日本の食糧自給率39%に思う

 この夏は炎暑続きで畑の草取りがままならず、トマト、アスパラ、ピーマン、ネギ、サツマイモなどは伸びた雑草に埋まってよく見えないほどになった。 今年の猛暑は全国的で、高知県では国内観測史上最高となる41℃を記録し、総務省消防庁によれば、熱中症で救急搬送された人数の累計は9月22日時点で5万8555人に達し、昨年同時期と比べ3割近い増加だったというから暑さのほどがわかる。 やや暑さが和らいだ今月の2回の連休を活用しての草取りがほぼ終わり、我が家では、やっと秋野菜の種まきや苗植えの準備が整ったところである。

 さて、人間が生きていくためには、食料の安定確保を欠かせない。 だから自分の国の食糧自給率が世界的にどのくらいの位置にあるかを知ることは大切で、国は国策として自国の食糧自給率の改善に努める義務をもっている。食糧自給率とは、国内消費される食糧のうち、どの程度が国内産で賄われているかを示す指標で、カロリーベースと生産額ベースの2種類がある。 

 農林水産省は先月、昨年度(2012年度)の我が国の食料自給率が、カロリーベースで39%であったと発表した。 39%は3年連続で変わらず、最近は足踏み状態が続く。 この39%を高いと見るべきか低いと見るべきか、見解は立場によって異なるが、日本政府は7年後の2020年には50%まで引き上げる目標を掲げている。 昨年度は天候に恵まれて国産の小麦や大豆の生産が増え、国内消費も増えるというプラス効果はあったものの、主食のコメの値上がりでコメの消費が減少し相殺されたことが足踏みの主要原因だったようだ。

 主要国の食料自給率をカロリーベースで、資料の揃った2009年で見ると、カナダ223%、オーストラリア187%、米国130%、フランス121%、ドイツ93%、スペイン80%、韓国50%、日本40%となっている。 100%を超えている国は、4カ国で、これらの国は立派な農業国だといってよい。 

 低迷する日本の食料自給率を打破するには、生産効率の高いスマートアグリを助成するなどして今後、官民が協調して、農業の構造改革を強力に、そして迅速に推進する必要があるように思う。 我が国政治家の力量が問われている。 

   
   そば所と人はいふ也赤蜻蛉        小林一茶
   松風に筍飯をさましけり         長谷川かな女
   孫と居て口数多し葱坊主         春藤セイコ
  

 
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痩せるホルモンGLP-1の正体

 数ヶ月前になるが、サバ缶を食べると、「痩せるホルモンGLP-1が増える」とTV番組で報道され、一時期スーパーからサバ缶が消えるという珍事が起きた。 GLP-1は、Glucagon-like peptide-1(グルカゴン様ペプチドー1)の略語で、食後に主に下部小腸粘膜に多いL細胞より分泌され血中に放出される消化管ホルモンの一つである。 GLP-1は血糖値が高い時は膵β細胞からのインスリン分泌を増強し、血糖値が正常あるいは低い時にはインスリン分泌を増強しないという特徴をもつ。 

 GLP-1の主な生理作用として、1)血糖値に依存して膵臓β細胞からインスリン分泌を刺激し、α細胞からのグルカゴン分泌を抑制して血糖を下げる、2)食後の胃運動や胃酸分泌、膵酵素分泌を抑制し、小腸からのグルコース吸収を遅らせ食後血糖の上昇を抑える、3)脳(視床下部)の満腹中枢を刺激し食欲を抑え体重減少をもたらす、などが知られる。さらに肝臓でのグリコーゲン合成促進とグルコース産生抑制、腎臓からのNa排泄促進と尿量増加、膵β細胞保護増殖作用、心筋保護と血圧低下、脳へのアミロイドβ沈着を抑制、など多彩で有益な作用をもつことが明らかにされつつあり、長寿ホルモンとしての期待もある。

 小腸上部に分布するK細胞から分泌される消化管ホルモンのGIPにも膵からのインスリン分泌を刺激する作用を認めるが、GIPには脂肪蓄積による肥満作用がみられるため糖尿病治療薬の候補にはならない。

 食事刺激によってL細胞から分泌されたGLP-1は、約2分間で全身の血管や臓器に存在するDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)という酵素により、90~95%が不活化、破壊され、膵に到達できるのは、わずか5~8%である。 そこでDPP-4の働きを阻害し、糖尿病の高血糖を改善する内服薬として、DPP-4阻害薬(シタグリプチン、アログリプチンなど)が開発された。 2010年から今年にかけて続々と登場し、単独投与では低血糖を起こさない2型糖尿病治療薬として広く使われつつある。 またGLP-1アナログ製剤として、1日1回皮下注射用のGLP-1受容体作動薬(リラグルチド)も開発され使用され始めた。

