冬季における空気乾燥の人体への影響

 今朝起きて庭に出たら、雨水を集めるために置いているバケツの水に氷が張っており、思わず見る今冬の初氷であった。 暦の上では、小雪も過ぎており、寒波の到来とともに空気が乾燥し、湿度が50%を切る日もみられるこの頃である。 冬場には湿度が30%以下となる日もあり、エアコンやストーブで暖房すると20%以下となる日もあるので、湿度管理には注意したいと思う。

 日本のオフィスにおける湿度基準は、ビル管理法(のべ面積3000平方メートル以上の大型ビルに適用)で規定され、相対湿度40~70%である。 また労働安全衛生法(事務所衛生基準規則:大型ビル以外のすべての事務所に適用)では、作業環境測定としてCO,CO2,室温、外気温、および相対湿度の定期的測定を行うよう規定し、相対湿度が40~70%となるよう努めることを義務づけている。 低湿度の人体への影響を3点セットで考えてみたい。

 まず第1は、冬季に世界的に流行するインフルエンザウイルスの問題である。 インフルエンザウイルスは、湿度50%で約半分が死滅し、湿度60%で約80%が死滅するが、湿度20~35%では、一気に活性化し伝播しやすくなる。 予防にはワクチン接種や、うがい、手洗い、マスクの着用などの励行も大切だが、室内では湿度計を置き、湿度管理にも注意したい。

 第2は、乾燥肌の問題である。 「老化とは乾燥の過程である」ともいわれ、加齢とともに特に皮膚の皮脂腺が萎縮し、皮脂分泌量が減少するとともにセラミドやNMF(自然保湿因子)の低下も手伝い、表皮の水分が蒸発して、皮膚はカサカサ、唇はゴワゴワとなって乾燥肌となる。 皮脂腺は男性ホルモン支配であり、男性ホルモンの少ない女性では、皮脂分泌量が男性より少ないので同じ年齢なら女性のほうが乾燥肌になりやすい。 皮膚が乾燥すると、肌荒れや小じわの原因となり、知覚神経が刺激されてかゆみの原因ともなる。 ひっかくと湿疹や炎症を起こし、高齢者では難治化しやすい。

 ヒトの肌に適した湿度は、60~70%であり、湿度が60%以下になると乾燥肌となりやすい。11月から4月の東京における月別の平均湿度をみると、2月の46%を最低に、全て60%以下であり、この時期には湿度管理が重要となり、皮膚の保湿ケアにも配慮が必要となる。 皮膚のトラブルを起こす前に、白色ワセリン、尿素クリーム、ソフティ保護オイルなど市販の保湿剤を上手に使って皮膚の乾燥を防ぎたい。

 第3は、ドライアイ(角膜乾燥症)の問題である。 ドライアイ(Dry eye)はパソコンやスマートフォンの普及とともに、近年先進国で急激に増えている現代病であり、日本でも推定患者数は2200万人いるとされる。 目の違和感や疲労感で始まり、目がヒリヒリする、目がかすむ、視力はいいのに見ずらい、などの症状が出る。 原因は複合的で、空気の乾燥、大気汚染、PCやTVの凝視で瞬きが少ない、涙量と質の低下、コンタクトレンズの長期使用など多彩だが、要は目を乾かさない工夫が必要である。点眼薬を使う場合は防腐剤の入っていないものがよい。 

 冬季には湿度が低下しやすく、人体への影響も少なくないので、加湿器などを上手に使い、湿度管理に気を配りたいものである。


  暖房や生徒の眠り浅からず          村上沙央
  焚くほどに風がもて来る落ち葉かな      良寛
  頬杖の風邪かしら淋しいだけかしら      池田澄子  

 
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桑の葉に血糖降下作用

 今月14日(木)は、世界保健機関(WHO)が制定した「世界糖尿病デー」(World Diabetes Day)であった。 WHOと国際糖尿病連合(IDF)が協同で1991年に制定したもので、この日はインスリンの発見でノーベル賞を受賞したカナダの医師、フレデリック・バンティングの誕生日である。 当日は世界各地で、ブルーライトアップを灯す行事が行われ、糖尿病の予防、治療、管理を喚起する啓発運動が展開された。 ブルーライトは全世界が取り組むべき課題として、糖尿病の脅威を認知するよう促す色とされる。 

 世界糖尿病連合によれば、2011年の世界の糖尿病患者は3億6600万人で、2030年には5億5200万人に達すると予想されている。 厚労省の統計では、日本国内の糖尿病とその予備軍は約2210万人で、成人の4人に1人以上に糖尿病のリスクがあるとされる。 日本人は本来、インスリン分泌能が悪く、ちょっとした過食や運動不足が原因の比較的軽度の肥満でも、内臓脂肪肥満となりやすく、糖尿病を発症しやすい人種である。

