虫よけの季節

 5月も残り1週間となり、向夏の季節、見渡せば正に深緑の候である。 畑ではトマトやキュウリがが天に向かってぐんぐん伸びて実も大きくなって、見る人の目を楽しませてくれる季節でもある。 寒さに弱いので家の軒下で育てていたオクラの苗もそろそろ畑へ移植できるまでに成長してきたのはうれしい。

 さて、この季節のなると、畑ではアリ、アブラムシ、ウリバエ、ナメクジなどの害虫も活発に動き出すので、害が最小限で済むよう目を光らせる必要がある。

 勿論、人間を攻撃する害虫として厄介なダニや蚊も増えてくる。 米国の最近の調査によると、ダニや蚊など人の血液を吸う節足動物が媒介するウイルス感染症(ライム熱、デング熱、ジカ熱、ウェストナイル熱など)が、近年大幅に増えており、2016年の報告数は12年前の2004年に比べて、約3.5倍になったという。 海外旅行でも虫よけには注意が必要だ。

 日本では、草むらや森林でマダニにかまれて発症する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の報告数が増え、死亡例もあり、活動が活発になる春から秋にかけては、肌の露出に注意が必要となる。 また、ペットを飼っている人はペットにダニが潜んでいないかどうか定期的に、入念にチェックすることが大切だ。

蚊の声や足を伸せば草の原  小林一茶
谺して山ほととぎすほしいまま  杉田久女
涼風を鼻にかけてや行々子  小林一茶

八重のチューリップ
八重のチューリップ (2018年4月30日 撮影: 蓼科高原 イングリッシュガーデンにて)
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血圧を下げるワクチン

 血圧を正常範囲に保つことは、年齢を問わず健康維持の基本である。 人は年齢を重ね中年期から更年期に入るにつれて高血圧になる人が増加する。 高血圧の基準は、世界的に収取期血圧140以上、拡張期血圧90以上とされてきたが、最近米国では、それぞれ130以上、80以上と基準値の引き下げが行われ話題となっている。

 血圧の上昇は、血管を収縮させて血圧を上げる物質のアンジオテンシン2が血液中に増えることが主因の一つである。 この物質は、そもそもアンジオテンシノーゲンとして肝臓や脂肪細胞で作られたものが、腎臓から分泌されるレニンの作用でアンギオテンシン1となり、更に肺の血管内皮細胞から放出されるアンジオテンシン変換酵素(ACE)の作用によってアンジオテンシン2となったものである。 中年以降に肥満となり、内臓脂肪が増えると、高血圧の頻度も上がることになる。

 高血圧の治療は、減塩を含む食事療法や降圧薬の内服が中心となるが、薬物療法では通常1日1~2回の内服が必要で、服用を忘れたり、誤薬など特に高齢者では問題も少なくない。

 そこで登場したのが、「血圧を下げるワクチン」である。 これは血液中のアンジオテンシン2に対する抗体を作り、昇圧物質の働きをブロックするワクチンで、一回の注射で相当期間高圧効果が続くとされているものだ。 大阪のベンチャー企業が開発し、先月オーストラリアで人を使った治験がスタートしたという。 高血圧患者24人を、ワクチン量の多いグループ、少ないグループ、および偽薬のグループの3つのグループに分け、ワクチンを注射後1年間観察する予定という。 よい結果を期待したいものだ。

我トマト色よし味よしカラス来る  中島澄夫
蚜虫明るき雨にぬれそぼつ  白川京子
瓜蠅は逃げ足速し高速道  中島澄夫

English Garden
蓼科高原 バラクラ イングリッシュガーデンにて (2018年4月30日 撮影)
 

家の中でも森林浴

 5月の連休辺りから8月にかけては、樹木が発散する精油成分のフィトンチッド(Phytoncide)が最も多くなるので、森林浴に最も適した季節である。  フィトンチッドはロシアのボリス・トーキン博士が、樹木や植物が発散する殺菌力を持つ香り成分、揮発性物質に対し命名したもので、「植物」を意味するフィトン「Phyton]と、「殺す」を意味するチッド(サイド)「Cide]を連結した造語である。 植物が傷ついたときに自分を害虫や細菌、カビなどから守るために出す毒だといえる。 人では、免疫力を高めるだけでなく、癒しやリラックス効果を発揮することが知られる。

 フィトンチッドは防菌、防虫、防ダニ、防カビなどの作用を持つテルペノイド、カンファー、クマリンなどを含む植物性精油が本体である。 木の香り成分でもあり、木や根に含まれて、主に葉から放出される。 人にとっては恵みを与えてくれる精気だともいえる。

 さて、家にいながら森林浴ができるというヒノキ製の小部屋が、「森林浴ルーム」として、今春4月下旬に発売されるようだ。 販売元は岐阜県のヤマガタヤ産業で、各地のホームセンターなどを経由して販売し、価格は約30万円だという。 高さは1.8m、広さは畳1畳大とやや狭いのは気になるが、鉄筋の高層マンションなどで利用すれば、勉強や仕事の能率をアップするのに一役買いそうだ。 

春山やフィトンチッドで意気高し  中島澄夫
春風や牛に引かれて善光寺  小林一茶
春なれや名もなき山の薄霞  松尾芭蕉
しかの子はとっていくつぞ春の山  小林一茶

茂田井のボタン
信州立科町茂田井の生家に咲くボタン (2018年4月30日 撮影)

「布引温泉こもろ」より
信州小諸市の布引温泉より浅間山を望む(2018年4月30日 撮影)


高い飛行機内の感染リスク

 庭では椿、畑ではスナップエンドウ、公園では八重桜が満開となり、目を楽しませてくれるのはよい。 ただ夏のような陽気になったかと思えば急に寒くなり、朝の出勤時には着るものに気を遣うこの頃である。

 日本は比較的狭い島国で、移動手段は列車や車で事足りることが多く、海外旅行を除くと飛行機を利用することは少ない。 ひとたび飛行機に乗ると、たとえジャンボといえども特殊な閉鎖空間に閉じ込められるので、周りに呼吸器系の感染症患者がいる場合には、感染リスクがかなり高い環境に身を置いていることには間違いがなさそうである。 

 最近、米国のジョージア州にあるエモリー大学(Emory University)の研究チームが飛行機メーカーのボーイング社の資金援助を受け、機内に呼吸器感染所の患者がいた場合、周囲の乗客にどの程度、飛沫感染させるリスクがあるのかについて検討し発表した。

 これによると、患者の座席の前後1列、および左右2座席以内に座る乗客への感染率は80%と高いが、それ以上は離れている場合の感染率は3%以下でほとんど問題ないことが明らかになったという。 また感染症の乗務員がいた場合には、1回のフライトで約5人の乗客に感染する可能性があることが分かったという。

 飛行機に乗るときには、必要備品としてマスクを用意し、周囲に籍をしている人を見たら直ちにマスクを着用することが得策のようだ。

落椿庭の片隅本舞台  中島澄夫
人仰ぐ我家の椿仰ぎけり  高野素十
浅間晴れて豌豆の花真白なり  高浜虚子
夕庭にぼたん桜のゆるぎかな  久保より江

庭の椿H30
我が家の椿も満開へ (2018年4月8日 撮影)

スナップエンドウ3
我が畑のスナップエンドウ (2018年4月8日 撮影)

 

感染性胃腸炎の好発期

 ソメイヨシノが大方散り、今度はチューリップ、花かいどう、八重桜と満開が続く。 春爛漫である。 今年は3月下旬から急に夏めく天気となり、早くもミニ、中玉、大玉を含めて4月1日にトマトの植え付けを終えた。 これまでは例年4月10日前後だったので、我が家では史上最も早い植え付けとなった。 どんな成長を見せるか楽しみである。

 冬季から春にかけて、嘔吐、下痢、腹痛、発熱をきたす感染性胃腸炎の患者が増えている。 感染性胃腸炎の原因ウイルスには、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルスなどがある。 

 ノロウイルス感染症は、冬場の11月~2月をピークに流行する感染性胃腸炎で、感染力は強いが、脱水とならないよう水分補給に気を付ければ、通常3日以内に回復する。 ただしウイルスは7日間は糞便中に排泄され続けることに留意する必要がある。 ウイルス排泄を助けるため下痢止めの薬は不要である。 ワクチンは現在開発中で現時点で利用できない。

 ロタウイルス感染症は、例年3月~5月にかけて流行がピークになり、0歳~10歳の乳幼児、子供に最も多くみられ、次いで60歳以上の高齢者への感染が多い。 最近の厚労省発表では1月下旬以降増加が続いている。 下痢便が白色になることがある。 少量頻回の補水液で脱水を防ぐよう努める。 ワクチンは単価と5価の2種類があり、任意接種である。

 感染経路は、両者とも糞口感染を主体とし、調理や汚物による接触感染や飛沫感染、食事による感染などがある。 両感染症ともアルコール消毒は効果不十分で、塩素系漂白剤の次亜塩素酸ナトリウムが有効である。 予防には、汚物処理を上手に行い感染を拡大させないよう配慮し、何より「手洗い」を徹底すべきである。

ひと枝の折れしが匂ふトマト苗  米沢光子
赤々とトマトに名あり桃太郎  和田絢子
青臭しトマトのわき芽つみし指  竹内弘子
食卓にひと色欲しとトマト捥ぐ  夏目満子

実相院の啓翁桜
京都・実相院の啓翁桜 (2018年3月18日 撮影)

真如堂の桃の花
京都・真如堂の桃の花 (2018年3月17日 撮影)

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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