台風とキノコシーズン

 台風26号が日本列島の太平洋側を足早に通過し、伊豆大島に土石流が発生して大きな被害を及ぼした。 惨事の記憶も冷め止まぬうちに、27号、28号が南海上に発生し、27号は26号とほぼ同じような進路をとって日本列島の太平洋側に今日接近するようだ。 今月になって日本列島に接近する台風の数は5個目で、気象庁によると、10月の台風数としては観測史上最多になるという。 過去1955年と2012年の4個が最多であった。

 台風は赤道付近の温かい海の北西側に発生し、海水の表面温度が高いと発生が増える。 今年は赤道周辺の海水温が例年に比べ1度高いことが影響しているらしい。 適量の雨は植物や人にとって欠かせないが、台風は強風と集中豪雨をもたらすので直撃は避けたいと思うのが人情というものだ。

 私はキノコ好きである。 シイタケ、シメジ、ナメコ、マイタケなど栽培されたキノコもよいが、クリタケ、松茸、リコボウ、など山で採れる天然キノコの味は格別である。 キノコの王様格は何と言ってもマツタケであろう。 風味はもちろんだが、食感や漂う香りはまた別格である。 今年は近くのスーパーでも、中国産やカナダ産が比較的安く売られている。 面白いことに、松茸の発生と台風の強風とは深い関係があるらしく、風で赤松が強く揺すられ根が刺激されると、程よい刺激となり、「強風と雨の後、5日以内に松茸は出る」といわれる。 松茸の発生には、梅雨の雨、暑い夏、9月・10月の雨、10月の穏やかな低温が重要とされる。 気温と降水量から松茸発生の時期を予測することも可能で、条件が悪いと1本も出ない年もあるというから驚きである。 とキノコにも関係があり、落雷したところにはキノコが沢山生育するとされ、人工雷や電気ショックを利用した増産作戦も実際に行われているらしい。 今年は松茸の当たり年で、南信州の山では例年より早く出て早く終わったという。 先月、信州木曽のキノコ料理店より連絡が入り、今年は10月中旬で本格的なキノコ料理は終わるといわれ、それではと決意し車を走らせることになった。

 キノコは世界で約1万種類、日本国内でも数千種類が存在し、食用キノコ(mushroom)に加え、毒キノコ(toadstool)も200種類以上あるとされる。 食用キノコか毒キノコか分かっていないものも多い。 厚労省の統計によると、例年国内では約200人のキノコ食中毒患者が発生し、うち数人が死亡している。 自分でキノコ狩りをする場合、「キノコ図鑑」は必須である。 食用としてのキノコ料理の歴史は古く、すでに古代ローマ時代に色々なキノコ料理があり、日本でも縄文時代の遺跡から「キノコ型土器製品」が出土している。

 日本料理における三大旨味成分は、昆布のダシから発見されたグルタミン酸、干しシイタケなどの煮出し汁に含まれるグアニル酸、かつお節のダシから発見されたイノシン酸である。 キノコ類の旨味はグアニル酸とグルタミン酸が主体であるが、他に遊離アミノ酸、マンニトール、トレハロース、糖アルコールなど色々な有機酸類が関わり、その相乗効果によって、キノコ独特の旨味が生じることになる。 キノコの旨味成分が一番多い時期は、カサがある程度開き、胞子が出るくらいの頃とされている。 

 キノコは生で食べても多くは旨味を感じない。 グアニル酸などキノコの旨味成分の多くは加熱により増えるからである。 土瓶蒸し、煮物、コンロ焼き,汁物などがよい。 スダチを絞ってかけると別の味を楽しめる。 食用キノコとされるものでも、加熱が不十分だと中毒症状を起こすことがあるので、生食には注意する必要がある。


   松茸や知らぬ木の葉のへばりつく      松尾芭蕉
   松茸のコンロの上ではじきけり        中島澄夫
   ころころと松茸焼けり内緒旅           凡茶
 

 Mushroom
信州木曽の松茸料理
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薬草の国内栽培を本格化する

 超高齢社会が進む中、日本における漢方薬の使用量が大幅に増えている。 漢方薬の国内生産高は、2007年には1131億円であったが、今から2年後の2015年にはほぼ倍増し、2000億円超に達すると試算されている。 漢方薬には、数千年の歴史があり、複数の生薬が独特の理論に基づいて正確に混合され、体質や症状に応じて処方される。 生薬には、鉱物由来や動物由来のものもあるが、大部分は薬草である。 カンゾウ(甘草)、トウキ(当帰)、ダイオウ(大黄)など漢方薬の原料となる生薬(薬草)は、現在90%弱が輸入品で、83%は中国からの輸入に頼っている。 生薬は薬草の薬用部位を調整加工(乾燥、加熱、切断、湯通しなど)したものである。 漢方薬メーカー最大手のツムラは、現在118種類の生薬を利用し、129種類の漢方薬をつくっているという。

 日漢協(日本漢方生薬製剤協会)の調査によると、2008年度の生薬総使用量2万273トンのうち、中国産が83%を占め、日本産は12.2%の244トンに過ぎない。 中国政府は、砂漠化につながる野生種の乱獲防止を理由に、2000年以降、甘草の生産・出荷を規制し、供給減で価格上昇が続いている。 価格上昇が特に目立つのは、生薬の約5分の1を占める野生種である。  電子材料や超硬合金、磁性材などに使われるレアーアースの需要がひっ迫し、一時、中国政府による輸出規制も加わって社会問題化したが、同じような問題が今や生薬の分野にもあり、レアプラントなる言葉も出ているこの頃である。

 中国リスクに備えるためもあって、日本政府もやっと重い腰を上げ始めた。 厚労省、農水省、漢方薬メーカー、地方自治体、栽培農家が連携し国内での薬草栽培を積極的に増やし、2016年度までに、生薬の国内生産量を2010年度の1.5倍に増やす新しい事業をスタートさせた。

 日本では、これまで漢方薬メーカーと農家が個別に契約を結び、薬草の栽培を行ってきた。 例えば、最大手のツムラは北海道を主戦場に岩手県、群馬県などで栽培展開している。 しかし、一般的な市場が無いため、国内での流通は思うように進んでいないのが現状である。 そこで国が主導して全国を8ブロックに分け、昨年11月から各地で情報交換会を実施し、「生産者と漢方薬メーカーをマッチングさせる」説明会を今年の夏(8~9月)に開催した。 農水省は2014年度予算の概算要求で、地域の条件に適した栽培マニュアルの作成や栽培技術の確立など、生産上の課題解決に向けた取り組みを支援する新事業に4億7千万円を計上したという。

 新たな中国リスクに備えて、甘草の人工栽培に成功した日本企業もあるようだ。 新事業がレアプラントの窮状を救い、日本農業の振興策の一つとしても役立つことを期待したいものだ。

   
  
   芍薬や棚に古りけり薬箱       水原秋桜子
   ハーブ園よりどりみどり秋の風    中島澄夫
    雨ながら高値くづさず生姜市     内山亜川
 

 

 

スズメバチが舞う季節

 この2日間は朝起床しても、これまでのような暑さを感じず、やっと「秋だなあー」と思える朝である。 台風22号、23号とも日本列島への上陸はなく、東に西へと進路を変えて、一息である。 畑仕事のやりやすい週末だが、突然スズメバチの接近に出くわすことがあり、思わず身を構えることがある。 

 秋になって、スズメバチの動きが活発化し、中国では陜西省の3つの市で10月2日現在で1600人以上がスズメバチに刺され、41人が死亡したと伝えられる。 安康市では現在も206人が入院中で、うち37人が重症だという。 スズメバチは巣の模様が雀の模様に似ているところから、スズメバチ(wasp,hornet)の名前がついたとされ、日本に生息するスズメバチは16種に及ぶ。 地方により「クマンバチ」とか、巣の形が亀に似ているので、「カメバチ」とも呼ばれる。 今夏は猛暑日が続き、スズメバチの餌となる虫が大量発生したり、樹液が豊富で、激しい雨も少なかったため、巣も落下せず幼虫の生存率を上げ、大量発生につながったようだ。

 スズメバチのメスは強力な毒液をもち、好戦的で人への攻撃性も高いので刺されないよう注意が必要だ。 オスは毒針をもたず威嚇行動のみで、女王蜂も毒針は持つが刺すことはないとされる。 毒液は「毒のカクテル」とも呼ばれ、いくつかの毒素の混合物である。 メスは自分の身に危険を感じると、毒液を空中に散布することもあり、これが目に入ると失明することもあるというから、発見したら静止し、静かに離れることが大切だ。 スズメバチによる死亡例は、熊や毒蛇による咬害死亡よりはるかに多いので注意したい。

 10月は巣の中にいるスズメバチの数が最大となり、また秋口は攻撃性が最も高くなる時期でもある。 本能的に巣を守る習性をもつので、巣を見つけたら、10m以上離れるようにし、ハチが接近しても大声で騒ぐことは禁物である。 を攻撃する習性があるので、この時期に黒い帽子や黒い衣服を着るのは避けた方が無難だ。 家の周りに甘いジュース類のペットボトルや缶を放置するのも、ハチを呼び込むことになり避けたい。 香水には、しばしばスズメバチの警報フェロモンと同じ物質が含まれていてハチを興奮させるので、秋の山野行では控えた方がよい。 庭先の洗濯物を取り込むときにもハチが潜んでいないかどうか注意して取り込むようにしたい。

 万一、スズメバチに刺された場合には傷口を自分の指でしぼって、刺された毒液を絞りだし、流水で洗浄したのち、市販の抗ヒスタミン軟膏かステロイド軟膏を塗り医療機関を受診するのがよい。 口で毒液を吸い出してはならない。 2度刺されると特に危険で、アナフィラキシーショックで死亡することがある。 自己注射薬のエピペンを持参している場合には、これを筋注または皮下注射すればアナフィラキシーショックを緩和できる。

 高い山の木々が色づき始め、紅葉が見ごろを迎えたようだ。 秋の園芸、農作業も本格化するこの時期、思わぬハチの事故に遭わないよう注意して行動したいものだ。 


 肉皿に秋の蜂くるロッジかな       中村汀女
 見下ろして秋澄む湖の魞模様       岡本まち子
 高原はすでに秋めく花と人        青柳志解樹

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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