 糖尿病による世界の年間死者数は、380万人以上に達し、10秒に1人が糖尿病に関連した疾患で死亡している。 これはAIDSによる死者数と同程度である。

 昭和薬大の研究グループ(小野寺敏准教授ら)による最近の研究では、カイコが食べる桑の葉に血糖値の上昇を抑える成分(1-デオキシノジリマイシン)があり、食事の際に「桑茶」を飲み続けると糖尿病の予防になるという。 飲んですぐ劇的効果はないが、飲み続けると確実な効果が期待できるという。 糖尿病や予備軍の人は試してみる価値がありそうだ。 

 私が子供の頃は養蚕業が盛んで故郷の信州佐久地方では、いたるところ桑畑が広がっていた。 桑は青紫色の実をつけるので、大粒の実を摘んで食べるのも楽しみの一つであった。 養蚕業の衰退とともに桑畑も消え、昨今は桑に出くわすことはまれである。 ここにきて桑栽培が見直される時代が再来するかもしれない。

 パキスタン北部のフンザ、旧ソ連のカフカス(コーカサス)地方、およびエクアドル南部のビルカバンバは、世界三大長寿地域として知られる。 フンザでは、アンズをよく食べ、イスラム教国でありながら桑の実で造った酒をたしなむ地域として知られ、カフカスはケフィアと呼ばれる乳製品で有名である。 ケフィアはカフカス地方で2000年以上も前から飲まれ続けている発酵乳で、一般のヨーグルトが乳酸菌やビフィズス菌のみで発酵させる単独発酵で作るのに対し、ケフィアは乳酸菌と酵母によって複合発酵(共生発酵)させて作る。 いずれの地域も粗食で知られる。 桑の葉や桑の実に注目したいと思う。


 桑の実に顔染む女童にくからず      飯田蛇笏
 君が手もまじるなるべし花すすき     向井去来

中日ドラゴンズ選手の契約更改で思う

 例年11月12月になると、プロ野球選手の契約更改交渉が行われ、新聞紙面を飾ることも多い。 各選手はその年の活躍状況が査定され、戦力外通告されたり、大幅ダウンで泣かされる選手がいる一方で、大幅アップの提示を受けて笑う選手もありと、悲喜こもごもの人生劇場が展開される。 成績不振選手の大幅減俸は当然である。 年俸のダウン額が大きくて、自分で納得できず、自由契約となってしまう例もあり、実力社会とはいえプロ野球の世界は厳しいものがある。

 私は地元のドラゴンズファンであり、勝敗はもとより、各選手の活躍には目を光らせているほうだと思う。 今年のドラゴンズは、投手陣にケガ人が多く、10勝投手は若手の大野雄大選手のみで、チーム成績は当然ながらリーグ4位と振るわず、高木監督の苦肉の策も実らず、頼みのCSにも届かなかったのは残念であった。 打撃陣ではルナ選手の怪我が大きかった。

 来年、上位を目指すためには、何としてもカブレラ、大野、吉見を中心とした投手陣の充実、補強が優先されると思う。 今年の打撃陣の中で最も目立つ活躍をしたのは、藤井淳志外野手である。 出場試合数は108試合とやや少ないが、他に3割を打った選手が途中帰国のルナのみの中、準レギュラーで、打率3割5厘、6ホームランは立派である。 彼は俊足で、肩もよく、打撃センスは抜群で、もっとバントの技術を磨いて、常時出場すれば3割は楽に打てる選手だと思う。 ところがである。 数日前に彼の契約更改記事が、中日スポーツ紙で報道された。 100万円増の2300万円でサインした(させられた?)というのだ。 これは大島洋平外野手の半分にも満たない額である。 驚きという他はない。 今年の実績から見て、倍増でもおかしくはない。 断わっておくが、私は藤井選手の関係者でもなければ、知り合いでもなく、直接会ったこともない。中日の外野陣は和田、藤井、大島、平田、堂上(剛)、など多彩であるが、走攻守の総合力で見ると、現時点でNo1は藤井だと私は思う。 

 チームは、契約更改において、公正で正確に選手の力量、貢献度を評価できる人を登用すべきである。 変てこな理屈は排除すべきだ。 経営者の姿勢が問われていると思う。

 先週末、宇都宮を訪れた際に、紅葉の始まった那須烏山の那珂川周辺を歩き、産卵のため懸命に泳ぐサケの遡上を見て感動した。 サケの遡上は2年前にアラスカで観察したのが初めてだった。 まさか国内で目の当りで観察できるとは思っていなかったのでとても感動的だった。 サケはシロサケで、遡上はこのところ年々増えているという。


   幸せの追はねばひよいと来る小春     鷹崎由未子
   鮭群れて上るもあれば屍も          中島澄夫

  

