[ スギ花粉+PM2.5+セシウム ] 粒子の飛散季節へ

2月も下旬入りでいよいよ本格的な花粉シーズンの到来である。  花粉症の人には受難の季節だ。 今年はスギ花粉の飛散と中国からの大気汚染物質PM2.5の飛来とが時期的に重なり、健康被害の拡大が懸念される。 

 昨年はスギやヒノキの花芽が育つ7~8月の日照時間が長く、気温も高かったため、今年の花粉飛散量は関東、東海地方を中心に目立って多く、昨年の2~6倍となる地域も多い。 愛知県でも昨年の6倍とされている。この春は避暑旅行ならぬ避粉旅行がはやりそうで、スギ林の少ない北海道、沖縄、九州の離島の一部などでは、官民を挙げて「避粉の旅」を企画して売り込みを始めているようだ。

 大気中に浮遊する粒子状物質(Particulate matter、PM)は、普通直径が10μm以下の粒子だが、このうち粒子の直径が2.5μm以下の比較的小さなものを微小粒子状物質(PM2.5)と呼んでいる。 これは粒径が小さいため呼吸に伴い肺の奥深くまで入りやすく、血管内にも移行しやすいので、多量に吸い込むと不整脈喘息肺ガンなどの発症を促し、死亡率を高めることが分かっている。  米国ガン協会の調査(2002年)によると、PM2.5が1立方メートル当たり10μg増えると、心臓や肺の病気による死亡率は9%、肺がん死亡率は14%増え、全死亡率は6%増えるとされる。   日本の環境基準は年平均値15μg/m以下、かつ1日平均値35μg/m以下と規定しているが、世界保健機関(WHO)は25μg/m未満を推奨している。

 隣国の中国では、車の排気ガス、工場のばい煙、建設現場の粉塵などに由来するPM2.5による大気汚染が深刻化しており、北京市をはじめ河北省、江蘇省などで呼吸器疾患患者が急増していると言われる。 状況は1960年から1970年頃の日本の四日市市に似ている。 大気清浄化は喫緊の課題である。

 2月以降、中国からの偏西風が北寄りになる影響で大量のPM2.5が風に乗って日本に飛来する可能性があり、すでに九州を中心に西日本への影響が出始めている。環境省は、PM2.5の観測地点を現在の約550か所から1300か所に増やし、監視体制を強化するとしている。 風向きでPM2.5濃度が高い日には外出や換気を控えるよう警告する方針を決めた。

 PM2.5とスギ花粉が合体すると、PM2.5が分割されて、PM1.0というさらに小さな粒子に変化する可能性も指摘されており、これはいわば花粉の凶暴化といってもよい。 また林野庁調査によれば、今年度におけるスギ花粉(スギ雄花)の放射性セシウム濃度は、平成23年度の1/3に減少しているとされるが、今年度の花粉飛散量は昨年の2~6倍に増えると予想され、放射性セシウムも無視はできないようだ。 この春、避粉への無関心は寿命を縮めることになるかもしれない。 外出時のマスク着用を心がけたいものだ。

  口あけて鯉は悠々花粉症        木下一昭
  花粉症人事企つ男にも          能村研三
  千年の杉の花粉を浴び詣づ       滝 峻石
  杉葉焼く烟や春の高曇り         岩本和行
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種ジャガイモを植え付ける

 冬の畑作は草取りぐらいに注意するだけで、この時期は確かに農閑期である。 これという大きな仕事はないのだが、忘れてならないのが、種ジャガイモの植え付けである。 昨年、収穫したジャガイモが芽を伸ばし始めるこの時期、2月中旬から3月は植え付けの適期なのだ。 先週末の日曜日(2/17)は天気もよく、思い立って近くの園芸店へ行ってみた。 10種類近くのタネ芋が並んでいる。 「男爵」と、新種だという「インカのルージュ」の2品種を手に入れ、畑を耕し畝を3つ作って植え付けした。 折よく翌日は雨となり、暦の上でも雨水であった。 6~7月には収穫となる。

 ジャガイモ(英名 Potato)は南米のアンデス山脈からメキシコに至る標高3000~4000メートル級の高地が原産地である。 ナス科ナス属の植物に属し、肥大した地下茎を食べる。 スペイン人が1540年頃、インカ遠征の際にヨーロッパに持ち帰り、当初はジャガイモの花を貴族の婦人たちが愛でていたとされる。  食用として本格的に栽培されたのは1600年頃である。 スペイン船で運搬中、船内で芽が出たものを食べて食あたりし、見た目の悪さも手伝って、「悪魔の植物」と呼ばれたというエピソードがある。 芽や緑化した塊茎には、ソラニンなどポテトグリコアルカロイドの毒性成分が含まれ、中毒の元となる。 高冷地アンデスでも育つジャガイモはドイツやポーランドなど冷涼な地域では特に重要な農作物となった。

