ダイエット成功のカギは血中ビタミンD濃度

 ビタミンDの主作用は小腸や腎臓でカルシウムの吸収や再吸収を促進することによって骨や筋肉を強化することであり、不足すると小児ではくる病、成人では骨軟化症、骨粗鬆症を起こすことは多くの人が知っている。 だがその古典的な作用とは別に、近年様々な生理作用が明らかになりつつあり、認知症ガンの予防効果、カゼ・インフルエンザなど感染症の予防筋力増強肥満予防などにも役立つことが明らかにされて注目されつつあるのだ。

 カナダのラバル大学医学部のTremblay,A.らは、血中ビタミンD濃度を上げるとダイエット効果が倍増することを明らかにした{Brit. J. Nutr. 2009:14:101:659-63}。 研究によると、肥満女性63人(体格指数32、平均年齢43歳)に対し、200IUのビタミンDと600mgのカルシウムを1日2回投与し、このビタミンD・Ca群と偽薬を投与したプラシーボ(偽薬)群において、1日690Kcal減の食事制限プログラムを15週間行い比較した。ビタミンD・Ca群では体重5・8Kg減少、体脂肪4.7Kg減少だったのに対し、対照の偽薬群では体重1.4Kg減少、体脂肪1.2Kg減少であり、体重減で4.1倍、体脂肪減で3.9倍の効果を示した。

 また別の最近の研究では、20歳代の肥満女性23人に、1日500mgのカルシウムと、10人には1日100μg(4000IU)のビタミンDサプリメントを、13人にはビタミンDの入っていない錠剤を12週間飲んで、運動を実施したところ、ビタミンD入りを飲んだグループでは血中ビタミンD量が著明に増加し、血中ビタミンD量が多くなった人ほどウェスト・ヒップ比が減少し、ダイエット効果が大きかった{Clin. Nutr.:S0261-5614(12)0018-1,2012}。

 ビタミンDは魚油に多く含まれる脂溶性ビタミンである。 日焼け止めクリームなしで太陽光に当たると、必要量のほぼ半分は皮膚で光化学的にコレステロールから生合成できるビタミンでもある。 ガラス越しの日光は無効である。 主として皮膚表皮の有棘細胞層と基底細胞層で生成される。 厚労省の食事摂取基準では目安量として5μg(200IU)/日、許容上限値として50μg(2000IU/日を推奨している。 米国摂取基準は10μg(400IU)/日である。 米国では乳脂肪分の調整を行った牛乳にビタミンAとDの添加を義務付けている州が多い。 また、米国では日本で主流の「成分無調整」牛乳はほとんど存在せず、普通牛乳は脂肪分が年間を通して3.25%に調整され、ビタミンAやDが添加されているものが中心である。 有効血中濃度を適正維持するためには食事からの摂取だけでなく、適度な日光浴も必要である。 肝臓と腎臓で活性化されるので、肝障害腎不全の人では不足しやすく、補充が必要となる。 

 食品では、きくらげ(乾)、しらす干し、いわし、にしん、いくら、紅鮭、さんま、煮干しなどにビタミンDは多く含まれる。 健康維持には30ng/ml以上の血中濃度を保つことが望ましいとされるので、不足しないよう心がけたいものだ。

     四月馬鹿病めど喰わねど痩せられず       加藤知世子
     春の風和風の香りダイエット            中島澄夫
     まり投げて見たき広場や春の草          正岡子規

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認知症対策は国民的課題

 超高齢社会を迎えて、これから認知症患者が年々増えることが予想されている。 亡くなった米国のレーガン元大統領や英国のサッチャー元首相も晩年この病気に悩まされている。 平均寿命が40数年だった100年前には全く問題とならなかった病気である。 厚労省推計によると、我が国の認知症高齢者の人数は2005年の約205万人から、2015年には1.5倍の302万人、2035年には2.2倍の約445万人になる。 認知症になると、やがて自分の娘や息子に会っても顔が判らず、記憶障害だけでなく、種々の行動異常精神障害を起こし、介護なしでは日常生活を送ることができなくなる。

 国は急増しつつある認知症対策として、本年4月の新年度より「認知症施策推進5カ年計画」(オレンジプラン)をスタートさせた。 これはこのまま高齢化が進行すると、現状の病院や介護施設、在宅サービスなどの対応では応じきれなくなるためで、施設が中心だったこれまでの施策を大きく転換し、施設ではなく、そのまま居宅して住み慣れた家で暮らし続ける「在宅ケア中心」に変えるものである。 

 初年度の2013年にはまずモデル事業として、全国に約10か所の「認知症初期集中支援チーム」を新設し、ナースや作業療法士を直接、家庭訪問させて、対処方法などを説明できる体制をつくる。 さらに認知症を早期に診断する医療機関を5年間で500か所整備することとしている。

 認知症は全体の約50%がアルツハイマー型認知症で最も多く、次いで脳血管性認知症レビー小体型認知症がそれぞれ約20%を占める。 

 アルツハイマー型認知症の主因は、脳内にアミロイドβという異常たんぱく質が蓄積するためだが、これを分解する酵素のネプリライシン活性の高い人は、当然認知症にはなりにくい。 定期的な運動習慣はネプリライシン活性を高めるとされる。 また神経ペプチドの一種であるソマトスタチンには、ネプリライシン活性を高める作用があるとされ近年、注目の的である。 最近、理化学研究所と自治医科大学などの共同研究チームは、ネプリライシンを作る遺伝子を脳に運ぶウイルスを開発し、この遺伝子をもったウイルスを、実験的に作成したアルツハイマー病のマウスの血管内に注射したところ、脳内のアミロイドβが35%減少し、学習・記憶能力が通常のマウスのレベルまで回復したと発表した。 この方法が安全で、人でも実施可能になれば、認知症の治療は現行より大きく前進することになる。 現在使われている治療薬は、いずれも進行を遅らせる程度の効果しかなく、根本的治療薬ではないからだ。 

