-63,2004)が知られていたが、最近三重大の研究グループは、DNA配列が人間に似ている熱帯魚を用いた実験でレモンに多く含まれるエリオシトリンは中性脂肪を著明にに下げ、人の培養肝細胞でもミトコンドリアの生成を活発化し、脂肪の蓄積を抑制したと報告した。 広島大保健福祉学部を中心とする共同研究チームの調査研究(対象:中高年女性118名、2009年)では、レモン摂取量の多い人ほど、1)血圧は低く、2)脈波伝播速度(PWV)で評価した動脈硬化度は低く、3)肥満ホルモンのレプチン濃度は低く、4)長寿ホルモンのアディポネクチン濃度は高い、ことが明らかになったという。

 強い抗酸化力をもった黄色色素のエリオシトリンは、レモン果皮100g中に280mg、果汁100g中に12.1mg含まれ、他の柑橘類の30~100倍も多い。 レモンポリフェノールとも呼ばれ、皮にはは果汁の23倍も多く含まれる。 エリオシトリンの抗酸化力はビタミンCの約2倍とされ、特に脂質の酸化を強力に防ぎ、生活習慣病の予防効果を発揮する。 またビタミンCの含有量は、全果100g中100mg、果汁100g中50mgで、柑橘類の中ではトップクラスにあり、血管老化を防ぐとともにコラーゲン生成を促進したり、鉄の吸収を高めるのに役立つ。 酸味の主成分は、クエン酸で、酸濃度が6~7%と高いため生食は困難だが、クエン酸はエネルギー源となるとともに、Caの吸収を促進する作用をもつので高齢期に多い骨粗しょう症の予防に役立つ。 紅茶に輪切りのレモンを浮かべると独特の香りを楽しめるが、これは皮に含まれるリモネンやシトラールによる。 アロマによるリラクセーション作用により、ストレス緩和に有用である。 ケーキやパイの素材としても利用価値が高い。 レモンの皮を下して粉末にし、歯ブラシにつけて歯磨きし続けると漂白効果で歯が白くなり、つやが出て口臭も消えるとされる。 また利用後に残ったレモンで、肉や魚を切った包丁やまな板や手をこすると、特有の匂いを消すことができる。

 生活習慣病対策として、さらに酸化ストレスによる老化の遅延対策として、多くの有益物質を含んだレモンを有効利用したいものである。


    レモンかけ一味違うカレーかな       中島澄夫
    れもん滴り夜に触れし香を昇らしむ     櫛原希伊子
夜々の星檸檬をしぼりながらえて      三谷 昭

スカイラインコース
八方尾根スキー場スカイラインコース(2014.2.23撮影)  
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住宅の気密性を高めると肺がんが増加

 近年、建築術の向上やエネルギー節約の観点もあり住居の気密性が高まっている。 英国で最近行われたモデル研究(James M、他:BMJ,2014)によれば、住宅の気密性を高めて自然換気量を減らすと、室内のラドン濃度が21.2Bq/m3から33.2Bq/m3へと56.6%も増加し、肺がん発症によって4700生存率年数の喪失と278人の死亡をもたらすとの推算が発表された。 またBEIR-第6次報告書(米国1999年)の「ラドン被爆の健康への影響」によれば、非喫煙者の年間11000人の肺がん死亡のうち、2100人から2900人がラドン関連肺癌であったとしている。 

 ラドン(Rn)は無色無臭の自然発生する放射性ガスで、自然放射線の半分以上を占め、希ガスの中で最も重い元素である。 比較的水に溶けやすい。 半減期は3.8日である。 ラドンの上位核種はウランで、地下深部にありマグマの上昇に伴い地表に進出し、ウラン、ラジウム、ラドン濃度の高い地層が形成される。 ウランがエネルギーを出しながら崩壊する過程でラジウムができ、ラジウムが崩壊してラドンができる。 ラドンガスは地中から大気中へ放出され、放射線を出しながら崩壊する過程でイオン化作用を発揮し、帯電しつつ気道の上皮細胞に蓄積されDNAを障害し肺がん発症リスクを上げることになる。 喫煙は肺がんリスク要因の最たるものだが、ラドンはこれに次ぐリスク要因とされ、ウラン鉱山労働者などに肺がん発症が増える。 住居内ラドン濃度と肺がんリスクの関係についても多くの研究がある。

 野外のラドン濃度は大気中で薄められるので問題とはならないが、気密性の高い住宅内では高くなり、炭坑や洞窟などではさらに高くなる。 住宅内のラドン濃度は1階地下室など地面と接する場所で高い。 米国科学アカデミーは、毎年15000~22000人の米国人が屋内ラドン関連肺癌で死亡していると推定する。 ただしラドン関連肺癌の多くは喫煙者に発生しているという事実がある。 