高尿酸血症とならないために

 私は現在、入所者定員105名、デイケア定員50名の老人保健施設で、要介護高齢者の生活を主に医療面から支援する仕事をしながら、、付設の検診クリニックで受診者から採血された血液生化学データや胃X線フィルム、腹部エコー検査結果の読影を担当している。 最近の目立った傾向として肥満、メタボリック症候群、脂肪肝、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症など、生活習慣の悪さに起因する異常所見の増加がある。 ストレスの多い社会で、飲酒や多食に加えて、運動習慣を放棄している人が増えているようだ。 とくにアルコールの好きな人や肥満の人では、肝酵素の上昇や中性脂肪高値とHDL-コレステロール(善玉コレステロール)低値、血清尿酸値の高い人をみる頻度が確実に増えている。

 ヒトの体を構成している細胞には、すべて遺伝子が入っている。 この遺伝子をつくっている核酸の中にあるプリン体の最終分解産物が尿酸である。 プリン体は細胞の新陳代謝によって血中に放出される他に、活動に必要なエネルギー物質(ATP)の燃焼によって作られたり、生活習慣で大量の飲酒や激しい運動後に、また食品では肉類、レバー、白子、エビ、貝類、蒲鉾など細胞数が多く、プリン体を多く含むものを多量に摂取すると血液中に増加する。 食品中のプリン体は、旨味成分の一つでもある。 

 人の血中尿酸値には男女差があり、女性より男性で高値を示し、平均値は男性5.5mg/dlに対し、女性4.0mg/dlである。 女性で低いのは、女性ホルモンのエストロゲンに腎臓からの尿酸排泄促進作用を認めるためで、閉経後には男性の値に近づく。 女性は3.0mg/dl、男性は1.5mg/dl上がると、7.0mg/dlとなり、溶解の限度を超えるため、この濃度が長期間続くと一部が尿酸塩として結晶化し、主として関節腎臓に析出し、関節炎や腎臓結石、痛風腎となりやすい。 痛風は尿酸塩による急性の関節炎で、手足の関節、中でも足の親指に初発することが多い。 このため日本痛風・核酸代謝学会では、7mg/dl以上を高尿酸血症と定義している。 日本では約1600万人が高尿酸血症とされ、これらの人は痛風予備軍である。 男性の約20%は高尿酸血症だといわれ、痛風患者の90%以上は男性である。痛風患者の治療目標は、関節所見の研究から血清尿酸値6.0mg/dl以下を維持することとされている。 高尿酸血症は、高血圧や糖尿病を合併すると、狭心症、心筋梗塞、脳卒中の誘因となるが、最近の研究によると、単独の高尿酸血症は高血圧や虚血性心疾患と因果関係を示さないとされる。 また体格指数が4単位増加するごとに、高尿酸血症リスクは7.5%増加したというから肥満は大敵である。

さて、尿酸は多すぎると悪役を演じるが、ヒトが生きるために必要な物質でもある。 ヒトの老化促進物質として体内で産生される活性酸素がある。 ヒトが長く生きるためには、これを適度に消去する抗酸化物質を必要とするが、尿酸はヒト血清中に存在する抗酸化物質全体の約半分を占めているのだ。 尿酸はビタミンCより強い抗酸化物質で、その存在価値は極めて大きいものがある。 低値過ぎてもよくないのだ。 成人男性2.9mg/dl以下、成人女性2.5mg/dl以下は低値であり、1.5mg/dl以下を低尿酸血症と呼ぶ。

 高尿酸血症には、1)排泄低下型(60%)、2)産生過剰型(10%)、3)混合型(30%)の3つの型がある。 

 生活習慣で注意すべきは、1)プリン体を多く含む食品やアルコール飲料を控える、2)尿酸排泄を増やすため1日2リットル以上の飲水に心がけ尿量を増やす、3)総カロリーを制限し、理想体重に近づける、4)野菜(キャベツ、大根、ナス、アスパラなど)や果物(バナナ、グレープフルーツなど)などのアルカリ食品を多めに摂取し、尿の酸性化を防ぐ、5)1日30分以上のウオーキングなど有酸素運動を習慣化し、肥満を防止する、などである。

 血中尿酸値が8mg/dl以上では薬物療法の対象となる。 2年前(2011年5月)に、約40年ぶりに新しい尿酸合成阻害薬が日本で開発され注目を浴びている。 これは尿酸合成酵素のキサンチンオキシダーゼの働きを阻害するフェブキソスタット(フェブリク錠)で、尿酸値を下げる作用が従来のアロプリノール(ザイロリック錠)より強力で、肝臓でも代謝されるため腎への負担が軽く、腎障害の人でも使いやすい利点をもつ。 薬剤は、1)尿をアルカリ化する薬剤(ウラリット)、2)尿酸生成抑制薬(フェブリク、ザイロリックなど)、3)尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロンなど)、の3系統に大別され、副作用を避けながら上手に利用する必要がある。


  紅葉見や顔ひやひやと風渡る      蘭更
  冬隣頭寒足熱朝の床           中島澄夫
  菊展の菊縛されてゐて競ふ       高橋京子


    

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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