情報の不正暗号化とビジネス

 大戦時代、情報の暗号化は重要な戦略の一つであったと聞くが、今また情報の暗号化が脚光を浴びる事態である。 今月12日以来、パソコン上で身代金要求型ウイルス(ランサムウエア)として、悪意あるソフトウエア(マルウエア)がインターネット上で暗躍し、WannaCryと名づけられた新種ウイルスの被害は、日本を含めて世界150か国、23万件以上に及び、ヨーロッパでは特に被害が大きく、日ごとに拡大中だという。 今回の攻撃はマイクロソフトがサポートを終了したWindows XPを主な標的にしているようだが、実際の被害が最も多いのはWindows 7のユーザーだという。

 このマルウエアに感染すると、システムで管理する情報が暗号化(encrypt)され、利用者が情報を取り出せないようになる。 お金(身代金)を支払えば、暗号解読のカギが渡され、ただちに復帰するというものだ。 ウイルスは自己増殖機能を持っており、PCに感染するとデータを暗号化すると同時に次の機器を探し、ネット上からウイルスを送り込むという。 対策が強化されないと、今後ビジネス化する恐れもある。

 サイバー攻撃で反撃できればよいが、現在日本では「不正アクセス禁止法」が存在し、政府による反撃はできない。 病院などの医療機関、金融機関、鉄道、電力、ガスなど重要なインフラが被害を受けると、国はマヒ状態となる。 これを避けるため日本政府は、サイバー手段で反撃できるよう法を整備する検討に入ったと伝えられる。 マルウエア対策の強化を急がねばならないのは当然であり、法整備は国会議員の責務である。

芍薬や四十八夜に切りつくす  加舎白雄
新茶の香真昼の眠気転じたり  小林一茶
浅間山煙の中の若葉かな  与謝蕪村

19日芍薬
遅れて咲いた庭の芍薬 (2017年5月19日 撮影)
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帯状疱疹と予防ワクチン

 庭先で美人の象徴でもあるシャクヤクが咲き競い、可憐で美しい花を咲かせている。 芍薬の花言葉は、「はじらい」、「謙遜」、「はにかみ」、「慎ましさ」、「内気」だという。 華やかな大輪の花を咲かせるボタンの花と似ており、英語名はともに「peony」といい、英語圏では同じだが、芍薬は草、牡丹は樹木である。 きれいな女性を表現する言葉として、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」がある。

 さて、中高年が疲れたり、免疫力が低下したときにかかりやすい皮膚病の一つに帯状疱疹がある。 春や秋など気温が急激に変化する季節の変わり目や湿度の高い時期に多い。 患者の約70%を50歳以上が占める。 体の左右どちらかの片側に、帯のように水かぶれ(水疱)の集合ができ、チクチクと痛みを伴う病気である。 

 子供の頃に罹った水ぼうそうのウイルスが、脊髄神経や三叉神経の神経節に遺伝子の形で潜伏しており、これが過労やストレス、免疫力の低下に伴いウイルス粒子に復活して皮膚に帯状の水疱を作る。 症状は痛みから始まり、赤い発疹ができ、小さな水ぶくれとなる。 体の両側に広がることはない。 皮膚病変が消えても痛みだけが残ることがあり、「帯状疱疹後神経痛」の名がある。 高齢者では、破壊された神経の回復が遅れ、神経痛が残りやすい。 皮膚や神経のダメージを軽くするため抗ウイルス薬(アシクロビル、塩酸バラシクロビル、ファムシクロビルなど)を使った早期治療が望ましい。 

 超高齢社会を迎え、予防が重要だ。 最近、米国で65歳以上の高齢者約200万人を対象にして、帯状疱疹ワクチンの効果を検討したところ、ワクチン接種は、入院を必要とするような重症帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛に対し高い効果を示すことが判明したという。 米国では帯状疱疹ワクチン(Zostavax)が2006年に承認され、60歳以上の年齢層は積極的に接種するよう勧告されている。 このワクチンは日本では未発売である。 日本では、50歳以上の大人に対し、子供用の水ぼうそうワクチンを帯状疱疹ワクチンとして予防接種することが2016年3月に認可された。 現在、成人への帯状疱疹ワクチンの定期接種の検討が始まっている。

芍薬の蕾のどれも明日ひらく  海野良子
芍薬のつんと咲きけり禅宗寺  小林一茶
芍薬はかよわき花のうてなかな  松岡青蘿

H29芍薬1
我が家の庭に咲く芍薬 (2017年5月14日 撮影)

大型連休と「ひよっこ」

 桜が葉桜に変わり、つつじ、ハナミズキ、シャクナゲ、りきゅうばい、へと楽しめる花も変わり、世界も変換点を迎えているようだ。 元気よく芽が出たジャガイモの芽カキを行い、追肥と土寄せを終わり、いよいよ夏野菜苗の植え付け時である。 農作業は週末や連休に限られるので、休日の天気が気になるこの頃ではある。 トマト、ナス、ピーマン、シシトウ、きゅうり、南瓜、サツマイモなどの植え付けを終え、まずは一息である。 玉ねぎ、スナップ・エンドー、セリ、タラの芽などの収穫が始まり、うれしい味覚の春である。

 NHKの朝ドラは、前作がパットせず、大方不評であったが、4月から始まった「ひよっこ」はドラマ性が高く、テンポも良くて見ごたえがある。 ビデオに撮り、夜観ている。 先ず、番組導入の音楽とメルヘンチックな映像が程よくマッチしてなかなか良い。 観るほどに味があるのだ。 説明はないが、よく観るとこれにもストーリーがあり、一人の女性がバスや電車を乗り継いで都会へ出ていく様子が描かれ、何とも言えない味わいがある。 