 予防、診断、治療、ケア、リハビリを含めて、認知症対策は現在、大きな国民的課題であり、決して他人事ではない。

   小鳥来て何やら楽しもの忘れ            星野立子
   あなただあれなどと母いふ暑さかな         竹内 立
   生も死もたつた一文字小鳥来る           石寒太

早歩き30分で死亡リスク半減

 毎日30分以上の早歩き(相当の運動)をしている2型糖尿病の患者は、殆ど運動しない患者に比べて死亡の危険がほぼ半分だったとの研究結果を、厚労省研究班がこのほど公表した。 新潟大学などの研究班は、全国69の医療機関における糖尿病患者約1700人を対象として、仕事や日常生活以外での1週間の運動量が多い順に3つのグループに分けて8年間追跡調査した。

 その結果、合併症などで死亡するリスクが、運動量が最も多かったグループは、運動量が最も少ないグループの0.47倍と、半分(5割)以下になっていた。 また脳卒中を発症するリスクも最も運動量が多いグループは、最も少ないグループの0.57倍と4割近く低かった。

 最も運動量が多いグループは、時速6キロメートルの早歩きに相当する運動を毎日30分以上していた人達で、運動時間の平均は1時間10分程度であった。 糖尿病の治療は、これまでどちらかといえば食事療法薬物療法が主体で、運動療法は軽視されがちであった。 しかし運動の効果はこれまで考えられていた以上に大きいことがこの研究で明らかとなったのである。

 運動療法の基本はウォーキングであり、その治療効果は近年多岐にわたり、世界的に科学的根拠が集積されつつある。 例えば、1)運動は認知症のリスクを減らす{Larson EB et al.:Arch Intern Med 2006:144(2):73-81},2)運動は傷の治癒を早める{Emery CF et al.:J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2005:60(11):1432-36}, 3)ウォーキングにより、乳がんの死亡率は半減する{Holmes MD et al.:JAMA2005:293(20):2479-86}、などである。

 60歳以上の高齢者が運動を始めるのに当たり、最も注意すべきは転倒しないことである。 高齢者の転倒は大腿骨骨折などを起こしやすく、回復も遅く、寝たきりにつながりやすい。 特に選びは転倒予防の上でも大切で、ウェアは綿100%より吸汗速乾性のあるシャツが快適で、軽くて小さくたためる上着も用意したい。 高齢になるほど下肢筋力が低下しており転びやすいので、体力指標となる心肺機能下肢筋肉量柔軟性に応じて、無理のない運動プログラムを組み立て、適宜増減しながら継続することが大切である。

 山路きて何やらゆかしすみれ草               松尾芭蕉
 ウォーキング一息入れる風の初夏              中島澄夫
 夏川をこすうれしさよ手にぞうり               与謝蕪村

山菜採りの季節:ドクゼリに注意

 山菜採りの季節がやってきた。 最近はワラビセリもスーパーで買えるが、野に出て自分で採って食べる楽しみは、また格別なものである。 自然から遠ざかるほど、ヒトは病気に近づくともいう。 先週末は畑の近くで、早くもワラビが出ており、20本ほど収穫して、重曹入りの熱湯で一晩アク抜きし、おひたしにし、オカカと味ポンをかけて食べた。 新鮮で歯ごたえもよく、なかなかの味であった。 春爛漫の堪能である。 庭の片隅にあるタラの芽も大きく膨らんできた。 この時期、ワラビとセリは山菜の王様的存在である。

 一昨日の4月1日、新潟市内で男女4人が、セリと間違えてドクゼリを食べ食中毒を発症した。 嘔吐や頭痛を訴えたため病院へ搬送され、うち24歳の女性が意識不明の重態だという。 報道によると、前日、川べりで採取したドクゼリをおひたしや酢みそ和えにして9人が食べ、約1時間後に4人が不調を訴え食中毒を起こしたという。

 ドクゼリは全草に毒性成分のポイリン化合物として、シクトキシン、ビロールA,ビロールBを含有し、誤食すると、嘔吐、下痢、けいれん、呼吸困難などの中毒症状を起こすことで知られる。 

 春先の若草のドクゼリは外観上、セリと酷似しておりうっかりすると間違いやすい。 両者はしばしば混生するので厄介である。ドクゼリの葉はセリと、根茎はワサビと似ており、間違いやすい。 ドクゼリはセリと違って香りが無く、根はセリより太くて竹の子のような節があるので、根をみると区別しやすい。また葉柄の長さはセリで短く、ドクゼリでは長い。

 食用の野草はそれぞれ独特の風味をもっており、春の舌を楽しませてくれるが、規定種を栽培したものと違って、類似の毒草を間違えて採取する可能性があり、自分の目を養い、十分注意したうえで採取したいものだ。

  これきりに径尽きたり芹の中      与謝蕪村
  一と股ぎほどの野川の芹の花     田村いづみ
  晴れてよし蕨見つけて子らはしゃぐ   中島澄夫

  桜2、H25.3.30

 Cherry blossom in Nagoya, Japan, March 30,2013: photo by S.Nakajima.

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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