 日本への伝来は、1600年頃、オランダ人が東洋貿易の拠点としていたインドネシア、ジャワ島のジャガトラ(ジャカルタ)から長崎の出島へ持ち込んだのが最初で、ジャワの「ジャガトラ(ジャカルタ)イモ}が詰まって「ジャガイモ}になったいわれる。当時は観賞用として栽培されたようだ。 ジャガイモを馬鈴薯と呼んだのは江戸時代の小野蘭山で、中国の古本に記載があり、形が馬の首に付ける鈴に似ていたためとされる。小野蘭山(1729-1810)は日本の本草学を大成した江戸中期~後期の本草学者で、江戸の「クスリハンター」ともいわれた人である。

 ジャガイモは品種改良が盛んで、今や品種は世界で2000種類に達すると言われる。 日本では男爵メークイン(May queen)の2大品種の栽培が中心だが、近年、キタアカリ、ホッカイコガネ、デジマ、インカのめざめ・ひとみなど約20種類が栽培されている。

 ジャガイモは加熱処理して食べるほか、でんぷん原料として片栗粉やウォッカ、焼酎など酒造にも利用される。 カレー、シチュー、肉じゃがなどには煮崩れしにくいメークインが適し、サラダ、ふかしイモ、ポテトフライにはホクホク感の男爵が勝る。 ドイツ人のジャガイモ好きは有名で、「ジャガイモのレシピを200種類以上覚えていないとお嫁にいけない」と、まことしやかにいわれるそうである。

 ジャガイモはでんぷんを主成分とする穀物の一面をもつ一方で、ビタミン(C,B1,B2,B6,ナイアシンなど)、ミネラル(K,Mg,Zn,Ca,P,Fe、モリブデンなど)、および食物繊維を豊富に含む野菜としての一面がある。 ジャガイモ(蒸し)の食物繊維は、サツマイモには及ばないが、、水溶性と不溶性を合わせて100g当たり1.8gで、白米(炊飯)の6倍も多く含んでいる。 冷凍と解凍の繰り返しで徐々に乾燥させたジャガイモは「チューニョ」と呼ばれ、ペルーやボリビアの高地で保存食として利用される。 日本でも寒冷地の外気温で冷凍し踏みつけることを繰り返し、保存性を高めた「しみいも」や「ちぢみいも」があり、こうすることで食物繊維含有量を増やすことができる。 ジャガイモは目的に応じて工夫が効く、利用価値の高い便利な根菜である。

 種薯のこのあえかなる芽を信じ     山口青邨
 じゃが芋の芽ほどの毒はあってよし   小宮美奈子
 まな板の上でジャガイモ笑窪見せ    関根信八
 馬鈴薯のアンデス恋いて花ざかり    宇佐見美保
 新じゃがのほのかな香りに母の味    福島正純
 あつあつの新ジャガ口で逃げまわり   片田加代子
 

 

ピロリ菌退治で胃ガンの撲滅を

 平成20年の患者調査によると、日本における部位別ガン患者数で第1位は大腸ガン、第2位は胃ガンであり、我が国は依然として胃ガン多発国である。 胃の粘膜に感染し胃ガンなどを引き起こすピロリ菌(Helicobacter pylori)の除菌療法は、これまで保険診療では胃潰瘍と十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少症、早期胃ガンの内視鏡的粘膜下層剥離術後だけにしか認められていなかったが、本年1月31日の厚労省専門部会は慢性胃炎にも保険適用する方針を決定し、ピロリ菌感染と胃カメラによる胃炎の確認があれば慢性胃炎でも除菌療法を保険で実施できることになった。

 ピロリ菌は胃のみに生息する直径0.5μm、長さ2.5~5μmのらせん型をした細菌で、4~8本の鞭毛をもち移動できる。細胞空胞化毒素(VacA)とサイトトキシン関連蛋白(CagA)の2種類の毒素蛋白質を産生する。 日本人の約半数(6千万人)が感染者で、近年、若い世代では減っているが、特に60歳以上に感染率が高く、この年齢層の感染率は60~70%と高率で健康保菌者も多い。ピロリ菌感染者で除菌しない場合の胃ガン発症率は年率0.7%であるが、除菌すると年率0.23%と下がり、発生率を3分の1に抑制できることが分かっている。 ピロリ菌除菌に成功して1年後の再感染率は、日本では約1%と低いが、ラテンアメリカ7か国では最近の調査で11.5%と報告されている。 ピロリ菌は胃ガン発症の必要条件とされ、胃ガン患者でピロリ菌陰性は極めてまれ(1%)である。 EBウイルス関連胃ガンが少数ある。 ピロリ菌非感染者は、胃ガンにはならないといえる。 除菌療法(7日間の内服治療)と感染予防の普及が望まれる。