 ドラマは茨城県北部の農村が舞台で、東京オリンピックを時代背景に、父親の出稼ぎと若者たちの青春像を重ねつつ、突発する父親の行方不明事件を絡ませ、ドラマ性を高めている。 有村架純が演じる主人公のみね子が東京へ出て、工場で働きながら成長し、父親捜しを絡めるストーリーとみられ、今後の進展が楽しめそうである。 脇役の古谷一行と木村佳乃が、それぞれベテランの味を出して、ドラマに奥行を与えているのがよい。

畠打の顔から暮るるつくば山  小林一茶
畑うつやうごかぬ雲もなくなりぬ  与謝蕪村
春雨や二葉に萌ゆる茄子種  松尾芭蕉

29年ボタン桜2
満開の八重桜、近隣の神の倉第1公園にて (2017年4月22日 撮影)

29年八重桜1
満開の八重桜、 神の倉第1公園にて (2017年4月22日 撮影)

オウム病で妊婦2人が死亡

 4~6月は鳥の繁殖期で、小鳥も大鳥も営巣に励む姿が観察される。 私も小鳥好きで、子供時代には雪の畑に仕掛けを作って、シジュウカラを何匹かを捕獲し、1年ほど飼い、自然界に開放してやった経験がある。 鳥から人に感染する病気として、「オウム病」がある。 ここ数年は全国で毎年40人前後の感染が報告されており、感染は4~6月に比較的多く、日本産婦人科医会の調査によると、2015~2016年に2人の妊婦がオウム病で死亡したという。

 オウム病といっても感染源となる鳥はオウムとは限らず、ハトやインコなどからの感染も多いとされる。 健康な鳥でも数%は病原細菌のオウム病クラミジアを保菌しており、唾液や糞便中に排菌する。 普通は鳥の糞をホコリと一緒に吸い込むことにより感染する。 発熱や咳などインフルエンザ用の症状で発症し、治療が遅れると肺炎や髄膜炎、心筋炎、膵炎、などを起こし多臓器不全で死亡することもある。 

 診断は血清抗体価の測定やクラミジアの分離、クラミジア遺伝子の検出などによる。 治療はマクロライド系やテトラサイクリン系の抗菌薬を2週間服用する。 現在、予防ワクチンはない。 鳥を飼う場合、ケージの清掃に当たっては、マスクを着用することが望まれる。 また妊娠すると、免疫力が低下し、感染リスクが高くなるので、ペットの鳥との接触は避けた方が無難といえる。

大木や鳥の巣のせて藤かかる  高浜虚子
小鳥の巣二本の枝にしっかりと  高野素十
見上げれば天空一角サギ営巣  中島澄夫
戸袋に啼いて巣立ちの近きらし  まついひろこ

H29玉がすみ
我が家の庭に咲く玉霞 (2017年4月7日 撮影)

温泉入浴と肺炎

 春秋は温泉が楽しめる季節である。 解放感と景色を楽しめる露天風呂は、また格別である。 冬の露天風呂へ入るにはちょっと勇気がいるが、暑くなく寒くない春秋は温泉にはもってこいの季節というわけだ。

 先月、広島県の「みはらし温泉」で、入浴利用者40人が、レジオネラ菌に感染し、うち50歳代の男性1人がレジオネラ肺炎で死亡したと報道された。 レジオネラ症はレジオネラ菌による細菌感染症で、感染しても全ての人が発症するとは限らず、免疫力の低下した中高年で発症しやすい。 浴室内の清掃や洗浄が定期的にきちんとできておらず、設備の衛生管理が不備な時に起こりやすい。 細菌に汚染された湯水を、エアゾル(空気中の微粒子)として吸入することで感染する。 近年では空調設備の冷却塔・クーリングタワー水、循環式浴槽水、給湯器の水などにも寄生、増殖することがある。

 レジオネラ症を発症した場合、軽症では一過性の発熱(ポンティアック熱と呼ばれる)、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛で済むが、一部は劇症型の肺炎(レジオネラ肺炎と呼ばれる)となり、これは早期治療しないと多臓器不全となり死亡率の高い肺炎である。 市中肺炎の約5%を占めるとされる。 ポンティアック熱は、米国ミシガン州のポンティアック市で起こった集団感染例に因んで命名された。

 診断は市販の迅速キットを使い、尿中抗原を検出することによる。 尿中抗原陰性の場合には、喀痰中の遺伝子を検出する迅速診断法がある。 肺炎の治療では、静注用のニューキノロン系薬が第一選択薬である。 ニューキノロン、マクロライド系抗菌薬を投与しないと、7日以内に死亡することが多いとされる。

 ハイリスクグループとして、高齢者、新生児、大酒家、ヘビースモーカー、糖尿病患者、透析患者などがある。 感染者の約8割を男性が占める。

湯上りの尻にべったりせうぶかな  小林一茶
山中や菊は手折らぬ湯の匂  松尾芭蕉
月光に照らされわが身露天風呂 中島澄夫

H29和合の里桜
桜咲く 老人保健施設 和合の里にて (2017年4月7日 撮影)

H29庭の椿
我が家の庭の椿(横雲) (2017年4月2日 撮影)



プロフィール

中島澄夫

Author:中島澄夫
約80坪の畑を耕し、ブロッコリー、トマト、ナス、ニンニク、キュウリ、オクラ、ズッキーニ、大根、生姜、馬鈴薯、玉葱、白菜、青梗菜、小松菜、空心菜、金時草、水菜、スナックエンドウなどを自家用に栽培。近著として、「高齢者医療:健康長寿と全人的ケアをめざして」(オーム社、H20.4)など。名古屋市緑区在住。

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