受動喫煙と大動脈疾患死

 暦の上では立秋となったが、残暑というよりまだ猛暑の言葉が似合う日々がしばらくは続きそうである。 雨が多いためか、高湿度で蒸し暑い日が多い。

 さて、自分ではタバコを吸わないが、家庭で毎日2時間以上か、あるいは職場や飲食店、カフェーなどで、ほぼ毎日たばこの煙にさらされるグループは、受動喫煙のほとんどないグループに比べ、大動脈瘤大動脈解離などの大動脈疾患で死亡するリスクが、2.35倍も高いことを筑波大学の研究グループが、最近Atherosclerosis誌(263:145-150,2017)に発表した。

 これは日本人の40~79歳の男女約4万8000人を、平均16年間にわたり追跡調査したもので、受動喫煙と大動脈疾患死の関係を明らかにした世界で初めての研究だという。 受動喫煙の場所の比較では、家庭よりも職場や飲食店での影響がより大きいことが分かったという。 受動喫煙の頻度を高、中、低と3つに分けてリスクを比較すると、高と低では差があるも中と低では差がなかったという。

 大動脈は心臓から出る胸部大動脈とそれに続く腹部大動脈からなり、袋状に膨らん壁が薄くなり大量出血する大動脈瘤や壁に亀裂が入り、内膜と外膜とに分離されて偽腔内に血液が流入し、壁が2層に引き裂かれて、胸や背中の強い痛みをきたす大動脈解離が代表的疾患で、中高年の高血圧の人に発症しやすく、ともに死亡率が高く救急を要する疾患である。 

 先の通常国会では、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の提出が、与党の反対で見送られてしまったが、受動喫煙防止対策の強化推進は、喫緊の課題だと思う。

よい程に夜が暑いぞ萩すゝき  小林一茶
川半ばまで立秋の山の影  桂 信子
新刊の机上に匂ひ秋立てり  佐野幸子 
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マダニに注意する季節

  マダニは北海道から九州まで全国的に生息し、特に4~11月にかけて、草むらや雑木林、河川敷などに増え、動物や人の通りすがりざまに音もなく付着して寄生しやすい。 最も手ごろな寄生先は犬と猫である。 寄生すると吸血し、褐色の体色は黒灰色となり、体長は約3mmから10mmへと倍増する。 最大の天敵はクモで、マダニをみつけると素早く食べてしまう。

 マダニが媒介する病原性ウイルスとして、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスがある。 全てのマダニがこのウイルスを持っているわけではないが、日本では主に西日本を中心に、SFTSウイルスを保有するマダニが増える。 国内では、2013年から2017年7月26日現在までに、268人がSFTSを発症し、54人が死亡したと報告され、死亡率は20%と高い。 死亡例はすべて50歳以上であり、高齢者は重症化しやすい。

 感染すると6日~2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、失語、意識障害、皮下出血、下血などの症状を起こす。 有効な薬剤やワクチンは開発されていないので、予防に留意する必要がある。

 厚労省は先月24日、昨年夏に野良猫にかまれた50歳代の女性がSFTSを発症し、10日後に死亡していたと発表した。 女性は衰弱した野良猫を動物病院へ連れていった際に手をかまれたという。 猫がマダニかまれてSFTSを発症し、さらに女性に感染させたと考えられる事例である。

 猫から人への感染事例は、これが初めてであり、衰弱したペットへの接触には十分注意する必要がある。 

川上の水静かなる花野かな  河東碧梧桐
今迄は踏まれて居たに花野かな  小林一茶
草茂り見つけ難きや花野道  中島澄夫

寝覚ノ床1
寝覚ノ床と浦島堂:長野県上松町にて (2017年7月30日 撮影)

開田高原のスイレン
スイレン:長野県・開田高原にて (2017年7月30日 撮影)

殺人アリの日本上陸

 畑を耕して作物を作るときの気配りとして、害虫のアブラムシやナメクジ、アリなどへの対策がある。 最近はカラスが増え、トマト、トウモロコシ、キウリ、ナス、南瓜、ズッキーニなどを平気で食べ荒らすので、収穫期前に、防鳥ネットを張ることも当地では必須である。 
 さて、5月26日、兵庫県尼崎市で、中国から貨物船で運ばれたコンテナ内部に強い毒を持つことで知られる南米原産の「ヒアリ」(火蟻、fire ants)の成虫と卵が発見され、続いてコンテナを一時保管した神戸港でも、コンテナから2,30m離れたアスファルトの亀裂にヒアリが100匹あまり群がっているのが確認され、数日間で駆除したと環境省が発表した。

 一般にアリは女王アリ、雄アリ、働きアリによって寿命が異なり、女王アリの寿命は10~20年と長命で、100万個以上の卵を産むのに対し、雄アリや働きアリは短命で、雄アリは数カ月~1年、働きアリは1~2年の寿命とされる。

 ヒアリは体長が2.5~6mmで、ユニークな色をしており、体は赤茶色でお尻は黒い。 お尻に毒針があり、激しい攻撃性をもって人や動物を刺す。 刺されると、お線香の火を押し付けられた時のような強い痛みと、腫れ、かゆみ、吐き気、めまい、手の震え、血圧低下、動悸などを起こし、最悪の場合アナフィラキシーショックで死亡する。 本来は南米のみで生息していたが、繁殖力が旺盛で、現在は米国、オーストラリア、中国、香港、台湾、フィリピン、タイ、カリブ海など世界各地で確認されている。 米国では年間1400万人以上の人が刺され、死亡率は約7%といわれる。 高齢者や子供は特に注意が必要だ。

