食毛症とラプンツェル症候群

 ラプンツェル(Rapunzel)は聞きなれない言葉であるが、グリム童話に出てくる長く美しい髪を持った少女の名前である。 魔女により12~20歳まで、高い塔に閉じ込められて誰にも会うことを許されなかったため、自分の美しい驚くほど長い髪を外へ垂らし、それを梯子代わりにして登ってきた王子と結ばれるヒロインである。 

 自分の髪の毛を抜いて食べる病気を食毛症というが、4本や5本を抜いて食べても特に問題はない。 しかしこの行為を続けて行うと、胃や腸で毛玉(毛髪胃石)や蛇状の髪の束ができて、胃や腸を閉塞し、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、体重減少、便秘、腸閉塞、胃潰瘍、吐血などをきたすことになる。 重症例で診断が遅れると死に至ることもある。 人間は髪の毛を消化することができないのが問題である。 食毛症で閉塞症状をきたしたものをラプンツェル症候群とよび、食毛症の約1/3を占める。 治療では外科的に髪の毛の塊を摘出する必要がある。

 異食症でティッシュウなど紙を食べる行為は、高齢の認知症患者でしばしばみられるが、食毛症は中年以下の若い女性に多く見られ、20歳以下の女性が約40%を占める。 自分の毛髪を抜かないと落ち着かず、抜いて食べると安心するためやめることができないとされる。 認知行動療法が必要であることは言うまでもない。

東風吹くや耳現るるうなゐ髪  杉田久女
五十なほ待つ心あり髪洗ふ  大石悦子
あち東風や面々さばき柳髪  松尾芭蕉

H28愛知牧場
咲き競うコスモス 愛知牧場(日進市米野木町南山)にて (2016.10.24撮影)
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皮膚病の診断と人工知能

 ヒトがかかる皮膚病は多種多彩で診断に迷うことも少なくない。 これまでは、自分の目でよく見て、過去の経験を頼りにしながら、時には採血したり、組織を採取し鏡検したりして診断するのが普通であった。 

 米国ロサンゼルスのベンチャー企業「Lubax」はスマートフォン上の専用アプリで皮膚の病変部位を撮影し、それを1万2000枚以上の皮膚病変写真のデータベースに照合し、たった5~10秒の短時間で、診断結果の候補を表示するデバイスを開発し、医療用ツールとして、すでに米国、カナダなど8か国で利用を可能にし、日本でも今秋発売される予定という。

 Lubaxはピクセルレベルで画像を詳細に解析し、茶色一色をとっても人間の目では区別できない256通りを探知できるというから驚きというほかはない。 データベース内のすべての写真には、皮膚科専門医の診断結果がついているので、信頼度は極めて高いといえる。

 がん患者の全遺伝情報(ゲノム)を解析し、人工知能(AI)を使って最適の治療法を選ぶシステムの開発も進みつつある。 AI住宅では、温湿度を自動調節したり、防犯カメラで顔認識するシステムも可能という。 今後、医療分野のみならず、多くの領域でAIの活用が期待される。

わがいのち菊に向かひてしづかなる  水原秋櫻子
菊を詰め箱詰めにしたい女あり  田中久美子
汗拭ひ拭ひ拭って畝立てる  中島澄夫

秋菊2016
玄関に菊を活ける  (2016年10月7日 撮影)

 

 

長い昼寝で糖尿病リスク上昇

 私が子供のころは暑い夏になると昼食後に、家族全員が揃って約1時間ほど昼寝する習慣があったのを覚えている。 俳句で昼寝は夏の季語である。 社会人になってからは仕事中に、いつとはなく睡魔に襲われてうたた寝することはあっても、ゆっくり昼寝する場所もなく、その習慣は絶えたままである。

 1日に60分以上の昼寝をすると、しない人に比べて糖尿病の発症リスクが45%も上昇するという研究結果が最近、東大の研究グループより発表された。

 この研究は2016年までにアジアおよび欧米で発表された研究論文21件、合計30万5000人超のデータをプール解析したもので、1日60分以上の昼寝をする群では、全くしない群に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが45%上昇することが分かったという。 昼寝時間が60分以内なら、有意な上昇は見られず、昼寝時間が20~30分では発症リスクがむしろ減少したという。 昼寝時間と肥満との関連は認められなかった。 

 40歳以上の日本人男女を対象にした最近の調査によると、不眠症の疑いありとされる人は約40%あり、睡眠障害によって日中の作業効率が下がったり、遅刻、欠勤などで起こる経済的損失は、1年間で3兆円に達するという試算がある。 昼間眠くなったら、無理をせず、一休みして、仕事効率を上げるためにも20~30分の昼寝を上手にとるよう心掛けたいものだが、それをを可能にするための環境整備も必要だと思う。

虻一つ昼寝起こして廻るなり   小林一茶
昼寝覚め今別天地われはここ  中島澄夫
横文字の如き午睡のお姉さん  宇多喜代子

庭のむくげH28
庭のむくげ 2016年 秋

記憶力は空腹で上昇

 記憶には学習で覚える意味記憶や、楽器演奏や運転など体で覚える手続き記憶、さらには過去に起こった体験を丸ごと覚えるエピソード記憶などいろいろな記憶があり、したがって記憶障害にもいろいろなパタンがある。 我々は日常生活の中で、一定時間以内でものを覚えなければならないことがしばしばある。 東京都医学総合研究所などの研究グループによる最近の発表によると、お腹がすいた空腹状態で学習すると学習効率がアップし、より少ない時間で記憶することができることを証明したという。

 実験は空腹度合いが異なるショウジョウバエを使い、5~60秒間、においと電気ショックを同時に与えて、「危険なにおい」を覚えさせ、同時に同じ秒数だけ電気ショックのない「安全なにおい」をも覚えさせた。 その後、二つのにおいを同時に与えて、それぞれのにおいに集まったハエの数をもとに、学習効果を点数化して比較した。 

 その結果、16時間絶食したハエは10秒間の学習で成績が約2倍になるなど、絶食時間の長いハエは短時間で効率よく学習できたという。 記憶にかかわる神経伝達物質のドーパミンも、空腹時のハエでは通常の約1.5倍に増えていた。

 ヒトでも満腹状態で勉強すると、しばしば眠くなり、学習効果が低下することを経験した人は少なくないと思う。 短時間で効率よく物を覚えるには、やはり空腹状態でやるのがよいようだ。

栗拾ふ小さき穴に虫もいて  中島澄夫
行あきや手をひろげたる栗のいが  松尾芭蕉
柴栗や馬のばりしてうつくしき  小林一茶

秋の味覚1
台風一過の日に愛知県奥三河の山で拾った今年初めての栗 (2016.9.22 撮影)

プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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