 ラドンの放射能はベクレル(Bq)で表示され、屋外の平均ラドン濃度は5~15Bq/m3である。 室内での世界的な平均ラドン濃度は、39Bq/m3とされる。  最近の推定によると、ラドンに起因する肺がんの率は、6~15%とされ、ラドン濃度が100Bq/m3上がるごとに肺がんリスクは16%増加するとされる。 世界各国の多くは室内ラドン濃度の基準濃度を200~400Bq/m3とし、それ以上では下げるための対応策をとるべきとしている。

 鎌倉時代、兼好法師は「家の作りやうは、夏をむねとすべし。 冬はいかなる所にも住まる。」(徒然草 第五十五段}と書いている。 味わいのある言葉である。 

 さて、ラドン温泉を楽しんだことのある人は少なくないと思う。 温泉の含有成分として、ラドン濃度が74Bq/L以上のものをラドン温泉という。 日本では三朝温泉や有馬温泉などが代表的である。 ラドンのイオン化作用で物質代謝が促進される結果、熱産生が高まり、発汗を促すとともに、神経系の電子配列を変化させ、自律神経系の調節やバランスに好影響を与えることが期待される。 脂質異常症、循環器疾患、高血圧、神経麻痺、慢性関節リウマチ、変形性関節症、自律神経失調症、がんの発育抑制などの療養に利用されつつある。

 1~2月は寒い日が続くが、寒くても暑くても1日1~2回は窓を開け放って、内気と外気の交換を図り家の通気性をよくしたり、床下の通気性をよくするなどの工夫は、ラドンによる肺がんリスクを減らすことになるようだ。


   これがまあ終のすみかか雪五尺     小林一茶
   梅一輪一輪ほどのあさたたかさ     服部嵐雪
   冬木立おとぎの国へ続く道       松永静子

横手山山頂3「サイズ中
横手山山頂よりはるか遠くの富士を望む 2014年正月撮影

冬将軍と世界最低気温

 新年になったと思ったら、もう月が変わり2月、如月(きさらぎ)である。 庭にある2本のブルーベリーの木の芽が膨らみ始めた。 如月という名前の由来は、寒さで着物を更に重ねて着ることから「着更着」あるいは「衣更着」とする説が有力とされる。 その他、草木が生え始める月であるから、「生更木」とし、また気候が陽気になる季節で「気更来」とする説など諸説がある。 

 日本では通常1月下旬から2月上旬が寒さのピークである。 最近、北国では高齢化も進み、雪下ろしで屋根から雪とともに落下して雪中に埋まり窒息死する事故も少なくない。 この時期、スキーに出かけるとあちらこちらの屋根から大量の雪が落下するシーンを目にすることも多い。 

 我々が住む地球上でこれまでに記録された最低気温は、-89.2℃で、1983年7月21日に南極大陸ボストーク基地での記録とされる。 人間の住む居住地での最低気温記録は、-72.1℃で、ロシア東シベリア・サハ共和国のオイミャコンという村で、1933年2月6日に記録され、これは世界最低気温としてギネスで認定されている。 オイミャコンは、標高740m、人口約800人でロシア屈指の長寿村として知られる。 サハ族はその昔、遊牧民で、敵に追われて北へ北へと逃げた結果、近くに天然の温泉があるオイミャコンに定住できたという。 1年の半分以上は冬で、平均気温は1月でー49.8℃、2月でー47.7℃というから寒さの程がわかる。 この厳寒さが彼らの身を守り、味方となったことになる。 凍結するため水道はなく、給水車が各家庭を回り給水する。 1930年頃にの採掘で発展したが、今は林業、トナカイの飼育、狩り、魚釣り、観光などで生計を立てているようだ。 

 気温がー40℃以下になると、バナナで釘が打てるというが、日本での最低気温の記録はー41℃で、1902年1月25日に北海道旭川地方気象台での記録という。

 このところ日本では程よい寒さで、インフルエンザウイルスやノロウイルスによる感染者が急増しているが、冬の気温が軒並みー50℃以下となる世界一寒い村、オイミャコンでは細菌は死滅し、ウイルスも不活発となり感染症はほとんどなく、長寿者が多いという。

 冬の寒さも一様ではない。 自分の住む環境に上手に順応し、気分も新たに、まだしばらく続く冬将軍と付き合いたいものである。

 
   露天風呂凍死注意の貼紙も       中島澄夫
   我れが行く天地万象凍てし中      高浜虚子
   極寒の鳥ちりぢりの行方かな      上田 操


サイズ小天心堂1

岡倉天心六角堂(通称、天心堂):赤倉温泉スキー場にて 平成26年1月25日撮影

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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