 どんなアリも園芸や農業には歓迎されないが、こんなアリが日本に定着しないよう願いたいものである。 万一、赤みを帯びた火蟻を見つけた時は自分で処理しようとせず、役所や保健所に届けたい。

母美しトマトつくりに面痩せず  杉田久女
子の為の朝餉夕餉のトマト汁  星野立子
トマト熟れ鳴かないカラスすぐそばに  中島澄夫

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最盛期を迎えた自作のミニトマト (2017年6月24日 撮影)

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中玉トマトも食べ頃に (2017年6月24日 撮影)

禁煙週間

 日が長くなり6月入りを実感する. 庭のアジサイが玉状に太り、グリーンカーテンとすべく種蒔きした軒先の朝顔が10㎝ほどに伸び、畑ではキュウリが早くも4本採れて,ミニトマトも色づいてきた。 夏本番も近いが、今月からハガキ料金が10円上がって62円となったので気を付けたい。

 5月31日は「世界禁煙デイ」(World No-Tobacco Day)に指定され、禁煙を推進するための記念日で、国際デイの1つである。 今年の世界禁煙デイのWHOテーマは、「タバコ:成長への脅威」であり、「タバコにノーと言える社会をめざそう」をスローガンにしている。 日本では、6月6日までの1週間が「禁煙週間」である。 厚労省や日本医師会、がん対策推進協議会が中心となり非喫煙者がタバコの煙を吸い込む「受動喫煙のない社会を目指して~タバコの煙から子供たちを守ろう」をテーマに各種の取り組みが行われている。 2020年の東京オリンピックを控えて、日本では飲食店や職場、家庭での受動喫煙防止の法整備が求められており、一部の反対勢力をいかに封じ込められるかが問われている。

 WHOの最近の発表によると、喫煙による死者は全世界で年間700万人以上に達しており、その8割以上が低・中所得国に集中しているというから深刻である。 因みにWHO発表によると、2015年の15歳以上の年齢標準化喫煙率は、インドネシア男性76.2%、女性3.6%、中国男性47.6%、女性1.8%、日本男性33.7%、女性10.6%、英国男性19.9%、女性18.4%、米国男性19.5%、女性15.0%、となっている。

受動喫煙のない社会確立は喫緊の課題であり、この世に生きる万人の努力目標といえる。

紫陽花や己が気儘の絞り染  小林一茶
朝顔に我は飯食う男哉  松尾芭蕉
夕晴の雲や黄色に瓜の花  各務支考

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花しょうぶ:油が淵花しょうぶ園にて(2017年6月4日撮影)

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花しょうぶ写生大会:碧南市油が淵花しょうぶ園にて(2017年6月4日撮影)

帯状疱疹と予防ワクチン

 庭先で美人の象徴でもあるシャクヤクが咲き競い、可憐で美しい花を咲かせている。 芍薬の花言葉は、「はじらい」、「謙遜」、「はにかみ」、「慎ましさ」、「内気」だという。 華やかな大輪の花を咲かせるボタンの花と似ており、英語名はともに「peony」といい、英語圏では同じだが、芍薬は草、牡丹は樹木である。 きれいな女性を表現する言葉として、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」がある。

 さて、中高年が疲れたり、免疫力が低下したときにかかりやすい皮膚病の一つに帯状疱疹がある。 春や秋など気温が急激に変化する季節の変わり目や湿度の高い時期に多い。 患者の約70%を50歳以上が占める。 体の左右どちらかの片側に、帯のように水かぶれ(水疱)の集合ができ、チクチクと痛みを伴う病気である。 

 子供の頃に罹った水ぼうそうのウイルスが、脊髄神経や三叉神経の神経節に遺伝子の形で潜伏しており、これが過労やストレス、免疫力の低下に伴いウイルス粒子に復活して皮膚に帯状の水疱を作る。 症状は痛みから始まり、赤い発疹ができ、小さな水ぶくれとなる。 体の両側に広がることはない。 皮膚病変が消えても痛みだけが残ることがあり、「帯状疱疹後神経痛」の名がある。 高齢者では、破壊された神経の回復が遅れ、神経痛が残りやすい。 皮膚や神経のダメージを軽くするため抗ウイルス薬(アシクロビル、塩酸バラシクロビル、ファムシクロビルなど)を使った早期治療が望ましい。 

 超高齢社会を迎え、予防が重要だ。 最近、米国で65歳以上の高齢者約200万人を対象にして、帯状疱疹ワクチンの効果を検討したところ、ワクチン接種は、入院を必要とするような重症帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛に対し高い効果を示すことが判明したという。 米国では帯状疱疹ワクチン(Zostavax)が2006年に承認され、60歳以上の年齢層は積極的に接種するよう勧告されている。 このワクチンは日本では未発売である。 日本では、50歳以上の大人に対し、子供用の水ぼうそうワクチンを帯状疱疹ワクチンとして予防接種することが2016年3月に認可された。 現在、成人への帯状疱疹ワクチンの定期接種の検討が始まっている。

芍薬の蕾のどれも明日ひらく  海野良子
芍薬のつんと咲きけり禅宗寺  小林一茶
芍薬はかよわき花のうてなかな  松岡青蘿

H29芍薬1
我が家の庭に咲く芍薬 (2017年5月14日 撮影)

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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