 食後のGLP-1分泌には、個人差が大きいとされる。 分泌が多い人は糖尿病にはならないわけだ。 GLP-1の分泌を促進する栄養素として、食物繊維、グルコースなどの単糖、グルタミンなどのアミノ酸、オレイン酸、αーリノレン酸、EPA,DHAなどの不飽和脂肪酸、などが知られる。 食物繊維はアボカド、ゴボウ、ひじきの煮つけ、カボチャなどに多いが、GLP-1分泌細胞(L細胞)は小腸下部に多いので、そこまで到達する食物繊維を効率よく摂取する必要がある。 EPAやDHAはサバ、イワシ、いくら、マグロなど青身魚に多い。 サバ缶(200g)には水煮(380Kcal),みそ煮(380Kcal)、味付け(430Kcal)の3種類があり、カロリーと塩分の最も少ない水煮がダイエットには適している。 糖尿病患者では、魚類の摂取量が多い人ほど、コントロール目標となるHbA1cの改善効果が大きいとされる。 最近の研究によると、オメガ3脂肪酸(EPA,DHA、DPA)の血中濃度が高いと、悪性の前立腺癌の発症リスクが2倍以上に増加するとされ、特にサプリメントや薬剤での摂取には男性では注意が必要だ。

 三大栄養素をバランスよく摂取することが、食後のGLP-1分泌を高める要因の一つであり、食品構成を考えて選び、野菜から先に食べるよう心がけ、早食いを避け、食後の血糖上昇が過度にならないよう注意したいものだ。


   恋びとよ砂糖断ちたる月夜なり      原子公平
   玉霰夜鷹は月に帰るめり         小林一茶
   月の出や総立ちとなる松林        徳永山冬子

褐色脂肪細胞の強化で肥満防止を

 特別たくさん食べていないのに年齢とともに体重が増えてしまう人が多い。 食べすぎればなおさらで、活動量が減れば筋肉量が減り、筋肉脂肪と内臓脂肪が増える。 サルコペニア肥満と呼ばれ、転倒や高血圧、糖尿病のリスクが高くなる。  これは生命活動を維持するために必要最低限のエネルギー消費である基礎代謝が加齢とともにほぼ直線的に減少するからである。 静止状態のエネルギー消費量を40歳代と50歳代を比べてみても、50歳代では、1日当たり40~70Kcalも低下するのだ。 なお、サルコはギリシャ語で筋肉、ペニアは喪失を意味する。

 人間の脂肪細胞には、余ったエネルギーを中性脂肪の形で貯蔵する白色脂肪細胞と、カロリー燃焼工場ともいえるミトコンドリアが豊富でミトコンドリア内膜にあるUCP-1の作用を介して、脂肪酸を燃焼させ、熱産生を行い、エネルギー消費を誘導する褐色脂肪細胞の2つがある。 白色脂肪細胞はカロリーを溜め込み大型化し、肥満や生活習慣病を引き起こす元凶となるが、褐色脂肪細胞はカロリーを燃焼させ、代謝を高め、太りにくい体質にする善玉脂肪である。 健常成人では体脂肪量と褐色脂肪組織量は逆相関し、体脂肪量が多い人ほど褐色脂肪組織量は少なくなる。 また褐色脂肪細胞は新生児の体温維持に働き、新生児期の量は約100gで、これを100%とすると、20歳代で55%、40歳代で25%、50歳代で10%と加齢とともに激減する。 結果として低代謝化が進み、熱産生が減ってしまうことになる。 

 PET-CT検査で、全身の褐色脂肪組織の分布をみると、成人では首の後ろ肩甲骨の周囲脇の下心臓・腎臓の周囲に多く存在し、少数ながら全身にも散在する。

 トウガラシには体温を上昇させる働きがあるが、その辛み成分のカプサイシン、非辛味成分のカプシエイトは、ともに交感神経を活性化し、褐色脂肪細胞の脂肪酸燃焼を盛んにする作用をもつ。 カプサイシンの大量摂取は大脳辺縁系に悪影響を及ぼすので、過剰摂取は控えるべきである。 辛味のないカプシエイトはアルカロイド化合物の一つで、新種のトウガラシである「CH-19甘」の天然成分で、胃腸への負担が少なく、血圧への影響もないため、近年注目の抗肥満素材である。 最近の研究によると、定期的な運動習慣は、白色脂肪細胞径や数の減少をもたらすのみならず、成熟した白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞へ分化させる可能性も指摘されている。いわゆる白色細胞の褐色化(ベージュ細胞)である。 

 褐色脂肪細胞は18℃以下の低温で活性化しやすいので、入浴時には首、肩、脇の下を冷水シャワーしたり、クーリング後に首、背中、脇の下の運動を加えると効果的である。 長期寒冷刺激は、褐色脂肪細胞を活性化するので、スキーなどウインタースポーツは、下半身の筋肉率をアップし、基礎代謝を上げるのに理想的な運動といえる。 食事では、トウガラシ、ニンニク、コーヒーなど代謝アップ成分を含む食材を上手に使い、楽しく食べて太り過ぎないようにしたいものだ。 

また一人暮雪にかへりスキー脱ぐ        水原秋桜子
ころび方褒められもしてスキーかな        中島 葵
ダイエット成功衣更へにけり           花岡明美

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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