 ピロリ菌には東アジア型(強毒株)と西欧型(弱毒株)の2種類があり、日本などに蔓延する東アジア型はより強い毒性のCagAをもつ。 ピロリ菌は小さな針を胃粘膜上皮細胞に刺しCagAを注入する。 CagAはIL-8の誘導や細胞増殖を促し胃発癌に関与する。かくして強毒株の感染は胃がんの発症リスクを高める。 1994年、世界保健機関(WHO)の国際ガン研究機関(IACR)は、ピロリ菌を最高ランクの「最も危険な発ガン要因」と分類した。

 ひとたび経口感染でピロリ菌に感染すると、持続感染となり慢性胃炎を経て胃粘膜は萎縮する。萎縮が進むほど胃ガン発症リスクは高くなる。萎縮の程度は血液中のペプシノーゲンⅠ(基準値:70ng/ml以上)の測定で判断でき、萎縮が起こる前に除菌した方がガン予防効果は高くなる。

 ピロリ菌の感染、増殖に対し抑制効果を示す食品として、スルフォラファンを含むブロッコリーの新芽、リグナンを含む梅、LG21乳酸菌、ヨーグルト、緑茶カテキン、ワサビ、生姜、ニンニク、アブラナ科野菜に含まれるイソチオシアネートなどがある。 我々は日常生活習慣の中でこれらをバランスよく摂取し、胃がん予防に役立てたいものだ。

冬野菜の王様はダイコン

 冬の畑は静かで、他の季節のような賑やかさはないものの、大根だけは葉も根も元気がよい。まさに冬野菜の王様だ。 春の七草の一つで、「すずしろ」(清白)の別名がある。 また「ダイコ」や「つちおおね」(土大根)の呼び名もある。 そしてエネルギーが低く、食物繊維の供給源として、生活習慣病対策に向け、存在感を高めている野菜である。サラダにしてよし、おろしてよし、煮物にしてよし、漬けてよし、と利用範囲は広い。 寒風吹き、乾燥するこの時期は、切干大根作りにうってつけである。 切干大根は年中使える便利な保存食で、私も先週より切干大根作りの実戦を開始、例年、寒中行事の一つとなっている。 

 大根の原産地は地中海沿岸から中央アジアといわれ、エジプトでは4000年以上も前にピラミッド建設の労働者達の食糧だったという。 シルクロードを経て日本に伝わり、栽培が盛んになったのは江戸時代になってからである。 日本人の好みに合わせて品種改良がおこなわれ、現在日本では白首、青首など100種類以上の品種がある。 日本ほど大根を広く利用している国は他にないとされ、世界の大根の約9割を日本が生産、消費しているといわれる。 都道府県別収穫量日本1位は千葉県で、北海道、青森県がこれに次ぐ。

 大根の根はほとんど水分で、少量の炭水化物を含むのみで、低エネルギーである一方、ミネラル類(カリウム、カルシウム、亜鉛など)、消化酵素類(アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼなど)、ビタミン類(V.C, V.B1,V.B2など)をバランスよく含み、秋から冬にかけてのよい食物繊維の供給源でもある。 生食すると、消化酵素の働きで消化がよくなる事は広く知られる。 大根おろしの辛みは、葉の部分から遠くなるほど強くなり、細胞の破砕に伴って生じる抗酸化物質、イソチオシアネートによる。 大根の葉はカリウム、カルシウム、鉄などのミネラルを根の2~10倍も多く含む。 ビタミン類でも根にはないカロテン(体内でビタミンAとなる)やビタミンEが豊富に含まれ、ビタミンCは根の5倍も多く含むので、葉の利用価値は高い。 緑黄野菜が少ない冬場には葉を大いに利用したいものだ。


 徳川五代将軍の綱吉は脚気になり、八百屋の娘であった生母の桂昌院の機転で、練馬大根を食べて治ったとされる。 また吉田兼好は徒然草の第六十八段で、「つちおおねをよろづにいみじき薬とて、朝ごとに二つづつ焼きて食ひける事、年久しくなりぬ」と書いている。 大根は俳句では「ダイコ」と読まれることが多く、冬の季語で多くの俳人が詠んでいる。


 何にても大根おろしの美しき   高橋順子
 身にしみて大根辛し秋の風    松尾芭蕉
 見事なるずん胴うれし大根引く  中島 葵
 大根引き大根で道を教へけり   小林一茶


 そこで私も一句 : 大根引くナイスバディの白い肌      中島澄夫

 近年、大根栽培はやや減少しているようだが、日本の野菜の中では栽培面積、生産高とも、トップクラスのダイコンを大切に育て、存分に活用したいものだ。

 焼額山スキー場より横手山遠望

 志賀高原・焼額山スキー場頂上付近から横手山方面を望む(2013年1月18日撮影)

 

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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