卵子の長期保存

 12年間の長期にわたって凍結保存した卵子を解凍させ、受精、受胎に成功し、元気な赤ちゃんを出産した事例が、先日報道された。 悪性腫瘍の抗がん剤治療で、若くして生殖機能を失う女性にとっては、大きな朗報である。

 愛知県在住の現在30歳の女性は、高校1年生の時に血液がんの一つである悪性リンパ腫を発症し、抗がん剤治療で将来不妊になる可能性を考え,卵子を2個し凍結保存した。 病気が治癒した女性は、昨年結婚し、12年間凍結保存した2個の卵子と夫の精子で体外受精を行い、受精卵1個を子宮に戻して妊娠し、今年8月に約3300gの元気な男児を出産したという。 
 これは進歩した卵子の凍結保存技術がもたらした恩恵であり、がん治療で生殖機能を失う女性にとっては、まさに光明といえるニュースである。 近年の生殖医療の進歩には目覚ましいものがある。

 うつくしや年暮れきりし夜の空    小林一茶
 冬菜畑一直線の飛行雲        中島澄夫
 咳の子のなぞなぞあそびきりもなや 中村汀女

アクレイギア・サイズ小

アクレイギア(セイヨウオダマキ) : H26.11.17 栃木県井頭公園にて撮影

 
スポンサーサイト

ガン探知犬の活用

 臭いを嗅ぎわける能力はヒトより犬の方がはるかに優れている。 海外旅行から帰ると、空港の手荷物引取所には、賢そうな「麻薬探知犬」が現れて帰国者の間を縫って歩き活躍する姿が目につく。

 臭いを嗅ぎわける嗅覚受容体は鼻腔の鼻中隔上部と左右の上部鼻甲介上部に囲まれた比較的狭い部位にあり、その面積は1cm2である。 人間ではこの部位に、におい受容体が約400種類存在するのに対し、犬やネズミでは2倍以上の約1000種類の受容体が存在するとされ、犬のにおいに対する感覚がいかに優れているかがわかる。 においで刺激された受容体は脳に信号を送り、数万種類ものにおいを嗅ぎわけることになる。

 オーストリアの共同研究チームは、犬に肺がん患者を嗅ぎ当てる高い能力があることを証明し、今月初めに発表した。 研究チームの一人であるPeter Errhalt(クレムス病院呼吸器科長)によると、訓練された「ガン探知犬」は、用意された120の呼気検体の中から70%の確率で肺がん患者の呼気を嗅ぎ当てたという。 呼気中の臭気物質が何かを特定できれば、それを専用にキャッチする機器、「電子鼻」を開発できることになり、肺がんを早期発見する有力な武器になる。

 日本でも数年前から「ガン探知犬」の研究が行われており、九州大学の園田英人教授らの研究(Gut 2011,11,31)によると、大腸癌患者の呼気を嗅ぎわける訓練を受けた「ガン探知犬(ラブラドルレトリバー)は、95%の精度で大腸癌患者の呼気を判別し、大腸内視鏡検査とほぼ同じ正確さであった。 この犬の嗅覚は初期の大腸癌に特に有効で、大腸内視鏡検査では不可能なポリープの良悪性の識別もできたという。

平成23年人口動態調査によると、日本人の部位別のガン死亡数とガン死亡率(人口10万対)は、いずれも男性では1位が肺がん、2位が胃がん、3位が大腸がん、女性では1位が大腸がん、2位が肺がん、3位が胃がん、となっており、ガン対策の中でも肺がんと大腸がん対策は極めて重要である。

 癌患者の呼気は各種がん特有の揮発性有機化合物を含む可能性があり、これを特定することが今後の課題である。 さらにこれに基づき、各種がんに対する「人工鼻」を開発し、がん診断の武器にすることが期待される。

世界一細い注射針の誕生

 注射時の痛みは軽いほどよい。 痛くない注射針があればもっとよい。 注射時の痛みの軽減を多角的に追求した結果、世界で最も細い注射針が開発され、2012年9月3日、日本の医療機器メーカー「テルモ」(東京)より国内向けに発売された。 今秋よりドイツ、イタリアで発売を開始し、順次欧州で拡販する予定という。

 人間の皮膚の痛点は1cm2当たり100~200個存在するので、これを避けるためにはできるだけ細い針が求められる。 実現には極細でも薬液の注入しやすさと耐久性を維持する高い設計技術と生産技術が必要で、大きな壁を乗り越えねばならない。 

 新たに開発された注射針は「ナノパスニードルⅡ」34Gで、ステンレス板を筒状に丸めて成形し、薬剤を抵抗なく注入できるよう外径、内径とも根元で太く、先端へ行くほど細くなるダブルテーパー構造を採用し、先端の直径は0.18mmである。先端が皮膚に入りやすくするためアシムメトリーエッジ(非対称刃面構造)を採用し、針を突き刺すのではなく、日本刀の切り先のような鋭い刃先で小さく切るよう加工されている。

 テルモは2005年に「痛くない注射針」として、当時「世界で一番細い注射針」直径0.2mmの「ナノパスニードル」33Gを発売したが、今回の新製品は従前品よりさらに10%細くすることに成功した。

 現在、高血糖のため毎日、インスリンを自己注射している糖尿病患者は日本で約100万人いるとされる。また数的にはそれほどではないものの、成長ホルモンやエピネフリンを自己注射する人もおり、これらの人々にとって、注射時の精神的および肉体的負担が軽くなるメリットは大きい。 技術立国、日本ならではの極細注射針の誕生であり、拍手を送りたい。

5つの遺伝子が顔立ちを決める

 人間の顔は十人十色である。 人間の味も十人十色といえる。 目鼻立ちが整った顔を「美人顔」といい、東西古今、人は愛嬌ある、あるいはまた優しそうで憂いのある「美人顔」に憧れて生きてきた。 双子は普通の兄弟姉妹より似ており、兄弟姉妹は他人より似ていることから、顔立ちには強い遺伝関係がうかがわれる。

 人間の目や鼻の位置関係や顔の幅、耳の位置など、顔の大まかな要素を決める5つの遺伝子変異が特定され、オランダ、ドイツおよびオーストラリアの合同研究チームが、9月13日付の米国遺伝学誌、PLOS Genetics に発表した。

 研究によると、磁気共鳴画像法(MRI)による約1万人の頭の立体画像と特定の5種類の遺伝子の関係を調べた結果、遺伝子の塩基配列の一部が変わると、目と鼻の位置関係、鼻の幅や高さ、左右の頬骨の間の距離が変わるのを発見し、5つの遺伝子と顔立ちの関係がわかったという。

 この遺伝子と顔立ちの関係をデータベース化すれば、凶悪事件で犯行現場に残されたDNAを採取し、5遺伝子を抽出し、犯人の似顔絵を作れることになり、犯罪の科学捜査への貢献は大きいものがある。

 これまでにDNAから目や髪の色を推定する手法は実用化レベルとなっていたが、顔立ちに関係する遺伝子については不明であった。 科捜研への応用が期待される新しい研究成果であり、注目に値すると思う。

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR